円本全集は挿絵の宝庫

【円本全集は挿絵の宝庫!(1)】
円本全集とは「1冊1円で発売された安い価額の全集,叢書類をいう。発端は 1926年 12月,改造社が刊行しはじめた『現代日本文学全集』。出版界の不況と大衆文化状況のなかで,続々と円本が登場して 100種にも及び,円本合戦と称された。」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
 「出版界における『円本』の功罪は……文士・著作者の大半が此の『円本』の出現によって多少とも物資的の恩恵に浴したのは疑えない事実である。」(岡野他家夫『日本出版文化史』春步堂、昭和37年)とあり、挿絵画家たちもこの全集ブームによって懐を潤したことは間違いない。中でも


小学生全集」全88冊表紙+武井武雄:挿絵「黒馬物語」(興文社・文芸春秋社昭和4年
には多くの挿絵画家が登場している。

他にも


『現代大衆文学全集』全60巻表紙+岩田準一:挿絵「踊る一寸法師」(平凡社昭和2年



『現代漫画大観』全10巻+岡本一平:挿絵(中央美術社、昭和3年


『講談全集』全12巻+石井朋昌:挿絵「赤穂浪士本伝」(大日本雄弁会講談社昭和3年


・『現代ユウモア全集』全24巻(現代ユウモア全集刊行会)
・『修養全集』全10巻(大日本雄弁会講談社
・『一平全集』全15巻(先進社・昭和4〜5年)

などなど、挿絵がふんだんに掲載されている全集の枚挙には事欠かない。
 昭和初期に挿絵を生業としていながらこれらの全集に挿絵を提供しなかった挿絵画家はいないのではないかと思われる。