随想 空即空(連載127)兵役拒否を巡って

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有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)

随想 空即空(連載127)兵役拒否を巡って

清水正 

 今、戦争を肯定する者はいないだろう。戦争の当事者すら戦争を否定している。が、現に戦争は続行されている。誰もが言うように戦争は憎しみを残すだけだ。戦線で戦う兵士たちに「殺すなかれ」はどんな意味をもつのだろうか。平時において美しい言葉の悉くが戦線においては無力を晒している。鑑三の非戦論の主張は現実においてどれほどの力を発揮するのか。歴史はその無力を証明している。わたしは戦争に参加し、協力するキリスト教徒をイエスの言葉に忠実でないという意味でキリスト者と見なすことはできない。わたしがいつも不思議に思うのは、戦争賛美者、戦争協力者、戦争参加者でありなから自らをキリスト教徒と見なしている者たちである。イエスの言葉を裏切りながら、自らをキリスト教徒と見なす者の意識はいったいどうなっているのか。はっきりとイエスを裏切った者としてキリスト教から離脱すべきではないのか。

 わたしは鑑三の非戦論を素直に聞く耳を持っていない。鑑三の非戦論は欺瞞に満ちていると思っている。その一つの証が、弟子の齋藤宗次郎が兵役拒否を表明したとき、それを説得して押さえ込んだことである。イエスの言葉に忠実であれば、キリスト教徒として兵役拒否をするのは当たり前なのに、どうして鑑三はそれを撤回させたのか。鑑三はこのことについていろいろ説明しているが、どんなに言葉を費やしても、それはイエスの言葉に反するものである。ここでも鑑三は究極的な判断を前にして曖昧な態度を取ってそれを正当化している。齋藤宗次郎も、兵役拒否を貫くことができなかったという意味では鑑三と同罪である。宗次郎が真のキリスト者であれば、師匠鑑三の意見に従わずに、イエスの言葉に従ったはずである。

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随想 空即空(連載126)兵役拒否を巡って

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有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)

随想 空即空(連載126)兵役拒否を巡って

清水正 

 内村鑑三は「戦争廃止論」(明治36年6月30日『万朝報』)で次のように書いている。

 

  余は日露非戦論者である許りでない、戦争絶対的廃止論者である、戦争は人を殺すことである、爾うして人を殺すことは大罪悪である、爾うして大罪悪を犯して個人も国家も永久に利益を収め得やう筈はない。

      *   *   *   *   

  世には戦争の利益を説く者がある、然り、余も一時は斯かる愚を唱へた者である、然しながら今に至て其愚の極なりしを表白する、戦争の利益は其害毒を贖ふに足りない、戦争の利益は強盗の利益である、是れは盗みし者の一時の利益であって、(若し之れをしも利益と称するを得ば)、彼と盗まれし者との永久の不利益である、盗みし者の道徳は之が為に堕落し、其結果として彼は終に彼が険を抜て盗み得しものよりも数層倍のものを以て彼の罪悪を償はざるを得ざるに至る、若し世に大愚の極と称すべきものがあれば、それは剣を以て国運の進歩を計らんとすることである。

 

      *   *   *   *

  勿論サーベルが政権を握る今日の日本に於て余の戦争廃止論が直に行はれやうとは余と雖も望まない、然しながら戦争廃止論は今や文明国の識者の輿論となりつゝ、爾うして戦争廃止論の声の揚らない国は未開国である、然り、野蛮国である、余は不肖なりと雖も今の時に方て此声を揚げて一人なりとも多くの賛成者を此大慈善主義のために得たく欲ふ、世の正義と人道と国家とを愛する者よ、来て大胆に此主義に賛成せよ。(50~51)

 

 わたしはこの論考を岩波書店が編纂した『非戦論』で読んだ。『非戦論』には六十五編の論考が収められているが、読んでいる間じゅう、白々しい気分に襲われていた。書いてあることは、今日の人道主義に則った〈正論〉であるが、もはやこの〈正論〉自体が空々しいものと化している。今も現に戦争は続いている。ジャーナリズムは戦争の本質論を宗教、哲学の次元でとらえることはない。その大半は戦局をめぐる情報である。テレビや新聞で鑑三やトルストイの非戦論を取り上げることはないし、キリスト教徒や仏教徒がテレビのコメンターとして呼ばれることもない。

