17世紀末から18世紀にかけてヨーロッパで見られる革新思想。 合理的・批判的精神に基づき、中世以来の宗教的権威等を批判し、理性を大衆に啓発することによって人間生活の進歩・改善を図ろうとした。イギリスではロック・ヒューム、フランスではモンテスキュー・ボルテール・ディドロ、ドイツではレッシングなどに代表され、フランス革命の原動力の一つになった。啓蒙主義。
今年3月末で早期退職して以降、4月から哲学の勉強をしに聴講生として近所の大学に通っている。 今日の授業のテーマは「自由を問う」というもので、イギリスの功利主義を代表する哲学者であるJ・Sミルの「自由論」が取り上げられた。 ちなみにミルの功利主義は「満足した豚であるより不満足な人間であるほうがよい。満足した愚者であるより不満足なソクラテスであるほうがよい。」という言葉が有名。快楽には低級なものと高級なものとの質的な差があり、質の高い快楽を求めるべきだという質的功利主義を説いた。 ミルの「自由論」は、思想の絶対的な自由と、この思想の自由が実現されるために言論と出版の自由=表現の自由が確保されなけれ…
ジョセフ・ヒース『啓蒙思想2.0』を読む。私は気分が乗らない読書は体質的にできないのだけれど、この本はそんなわがままな私の頭にもすんなり入ってきて極めて刺激的な読書となった。自分自身の高校生の頃を思い出した。私は不遜というか恥知らずにも、高校生の頃大人たちはバカばかりだと信じていた。当時の私は島田雅彦を読みこなす人間で(島田雅彦止まりかよ、というツッコミもありうるだろうが)、それゆえに日本人の閉鎖的な村社会や共同体主義が我慢がならなかった。まあ、よくある話だ。当時Twitterがあったら私はクソリプ野郎になっていただろう。『啓蒙思想2.0』は、そうした理知的な(というか頭でっかちな)人間の過信…
だいぶ日が開いてしまった。日常が戻り忙しくなってきた。 意図して読んだわけではないのだが、この二冊を読んでいろいろ思うところがありました。 昭和18(1943)年発行の初等科の地理の本です。 今で言うところの小学校5、6年向けの地理の教科書なんです。 なんの前提条件も無しに読むと、本当によくできた教科書です。 (帯の二人の男性の顔が怖いが、気にせず手にとってみてくださいw) 現在の教科書よりもアジアの地政学に目端が効いているし、国柄と日本との関係についても触れています。アジアの各国と一緒に力を合わせて大東亜共栄圏を作りたくなります。 でも、地理というのは政治の「結果」、静態的な姿でしかないんで…
古い思想家への盲信は避けるべきであることは明確だと思う。 草光俊雄。北川勝彦。啓蒙ヨーロッパとアフリカ。啓蒙主義。18世紀の理性の時代。啓蒙の時代。昔の世界史。フランス革命やアメリカ独立を準備する民主主義や近代国家の新しい理念を。政治思想。啓蒙主義のアフリカへの態度。啓蒙思想と言っても思想家による違いもあるが。アフリカの立場で啓蒙思想を批判的に。科学的思考を。近代的民主主義の前提?近代国家の理念。啓蒙思想。アフリカからは非難的に。人種主義?同世代の目を借りて。近代的民主主義の前提?博物学。NaturalHistory。鉱物と植物動物。動物の中に人間が。自然世界の中で人間というものと人種というも…
正義って何ですかね? 今回は、社会契約論者であるジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)について述べていきたいと思います。 ルソーは18世紀にフランスで活躍した政治思想家・教育思想家・小説家です。『人間不平等起源論』『社会契約論』『エミール』『告白』など有名な著書が多数あります。 ルソーは独自の社会契約説を唱えました。そしてその思想は彼の死後すぐに勃発したフランス革命にストレートに影響したのです。 さらにフランス革命を介して現代の民主主義思想にも大きな影響を与えているのですが、「功罪が半ばする」と言うかプラスもマイナスもあった思想家のように感じます。 目次 啓蒙思想とは何か ルソーの文明…
