何かを「続ける技術」について考えてみました

自分に厳しい人は続けられるんだけど。。。

先日、会社役員のご経験のあるAさんにお話を伺う機会がありました。大変貴重なお話を色々とお伺いしたのですが、特に印象に残っているのは、その方が子会社から本社に戻られた時、「亜流からの出戻り」と冷ややかな周囲を認めさせるために実行した2つの取り組みについてでした。

一つ目は、「毎月の朝礼に筆で描いた自筆の手紙を全国の拠点に送った」こと。先月の成績、今考えていること、そして今月何としてもやりとげたいこと。これを必ず毛筆自筆で書き、FAXで全国の従業員あてに送り、各拠点の代表者が朝礼で披露したんだそうです。

二つ目は、「月一回、全国の拠点に出向き、現場の販売員を対象としたアルコールなしの食事会を開催した」こと。お勤めの会社は全国に販売店があり、すべての販売店に出向くことはかなりの時間を要します。ですがこれを継続し、数年かけて実行されたそうです。これは相当プレッシャーのかかる仕事なんですね。というのは、現場の販売員がAさんに非常に鋭い質問をしてくる。ここでどのような回答、反応ができるか。これはその販売員の今後のモチベーション、パフォーマンス、そしてそのお店の将来に渡る売上を決定づけると思うんです。このプレッシャーは相当きつかったとおっしゃっていました。

そこで私は、すごく知りたくて「どうしてこの2つをずっと続けることができたんですか?」と聞いてみました。そしたらAさんはこうおっしゃりました。

「現場のみんなを知りたかったし、現場のみんなに自分を知ってほしかった」

Aさんのように、熱くて、自分に厳しく、自分に与えられた役割に対する責任感が非常に強い人は、長く辛いこともあきらめず継続できるんだと思いました。

が、正直私はそこまで強くないんです。。。正直途中であきらめることも多いのが現状です。そこで、「どうしたら何かをあきらめずに続けることができるんだろうか」と思いまして、ちょっと色々と考えてみました。

梅田望夫氏の「続ける技術」〜何かをやめる〜

梅田望夫さんは、その著書「ウェブ進化論」「ウェブ時代をゆく」などで、時間の有限性、優先順位の重要性を常におっしゃっています。大切な時間をどのような優先順位で使うかが、その人の人生を決定づけると。そして、自分が好きなこと、本当にやりたいことの優先順位を上げ、継続するためには、「何かをやめる」ことが必要というのが梅田さんの主張です。「ウェブ時代をゆく」の一節を引用します。耳が痛い。。。

「時間の使い方の優先順位」を変えるにはまず「やめることを先に決める」ことである。それも自分にとってかなり重要な何かを「やめること」が大切だ。お正月の「今年の抱負」が大抵は実現できないのは「やめること」を決めずに、ただでも忙しい日常に「やること」を足そうとするからである。時間は有限なのだ。精神論だけで新しいことはできない。

村上春樹氏の「続ける技術」〜身体を整える〜

「健康な体に健康な精神が宿る」と言いますね。体と心は切っても切れない。なので、何かを続ける精神力を維持するためには、身体を鍛え、整える必要があるというのが村上春樹氏の主張です。

村上春樹さんは、一つの小説を書きあげるために、一年かけて書き上げたものを、また一年かけて10回も15回も頭から書き上げる作業を継続します。これが年をとるにしたがって、かなりの苦痛を伴う仕事になるんですね。そこで、村上春樹さんは、自分の身体を小説づくりに適した環境に整えるために、長距離走をはじめ、数々のフルマラソンに出場し始めます。この過酷な「執筆→推敲」の作業を支える精神的な集中力・持続力のためには、身体の状態をその作業に適した環境にすることが重要というのが村上春樹さんの「続ける技術」であります。村上さんは、「BRUTUS(1999年6月1日号)」でこんなことを言ってますね。

20代、30代はできちゃう。ただ、40代、50代になってくると、そういうパワーがどうしても落ちてくるんだよね。できるはずのものができなくなってくるんだよ。もちろんごく少数の天才は別だけど、大部分の人はそうだ。(中略)それで僕は天才じゃないから、そういうパワーみたいなものを一つのシステムにしようと思ったわけ。

Webと使った「続ける技術」〜目標共有サイト「43things」〜

「続ける技術」をキーワードにググッてみると、色々出てくるんですが、ありましたね。目標共有サイトなる「43things」。

自分のアカウントをつくり、たくさんあるトピックの中からやりたいことを選んだり、新しく作ったりして、自分の目標を入力する。同じ目標を持っている人を見たり、自分の目標に進行状況のエントリを載せたり、コメントをつけたり、応援したり。目標を達成したらdoneリストへ移動、同時進行は43個まで。なぜ43個なんでしょうかね(笑)それ以上は「天地がひっくり返っても無理」ということでしょうか。

(43thingsのURL)
http://www.43things.com/

今、サンフランシスコ在住のLaurencresswellさんの24つの「目標」を見ているのですが(Laurencresswellさん、すいません!)1番目の「Keep calm and carry on」から始まり、「Plan my wedding」、「Do yoga」、「Lose 5 pounds」などなど。なんと17番目に「Be a role model」とありますね。自らがロールモデルになるんだと!