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有即無 無即有 有無即空 空即空 空空空 正空 (清水空雲)

随想 空即空(連載125)兵役拒否を巡って

清水正 

 人間はなぜ戦争をするのか。はたして人間は本当に平和を望んでいるのか。人類は二度の世界大戦を終えてさえ、世界平和を実現できずにいる。生物には遺伝子レベルで闘争本能が埋め込まれており、これなくしては生命の維持をはかることができない、そのように決定されているのではないかと思う。人間は組織の中で或る役割をあてがわれると、それに順応する性格を持っている。命令する者、命令される者が自分の役割から少しでも逸脱すれば組織は瓦解の危機に晒される。その典型的組織が軍隊である。軍隊にあって個人の自由は認められない。基本的人権の遵守や精神の自由などは軍隊にあってはいっさい認められない。上官の「殺せ」という命令は絶対であり、命令された者が個人の判断でそれを拒めば軍法会議によって処罰されることになる。キリスト教徒が「殺すなかれ」の言葉に忠実であるなら、彼らはすべて一人の例外もなく兵役を拒否しなければならない。戦時下において兵役を拒否せずに戦役についた者はもうすでにその時点でキリスト教徒ではない。ましてや戦場で実際に人を殺した者などキリスト教徒であるはずはないのである。

 国家が戦争を決定した時、キリスト教徒は「汝、殺すなかれ」の言葉に従って兵役を拒まなければならない。しかし戦時下にあって断固として兵役を拒否した者はキリスト教徒全体のごくわずかなパーセントを占めたに過ぎない。大半のキリスト教徒は兵役拒否どころか、積極的に戦争に協力した。天皇を絶対とする明治国家の方針を受け入れたということは、キリスト教の根本教義である偶像崇拝を受け入れたということであり、これはキリスト教の神に対する裏切りである。しかし不思議なことに日本の多くのキリスト教徒たちはこの事実を凝視せず、あいまいな態度に終始した。これは鑑三の〈不敬事件〉を、日本のキリスト教徒たちの大半が自らの究極的な信仰上の問題としてとらえていなかったことを示している。

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随想 空即空(連載124)内村鑑三の不敬事件を巡って

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随想 空即空(連載124)内村鑑三の不敬事件を巡って

清水正 

 植村正久は鑑三の〈不敬事件〉は単独の問題として論じられるべきものでないことをしっかりと認識していた。植村は「その連帯するころ極めて広く、その関係甚だ重大なるものあり。キリスト教徒は賢所において、参拝するも不可なりや。キリストを信ずる海陸の将校士官兵卒は、靖国神社において、神官の司る祭典に列なり、これに列なるのみならず、また拝を遂げ、祭文を読み、百事キリスト教を信ぜざるものと共に、その祭りに与ることを得るや」と書いている。

 唯一絶対の神を信じるキリスト教徒であれば、どんな場合においても異教徒の祭典に列することは拒むであろう。しかし植村は「これらの問題は彼の内村氏らの事件と多少の関係を有するものにて、キリスト教徒の明らかに決定するを必要とするものなり」と書いただけで、〈決定〉を慎重に避けている。これでは鑑三の勅語を前にした曖昧な態度と五十歩百歩ではないのか。日本の代表的なキリスト教徒、西欧の教義や哲学を学んだ知的レベルの高いキリスト教徒である内村鑑三や植村正久が、なぜ究極的な二者択一を前にすると決定的な判断を回避して、どうとでも取れる曖昧な態度を取るのか。

キリスト教神道か〉、この二者択一に躊躇するような者をはたして〈キリスト教徒〉と言えるのか。もちろんキリスト教の教義に基づけば彼らをキリスト教徒と見なすことはできない。しかし、彼らの曖昧さを日本人に特有の曖昧さの範疇に包摂して考えれば、彼らの〈キリスト教〉は日本教の一派と見なすこともできないわけではない。

 日本のキリスト教徒がキリスト教の教義に忠実であれば、天皇を現人神とする国家体制と真っ向から対立せざるを得ない。二つの神を同等に認めるキリスト教徒などもはやキリスト教徒とは言えない。しかし現実はどうであったのか。日清戦争を正義の戦いとして肯定していた内村鑑三は、日露戦争になると突然、非戦論者へと変貌する。このこと自体が鑑三の曖昧さを露呈しているが、彼の非戦論もなんら現実的ではない。