将棋的な思考から成長しよう あなたは、自分で考えることができていると思っていますか? こんな問いかけを投げかけられると、大抵の人は「考えています」と答えるでしょう。 でも、それは間違いです。 答えは、教条主義的な思考を自己増幅しているに過ぎないということです。 今日はそのことを証明してみたいと思っています。 ずばり、あなたの思考は啓蒙思想家に洗脳されているというものです。 引用元:https://tetsugaku-life.com/ 目次 自由と民主主義 ~歴史への巨大な影響~ 宗教的寛容と経験主義(実証主義) ロックの考える自然状態と社会契約 ロックの政教分離論 「宗教と国家の分離」は非寛…
Aufklärung(アウフクレールング)とは 自分が犯してしまった個人能力財産- 内的にも外的にも自分自身で決定する事ができ、又自身でそれに対して責任をしっかり持てる事- のない状態からの出口である。これは自身の財産のない事であり、他者からの指導無しで、自身で掴み取る様に分かった事を基に行動する事ができるという能力のない事態を意味する。自分で犯した罪というのは、(もし自身で掴み取るまで分かることができない事に起因しているのでなければ)、この能力のない事態から自分で、誰からの指導もなく他の人に仕えようという自身の決断と勇気に問題がある。Sapere aude! (ラテン語 勇気を持て、賢くあれ…
ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764) 論争の世紀 数々の大作曲家を輩出した18世紀ヨーロッパは、啓蒙思想の時代と呼ばれます。 迷信や、いわれのない権威や神秘、なんでも〝神様のおぼしめし〟で片付けてしまう妄信などを排し、「理性」による思考で物事を解明していこうという思想です。 啓蒙とは、「自然の光」で暗闇を照らし出す、という意味です。 それは今でいう「科学」の考え方で、今でも〝UFOや幽霊は存在する〟と主張する人に対して、学者が科学的にありえない、と論駁する光景がTVなどでよく見られますが、そのハシリといっていいでしょう。 これまで触れてきましたが、ラモーは音楽の不思議を科学的に解明…
記事の内容 この記事では、人工知能や認知科学に関するおすすめ本を紹介します。 読み物的な入門書から理論系の本まで、できるだけ幅広く紹介したいです。 色々なテーマの本を読んでいますが、人工知能は理論的にも、実社会的にも、とても面白い話題ですよね。今後も目が離せません。 それでは、目次をどうぞ。 記事の内容 人工知能と認知科学について 認知科学 心と脳 認知科学入門 安西祐一郎 教養としての認知科学 鈴木宏昭 類似と思考 鈴木宏昭 人間の解剖はサルの解剖のための鍵である 認知科学への招待 大津由紀夫 コミュニケーションの認知科学1 言語と身体性 認知科学への招待 苫米地英人 知能の物語 中島秀之 …
日本精神史 近代篇 上 (講談社選書メチエ) 作者:長谷川 宏 講談社 Amazon 『日本精神史 近代篇上』 長谷川 宏著を読む。迂闊にも『日本精神史』という前著があったことを知らずに読み出した。 在野の哲学者として知られる著者が歴史、しかも近代の日本人の「精神の歴史」を書くとは。どのようなものかと読み進む。 「はじめに」から引用。 「さて、江戸の終わりから明治の初めにかけて日本の歴史は大きな転換期を迎える。それまではやや遠くに眺めやられていた西洋の文明が、すさまじい勢いでこの極東の島国に流れこみ、日本はまたたくまに「近代」の名で呼ばれる時代に突入する」 その昔、網野善彦の『日本の社会の歴史…
季節変動を克服するために社会的対応としてカーストが制度化され、物理的対応としてサイキック人類が創造された。季節変動の終息がサイキックであるヒロインの課題だが、カースト社会の是正が物語の真の目的である。季節変動は社会問題を設定する手段にすぎない。 解決すべき諸弊害は互いに絡み合っている。サイキックは核兵器級の力ゆえに迫害の対象となり、ジェノサイドの恐怖にさらされている。サイキックはつらいが社会全体にとってもジェノサイドは困る。サイキックなしには冬を越せない。 ヒロインが身を寄せるコミューンは問題の縮図となる。コミューンの晶洞は侵略を受ける。ヒロインは晶洞ごと敵を焼き払う。出エジプトを強いられたコ…
