やッ!これは便利!『装丁家で探す本』は待望の本だ!!

かわじもとたか編『装丁家で探す本──古書目録に見た装丁家たち』(発行=杉並けやき出版、発売=星雲社、2007年6月15日、装画・芦田康秀、定価3150円税込み)というまだ発売日になっていない、出来立てのほやほやの本が著者のかわじもとたかさんから送られてきた。



なぜ私に? などという疑問と不満をお持の方もいらっしゃると思いますが、著者の手紙によると
「やっと同封致しました本ができあがりました。装丁家の名前をネットで引くたびに大貫さんのホームページにぶちあたりますので、何かと参考にさせていただきました。そのため、本を送らせてもらいます。」と、ありました。


まじめにやっているとこんないい事もあるんですね。拙書『装丁探索』からの引用も一部あって、川地さんも購読してくれていて嬉しいです。


実は私も以前からネット古書市なども装丁家名で検索できないものかと、不満に思っていた。著者の欄に装丁家名を入力すると検索できる事もあるが、まだまだヒットするのは著名な装丁家のときだけで、充分ではない。『装丁家で探す本』の刊行をきっかけに古書市古書店の目録にも装丁家名が記されるようになるといいなと思っている。


ちなみに『装丁家で探す本』には1000人の装丁家による17000点(ページ当たり項目数からの推測)に及ぶ書誌データが記録されている。所々に切手ほどの写真が入っているのも、ほほ笑ましい。

私が集中して集めている広川松五郎の装丁本の項目を検索してみると

下記写真のように37点記録されていて、私が5~6年かけて集めた本の半数以上が記載されている。かなり使える。しかし、こんなにたくさんのデータを入力するとかんがえただけでもうんざりしてしまうが、著者本人が全部入力したのだろうか? 考えられないほどのものすごい力仕事だ。



「先立っての三岸節子美術館での装丁展以降に興味や関心を寄せてくれた美術館は、宮本三郎記念美術館(これは2006年にさっそく装丁展を開いてくれ)、山口蓬春美術館は「紀要」に在庫本の装丁本をまとめてくれました。この本を出すのにハガキ案内を送ったら香月泰男美術館、平福百穂美術館より問い合わせや電話、紀伊国屋書店に数冊の注文が入り、発行所に紀伊国屋書店から問い合わせがあったとのことです。」と、美術館が装丁に関心を持ち始めているとの事だ。装丁がにわかにブームになってきたのは嬉しい。


ちなみに、三岸節子美術館での装丁展は、平成17年に開催した埼玉文学館の「装丁浪漫」展(服部武さん企画・担当)の成功がきっかけになったと、三岸節子美術館での担当の杉山さんから直接聞いています。美術品でもなく文芸作品でもない装丁作品がその両方から注目されはじめたのは歓迎すべきうれしい兆候だ。


私は装丁は複製美術だと思っておりますので今まで美術館が1品制作の作品だけを集めているのは片手落ちではないかと思っております。かわじさんも同様に力説しています。

高橋忠弥を検索してみると

35点の忠弥装丁本がでてきた。私のブログでは90点ほどの忠弥装丁本をリストアップしてきたが、それでも記録されていない本が『装丁家で探す本』には16点ほど見つける事が出来た。


私の場合は、架蔵本と「本の装い」に記載されているデータだけで作った忠弥の装丁本書誌一覧なので、かなり不備であろうことは薄々感じていたが、いきなりこんなに沢山の不足データを示されるとちょっとショックでもある。


16点の内、半数以上は知ってはいたが高価なために入手できなかった本だが、初めて知ったデータも5~6点ある。購入がむずかしいとは知りながらも
中村武志『埋草随筆』私家版(静和堂、昭和26年)
高見順『銀座』(英宝社、昭和30年)
・鷹羽狩行『誕生』(昭森社、昭和40年)

などは、一度手に取ってみたいものだ。