『MAKERS』 クリス・アンダーソン

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

面白かった。

この人の書く概念というのは、翻訳者も書くように、『フリー』のときと同様に、みんながなんとなく感じている時代の流れである。だからこそ、フリーを読んだ時は(まぁ読んだのが多少遅かったこともあるけれど)、「ああ、それは分かってるよ」くらいの印象で、単純に楽しめたかというと再確認に等しかった。ただ、やっぱり、自分でなんとなく分かっていることでも、今起きていることだけでなく、過去から現在までの変遷をきちんと追って説明してくれるので非常にわかりやすいし、すっきりする。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

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今回のテーマはビットがフリー化するという話から、そのビットからアトムへという話。前回はウェブで今起こっていることだったのが、今度はモノづくりにおいての現象を扱っているので、普段そこまで興味を持って接していない分、知らない事実が多く、非常に楽しめた。ようはモノづくりのコストが作業工程のデジタル化によって圧倒的に下がったということ。なんだかんだで目新しい3Dプリンタの話が多く語られがちにはなるけど、今までは大量生産可能な製品以外は現実的には作ることがかなり難しかった製品が、製作コストの低下によって小さな事業者でも比較的容易に参入可能になったというのが一番の変化だと思う。

多品種少量生産の世界へ
人類の数は以前に比べ、圧倒的に増えているのに、工業製品の種類ってのはそこまで増えていないと思う。もちろん、規模の経済が働く限り、どんな工業製品もそれを無視した製品づくりをするわけにはいかない。でも、携帯電話とかもっと種類があっていいと思うんだよね。今はまだAppleのように世界有数のメーカーが作った製品の優位性は全く揺るぎようがないし、小さな規模で太刀打ちできるものではない。Androidですれが変わるかと思いきや、垂直統合型モデルに勝つのはやっぱり難しいというのは変わらなかった。モバイルの世界ではまだまだコモディティ化したわけではないので、多種多様化というのは当分訪れることはないでしょうが、誰もが持つ携帯電話こそ、カスタム化された、多品種少量生産されたモノがあって欲しいと思います。スマートフォンはそれをソフトウェアでローカライズ対応していたりしますが、いつかそういう流れに変わることに期待したい分野です。まぁこの辺はほとんど自分の願望なんでスルーしてください笑。いや、ホントAndroidの断片化問題とかたくさん問題が山積しているので無理な話なのも十分分かった上での願望です。品質を問わなければそれなりには多様化はしているけどね…。


ともかく、この本では、この生産手法の変化によって、大量生産というものがなくなるわけではなく、メジャーな製品だけでなく、ニッチなモノもと、より多くへ、モノのロングテールが起こるということが言われている。この人の面白いところは、それがレゴのマインドストームという、レゴで作ったものをプログラミングによって動かせるおもちゃで経験した面白さから、3Dロボティクスという会社を立ち上げるまでに体感したことを書いているに過ぎないんだよね。オープン化とコミュニティによる利益のあたりにはまだまだすごく、懐疑的にはなってはしまうものの、そこはやっぱりそのメリットを自分で体感したいと分からないかもしれない。