これは単純に面白いです。各目標に「cheers」がついてて、これもまた励みになります。私もやってみようかなと思いました。ちなみに、「43things」を運営しているRobot Co-opには、Amazonが投資しているとのこと。

そのものずばりの書籍があった〜石田淳「続ける技術」〜

以前読んだことがある書籍「続ける技術(石田淳著)」。続けられない理由を自分の意思や気持ちに求めるのではなく、行動科学マネジメントの観点から「続ける技術」について考えてみようという書籍です。

軸となる主張は、「何かを続ける」ためには

  ・ターゲット行動=続けるために核となる行動を増やす
 ・ライバル行動=続けることを阻害する行動を減らす

の両面から行動を考えて、コントロールすることが重要とのこと。例えば「英語をマスターする」ためには、

  ・ターゲット行動を増やす⇒英語に触れる機会を増やす、英字新聞を毎日読む、Podcastで毎日聞くetc
・ライバル行動を減らす⇒勉強する環境にテレビ・ゲームを置かないetc.

という行動マネジメントを行う。また逆に、「タバコを止める」ためには、「続けるの逆」と考えて、

  ・ターゲット行動を減らす⇒喫煙者と行動をともにしない、タバコに関わるツールを捨てるetc.
 ・ライバル行動を増やす⇒口が淋しくならないようにアメをなめるetc.

と続けるの逆で行動マネジメントを行うのです。

加えて、「大きすぎる目標」ではなく、達成可能な「小さな目標」をいくつも設定し、その「小さな目標の達成」にご褒美を与える。これを続けていって、最終的には大きな目標を達成できるようになる、というのが「続ける技術」です。

どうも近視眼的に「ターゲット行動だけを増やそう(減らそう)」とか「ライバル行動だけを減らそう(増やそう)」とする傾向にありますが、両面からアプローチすることで効果がはじめてでるというのは納得感ありますね。。。

斎藤孝氏の「続ける技術」 〜なんとか職人という自己規定〜

先日も書きました梅田望夫さん、斎藤孝さんの共著「私塾のすすめ」で、斎藤さんがおっしゃっている「なんとか職人」という考え方が、「続ける技術」として、前向きで好きだなと思っています。

「職人気質」の現代バージョンというのを自分の心の技をとしてもつということです。僕は冗談で言うのですが、たとえば「声に出して読みたい日本語」の編集者と、「僕らは声を出して職人」だからねと言い合ったり(笑)。「この仕事は、もう職員としてやりましょう。次が辛いとか言わないで」とか言いながら、細かいことをやっていると、「やっぱりこの仕事おもしろいよね」という感じになる。

要するに「なんとか職人」という感じの自己規定をしてみると、腹が決まるというか、逃げ出せなくなって、そうなると細部に楽しみを見出すことができるというメリットがあります。物事が続くか続かないかというのは、細かい差異に敏感になってそれが面白いと思えるかどうかによる、という面があります。

「何かを続ける」ために、「頑張るぞ」とか「やりきるぞ」という精神論ではいかにも弱く、「絶対続かない感」が漂います。だから続けられる仕組み・システムを作るんだというのも正しいとは思うのですが、仏を作って魂を入れずという言葉のように、仕組み・システムはユーザーの「魂」あってのもの。その意味でも「一人職人宣言」というのは、一般的な精神論を超えた、効果的なマインドセット法ではないでしょうか。また、持続性があるようにも感じますね。「あっ、俺/私は職人なんだから、ここで止めてはいけない」という自己奮起機能。

私が考えているがなかなか実行が難しい「続ける技術」〜一人でやらない〜

色々見てきましたが、私にとっても「続ける技術」は本当に永遠の課題。以前仕事でこんなことがありました。

新しい改革プロジェクト的なものを立ち上げて、推進しようとしたことがあります。ですが、やらないといけないことはみんながわかっているんですが、なかなか賛同者が得られない内容でありました。だけどもやらないといけない。このシチュエーションの中で、私は「もう自分ひとりでもやるしかない」と考えてしまったんですね。頑張ったんですが、結局一人でやれることも限界があり、志半ばで頓挫。。。結局何も変えることができず、残ったのは調査報告のための資料のみという悲しい結末となりました。。

このことが今でも思い出し、「続ける技術」というテーマと関連して考えると、「一人でやれることの限界を知り、一人でやろうとしない」ことが重要なのかなと今考えています。

何かを新しく始めるとき、5W2Hなどで考えると思いますが、「How(どういう手段でそれを実現するのか)」を考えるときに、加えて「どうやって継続させるか、持続させるか」という「HOW」をど真剣に考えないといけないんだろうなと再認識しています。

また、何かを始め、継続しようとする時に、自分の弱点を知り、その弱点を補ってもらえる第3者を巻き込み、自分がやろうとすることの仕組みの中にセットしてしまう。何かを始める段階でここに時間をかけると、「途中で頓挫する」というリスクを軽減し、また「やり直し」というロスと軽減することにより、一定期間で見るとより短時間でより高レベルの成果があがるのではないでしょうかね。

色々見ていくと、「何かを続ける」ということは、心と体、仕組みと魂、色んな要素からのアプローチが求められる「総合芸術」のようなものであり、だから何かを継続するということは、なんであっても芸術的な価値を持つんだろうなと再認識いたしますが、これは本当に、難しい。。。

最後に続けることの重要性を問いた、この言葉で締めたいと思います。

とにかく努力を続けなさい。そうすればいつか自身と力が湧いてくるでしょうから。
啓蒙思想家タランベールの言葉 スマイルズ「自助論」より)


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