 わたしは鑑三の非戦論を読みながら、ずっと中学生の平和論者の主張を聞いているような気分であった。平和を唱えていれば平和が実現するわけではないし、現実の平和は莫大な経済力や軍事力を背景にしていることは議論の余地がない。人間は民族、人種、思想、宗教の違いによって、絶え間なく戦争を繰り返している。戦争の終結が平和への祈りによって達成された試しはない。唯一神を奉ずるユダヤ教キリスト教イスラム教の戦いは、各々が自らの絶対を信じて他の殲滅をはかるので残酷きわまりない事態となる。理屈上では、一神教同士の争いは一方が他方を殲滅し尽くさなければ終わらないことになる。

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随想 空即空(連載123)内村鑑三の不敬事件を巡って

清水正 

 わたしは植村正久の文章を穏当なものとして受け止めるが、その内容をよく吟味すれば、彼は一人のキリスト教徒として究極の場面を想定していることが分かる。鑑三は〈不敬事件〉を起こしても、その内実に向けて徹底的な掘り下げをしたとは思えないが、植村は〈不敬事件〉を通してキリスト教徒の今後取るべき態度とその覚悟を彼なりに示唆しているように思える。

 しかし植村にも天皇唯一神を前にしての究極の〈二者択一〉に関しては慎重に判断保留していることが伺える。「吾人は今上陛下を尊敬す。陛下に対して、敬礼を表せずんばあらず。その尊影に対し、勅語に対し、同一の精神に基づける敬礼をなしたればとて、その智愚、得失は暫く置き、これをもって、偶像を拝するなり、十戒に背戻することなりとは容易に断言すること能わざるなり」――植村は陛下を尊敬することを明言し、尊影と勅語に敬礼することを明確に否定してはいない。しかし、植村は尊影と勅語に対する敬礼はあくまでも〈尊敬〉に基づくものであって、〈信仰〉ではないという逃げを予めうっている。天皇に対する敬礼は、キリスト教が禁じている〈偶像崇拝〉と「容易に断言する」ことはできないという文言がそれである。植村はおそらく究極の〈二者択一〉を想定しながら、この文章を認めている。しかし、平時においては容易に断言出来ないことが、有事においては早急に断言することが求められる。平時における判断保留という曖昧な態度は有事においては決して許されないのである。植村は鑑三の〈不敬事件〉の学校当局の処遇を目の当たりにして、キリスト教徒として、いずれは確固たる態度を示さなければならないという覚悟を決めたことは確かであろう。天皇を尊敬することと、唯一絶対の神を信奉することとは、平時における大多数の日本人が許容することではあっても、日本が国粋主義的方向に走れば、偶像崇拝を厳しく禁ずるキリスト教との確執を免れることはできず、曖昧な態度は決して許されないということになるからである。

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随想 空即空(連載122)内村鑑三の不敬事件を巡って

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随想 空即空(連載122)内村鑑三の不敬事件を巡って

清水正 

 勅語の礼拝はいかなる法律、いかなる教育令にも定められていなかった。にもかかわらず鑑三の躊躇は不敬と見なされ、国賊として罵られ、辞任を余儀なくされた。つまり、〈空気〉は法律や教育令などものともしない力を持っている。キリスト教には聖書という経典があり、信者にとってそれは絶対的な強制力を持っている。しかし〈空気〉に基づく日本教には文字で記された経典はない。憲法によって信教の自由が保障されていても、〈空気〉はそれ以上の力を発揮してしまうのである。

    鑑三の〈不敬〉は最初のうちは一部の教師や学生たちの激しい非難や抗議によって問題視されたが、この〈不敬〉を〈事件〉にまで増長させたのは新聞や雑誌の記事と言えよう。つまりジャーナリズムが事を大袈裟に発展させたのである。これは今日においても全く同じである。ジャーナリズムにも様々な観点があってしかるべきだが、たいていの場合、時の大きな潮流に乗って体勢を築き上げていく。一度この体勢がつくられてしまうと、そこから抜け出すことは困難を極める。

