桜庭一樹『少女には向かない職業』

 3日に、桜庭一樹さんの『少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)』を読了。


 東京創元社の「ミステリ・フロンティア」として刊行された単行本作品。

 中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。

 冒頭のこの一文がすべて。
 すなわち、この独白から2つの殺人の過程が描かれていくわけですが、葵の感情や内面が非常に丁寧かつ過不足なく描写されていて、これが秀逸。特に昨今の桜庭作品ではこの点に定評があったわけですが、少なくともshiba_moto既読の『推定少女 (ファミ通文庫)』や『ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)』よりも上のような気がします。
 この物語は少女たちの戦いと日常からの逸脱であり、そのなかで殺人という行為がミステリらしくサスペンスフルなタッチで描かれています。その中で、静香が提案する殺害トリックがちょっとユーモラスでおもしろいです。
 舞台として山口県下関市という地方都市を設定したのも、作品の雰囲気とあっていてよかったです。東京などの大都市近郊では、ちょっと違うような・・・


 実は桜庭作品の中では『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)』をなんとなく敬遠していたのですが、この作品を読んで、『砂糖菓子〜』も読みたくなりました。


 まったくの余談ですが、母親をタリウムで毒殺しようとする少女と桜庭さんが描く少女、どちらが現在の一般的な十代の少女に近いのかと考えると、前者のような気がします。このように考えざるを得ない現状は、とても不幸なのではないでしょうか。

2005年11月3日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)
少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)桜庭一樹
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