ユッキーの紙ごはん(連載27)

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ユッキーの紙ごはん(連載27)


【御社と擬似恋愛させてください】


ユッキー


 

就活と恋愛は一緒です。
だから志望動機はその企業でなければいけない理由を述べよ。
(あなたじゃなきゃダメなの)

就活と恋愛は一緒です。
だからとにかく熱意を伝えよ。
(他の誰よりも私がいちばんあなたを愛してる)

就活と恋愛は一緒です。
だからその企業にとって自分がどのように役に立つかを答えよ。
(私、あなたのためにこんなことだってできるよ)

と、いうわけだ。私が考えたのではなく、就活が恋愛に喩えられるのは有名な話。連載14でも軽く触れたかと思う。

ところで最近寒くなったせいか、友達から妙に惚気話を聞く。本人たちは「惚気じゃない!」と否定するだろうけど、私にはわかる……あんなのは愚痴という皮を被った惚気だ。

例1.「彼氏は結婚の話をちっともしてくれない」(愚痴)→「でもね。一緒にテレビ見てて(5分間ほど詳しい状況が語られたが中略)、じゃあ私が子供を産んであげようかって言ったら、うん産んで、だってウフフ」(惚気)
例2.「彼氏は妹さんと住んでるから彼氏の家だといまいち落ち着かない」(愚痴)→「なのに彼氏は(5分間ほど彼氏の言動の詳細が語られたが中略)、いいじゃん見せてやろうよってわざとくっついてくるのウフフ」(惚気)
例3.「男友達から連絡くると彼氏がすぐ嫉妬してきて困る」(愚痴)→「私は友達だって思ってるんだけど(5分間ほど連絡してくる男友達の多さが語られたが中略)、最近向こうがちょっと気がある感じで……でもいちばん好きなのは彼氏なんだよねウフフ」(惚気)

嫉妬なんてしない。私ほどの(孤独の)プロフェッショナルになると、自分から「なにか惚気話していいよ」となぜか上から目線で惚気を聞き出すくらいは軽くこなす。
要は、「友達に惚気を聞かされて困る」(愚痴)→「まあ私は全然嫉妬とかしないタチだからいいけど。余裕あるから」(自慢)という、愚痴の皮を被った自慢というわけだ。強がってません。決して強がってません。

強がってはいないんだけど、いろいろな意味で寒すぎるので、恋愛ごっこに走った。
就活は恋愛と一緒らしいから、こういう感じで。

就活が解禁になったということで、一日に数件、企業から電話がくる。しかし電話がくるとき大抵、私はタイミング悪く寝ているので、折り返しの電話をかけることになる。
とある企業にかけ直したところ、今日はもう担当者がいないので明日またかける、ということだった。何時ごろがご都合よろしいですかと聞かれたので、では午前11時にと約束した。

なので次の日、10時に起きた。1時間前に起きて、「んっ、んっ」と情けない咳払いと「あ、あー。もしもし」と間抜けな発声練習をし、寝起き声にならないよう努めた。
それなのに、待てど暮らせど電話は来ず、3時間後にはとうとう諦めて大学に行くため家を出た。外でも大学でも、いつかかってくるだろうと常にスマートフォンを気にする。

にも関わらず、電話は来ない。

電話してくれるって言ってくれたから、私、待ってたのに! ひどくない!?
と、いつだったか友人が言っていた愚痴を真似てみた。聞いてくれる相手がいないので心の中で悲劇のヒロインぶる。期待させるだけさせて結局かけてこないとか意味わかんない! 待ってた私がバカみたい!
 なるほど、彼氏に約束を忘れられた彼女の気持ちってこんな感じなのかも。

夜7時になってようやく、電話がかかってきた。遅くなってすみませんの一言はなかった。

今さら何!? 遅くなってごめんとか、言えないわけ? 私ずっと待ってたんだから!
心の中で3割増しに美化した自分でそう叫びながら、
「あっ、お電話ありがとうございます。ええ、はい。ああ……残念ですがその日は都合がつかないので……はい、大学の講義が……ええ、すみません、是非また……」

ちなみに着信履歴にある企業名を全部異性の名前に置き換えると、ものすごくモテる女の気分を味わえる。そんな遊び方もあります。
あとで虚しくなること必至なので、(孤独の)素人にはオススメしない。





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