 鑑三の勅語を前にした礼拝躊躇が〈不敬事件〉を招き寄せた一番の原因ではあるが、しかしここには天皇を中心とする国家主義体制が醸し出す時代の〈空気〉が支配的になりつつあったことを端的に示している。鑑三はキリスト教徒でありながら、この〈空気〉を読めなかった。鑑三は〈JAPAN〉と〈JESUS〉の二つの〈J〉が両立すると考えていた。わたしは鑑三のこの二つのJの共存をかなり甘い認識と考えている。

 憲法で信教の自由さえ保証されている平時の日本で勅語礼拝を躊躇しただけで国賊扱いされるのであれば、有事にあっては死刑さえ覚悟しなければならないと考えるのがふつうであろう。キリスト教徒が同じ絶対神を信奉する異教徒(ユダヤ教徒イスラム教徒)たちとどんなに残酷無慈悲な戦争を繰り返してきたか、その歴史を少しでも繙けば、〈二つのJ〉の共存など歴史を知らぬ暢気な理想家の戯言にさえ思える。

 内村鑑三は垂直的に思考を深めることが苦手なキリスト教徒で、どんなに追いつめられても、自分の正義を信じて疑わない。鑑三の文章からキリスト教の教義やイエス・キリストに対する戦慄的な不信や懐疑をみることはできない。謂わば鑑三の内には一人のイワン・カラマーゾフが潜んでいない。鑑三に神に対する不信や懐疑がまったくなかったなどとは言わない。最初の結婚が破綻したとき、〈不敬事件〉に巻き込まれた妻を病気で失ったとき、確かに鑑三の内で文字化できない神に対する不信と懐疑がわき起こったであろう。しかし鑑三のそれは、少なくともわたしのそれとは違う。良心に背き、強制によって「イエスを信ずる者たちの契約」に署名した鑑三は、その後、キリスト教から離脱するほどの懐疑と不信に襲われることはなかった。鑑三のキリスト教は文学や芝居や落語を内包できない、無粋で一義的で、偏頗な次元にとどまっている。

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随想 空即空(連載121)内村鑑三の不敬事件を巡って

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随想 空即空(連載121)内村鑑三の不敬事件を巡って

清水正 

 勅語(宸筆)の前に進み出て〈礼拝的低頭〉をせよと命じたのは、この日(明治二十四年一月九日)病気で欠席していた木下広次校長(四十一歳)の代理を務めていた久原躬弦(教授、三十七歳)であり、鑑三の曖昧な低頭に対して抗議非難したのは岡田良平(教授、二十八歳)、北条時敬(嘱託教員、三十四歳)、川田正澂(嘱託教員、二十九歳)等であった。つまり、鑑三の態度を激しく非難した何人かの同僚たちの声が、〈鑑三=不敬=国賊〉という空気をつくりあげ、それを醸成していった。もちろん鑑三を擁護する教員、学生もいたはずだが、彼らの声は醸成された〈空気〉を払いのけることはできなかった。なにしろ鑑三を批判する〈空気〉は時の国家体制に即応したものであり、この〈空気〉に逆らう者は自らもまた国賊に荷担する者と見なされる危険があった。この危険度は、キリスト教徒にあってはそうでない者より何倍も高かったであろう。

 今日ではすでに多くのひとに認められ常識になっているが、多くの日本人はキリスト教の教義を受け入れがたいのである。なぜ日本人はキリスト教を受け入れないのか? 山本七平はこの疑問を徹底的に追及し、そこから「空気の研究」をものにした。ユダヤ教徒キリスト教徒、イスラム教徒などにとってエホバ(ヤハウェアッラー)は唯一絶対の全能の神として君臨しているが、日本人にとっての神は〈空気〉ということになる。日本人の大半は〈無宗教〉を自認しているが、実は〈空気〉という神に支配された〈日本教〉信者なのである。

 この観点から鑑三の信仰を検証して見ると、彼の思いとは別に、実に日本的な曖昧さを内包していることが浮き彫りになる。これは一人内村鑑三ばかりではなく、多くの日本人のキリスト教徒にも言えよう。日本人のイエス・キリスト解釈は多分に曖昧で、いったい彼らは何をもって〈イエス〉と見なしているのか、今まで十分に納得のいく見解に出会ったことはない。何度でも繰り返すが、鑑三は〈イエス〉の何たるかを知らぬままに、自らの良心に背き、先輩たちの強制に屈して「イエスを信ずる者たちの契約」に署名したのである。

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