シェイブテイル日記2

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スイス国立銀行の挫折と日本のデフレ

今夕、スイス国立銀行中央銀行)がこれまで続けてきた事実上のスイスフランのユーロペッグを止めると発表したことから対円でも一時50%ほどのスイスフラン高となり、今もその余震は続いています。
このニュースはそれ自身、今後の成り行きが注目されます。
ただ、日本のデフレ脱却を願う私たちからみると、スイス国立銀行のここ数年の行動とその結果は、日本でも他山の石とすべきと考えられます。

スイス国立銀行ジョルダン総裁は15日、フラン上限は持続可能ではなかったとし、今回の上限撤廃をめぐる決定はパニック的な反応ではなかったとの認識を示した。
記者団に語った。総裁は「持続不能で、断続的な市場介入でのみ実行可能な政策を続けるのは理にかなわないと判断した」と説明した。

フラン上限、持続可能でなかった=スイス中銀総裁  ロイター 2015年 01月 15日 22:14 JST

スイスフランはユーロ危機の影響もあり、中期的な対ユーロ高に悩まされてきました。(図表1)

スイス国立銀行は'11年以来の為替無制限介入を放棄せざるを得なくなった

図表1 スイスフラン対ユーロ月足チャート

そこで、2011年9月、スイス国立銀行スイスフランの対ユーロ相場に1.20の上限目標を設定し、無制限のスイスフラン売り介入を発表しました。 しかも介入した資金は市場で非不胎化させるとしました。

スイス国立銀行は、無制限にユーロなどの外貨買い、スイスフラン売りを続け、かつ非不胎化していたため、スイスではマネタリーベース(MB)は直近では対GDP比でも60%と、アベクロミクス下の日本での同40%さえも大幅に超えるMBを市場に放置していました。

その結果対ユーロ相場を1.2程度に抑制することはできていましたが、それは今後は不可能と中銀総裁は判断した模様です。

注目されるのは、その前後で、スイスの物価はどうだったかということです。
図表2は日本・スイス、比較対象として米国の3カ国で、物価(CPI)とMB(対名目GDP比)の相関がどのように動いたかを、1998年から2013年までで示しました。(図表2)

デフレ国でMBを積み上げてもそれで物価は上がらない

図表2 物価(CPI)とMB(対GDP比)の相関
出所:物価、名目GDP=IMF WEO MB=各国中銀ウェブサイト
グラフは各国とも下側が1998年時点、上端が2013年時点を示している。
スイスではGDP比で6割ものMBを有しながらデフレ気味。
日本はその後を追いかけているようにみえる。
一方米国はMBと無関係にほぼCPI=2-2.5% といった一定のマイルドインフレを実現している。

MBの積み上げ、という点で言えば、スイスは日本の先を行っていたわけです。それでスイスの物価が上ったか、といえば、この無制限介入を実施している時期のスイスでは物価は下がっています。
名目GDP比の6割ものMBを市場に放置しても、それで物価は上がらなかったということになります。

翻って日本では、消費者物価を5%から8%上げ、プライマリーバランス赤字半減を目指すとかで、財政政策面では各種の緊縮財政を採っていますから、状況はスイスより更に悪いとも言えましょう。

中核的なリフレ派の方々の中には、MBを積み上げてインフレ目標を掲げれば、デフレ脱却は可能という貨幣数量説的な信念を持つ方が少なからずおられるようです。

ただ、現実のデータからみると、デフレ脱却をするのであれば、直接国民にマネーを配布し、1年といった期間で遣わせてしまうな政策設計の財政政策の方が誰にでも解りやすく、直接物価を上げるでしょうし、以前こちらで書いたように、財政健全化の観点からみてさえも、安倍内閣が目指すプライマリーバランス黒字化路線よりも早道であるように思えます。