はじめに 難関私立大学の一部で世界史の論述問題が出題されていますが、教科書の内容を時系列に説明できれば答案になる出題が大半です。 そうした中で異彩を放つのが上智大学TEAP方式で、お困りの受験生が多いのか当ブログにアクセスが集中します。 上智大学の一般試験世界史は悪問・難問・奇問のデパートとして悪名高く、『絶対に解けない受験世界史』の常連でしたが、文科省の入試改革にあわせて世界史の出題はTEAP方式の論述のみになりました。 問題は東進の過去問ライブラリーから。上智大学のHPにも問題と出題意図が掲載されます。その時にぶんぶんの解答例が大間違いならコソーリ直します(インチキ)。 解答例はぶんぶんの…
フランス人権宣言(ジャン=ジャック・フランソワ・ル・バルビエ画) 人類が到達した、偉大なる宣言 1789年7月14日。 パリ市民が、絶対王政の圧政の象徴であったバスティーユ監獄を陥落させ、フランス革命の火ぶたが切って落とされました。 7月14日は、フランス共和国の建国記念日であり、「パリ祭」として今でも祝われています。 ただ、バスティーユ襲撃は、まだ法的な意義、評価がされない間は単なる反乱、暴動であり、パリの争乱はフランス各地に広がってゆきました。 地方の農民や都市民が在地の第一、第二身分を襲うという、無秩序なパニック状態となってしまいました。 「大恐怖」といわれています。 立憲国民議会はこの…
ケベックシティ2日目午前中。ここのノートルダム教会の創設者は17世紀の人物で、大西洋を7度横断し、この地に教会や神学校を建立するために尽力した人物だそうだ。建物自体は20世紀初頭のものだという。豪華ではあるが、どこか作り物めいた感じがあるのは、中途半端に新しい雰囲気があるせいで、セットのように感じられてしまうのに、宗教画は古めかしい感じになっているからだろうか。 と書きながら、自分にとって宗教は過去に属するものであるがゆえに、そこに近代的な美学が混入すると、アナクロニックに感じてしまっているのかもしれない、ということに気づいた。 (しかし、全く同じことを新たに建てられた伝統的寺院に感じるかとい…
私の読書遍歴を振り返ります。すごく雑です。いちいち内容や感想を書くと長くなってしまうので、タイトルばかりを並べました。近いうちに「大学時代に読んでよかった本」として、もう少し丁寧な記事を書くので、興味のある人はそちらもご覧ください。 幼稚園まではほとんど記憶がありません。絵本は「だるまちゃん」シリーズを好んでいたそうです。 小学生の頃は「京大生の典型的な過去」みたいな読書をしていました。クラスメイトのなかでは読書している方だが、読書家というほどではない。低学年のうちから図書館にこもって青い鳥文庫を読み漁り、一通り読破したら芥川龍之介なんかに手を出してみる、というような早熟な小学生がたまにいます…
2024/04/02 内藤正典「ヨーロッパとイスラーム」(岩波新書)-1 難民受入を進めるドイツと多文化主義のオランダの場合 2004年の続き 「ヨーロッパとイスラーム」を考えるときに、イスラムのひとたちがどのような信仰や社会帰属意識や「個人」観などを持っているかを把握することがとても重要だが、自分はまだよくわかっていないのでサマリーからは割愛。その結果、ここに書く感想はヨーロッパ人の眼に近い所に立って、イスラムを外からやってきた人たちとみなす視点になる。そのようなバイアス、偏向があることを自覚しておこう。そうすると、国民国家や近代化、啓蒙主義、平等原則などの西洋の基本的理念が普遍的であるかと…
今回は、フランス革命についての板書案を紹介します。 中学生の生徒が、世界史の中でもフランス革命がさっぱりわからない、というので指導したときのものです。 もちろん中学入試には出ませんので、中学生を対象とした授業の板書案です。 1.ブルボン王政 2.国民議会 3.立法議会 4.第一共和政 5.ジャコバン派独裁 6.総裁政府 7.統領政府 8.第一帝政 1.板書案 フランス革命 いつものように黒板1枚にまとめます。 フランス革命は数段階に分かれており、どうにも頭がごちゃごちゃになりがちです。まずは全体の目次としての板書を1枚かくことにします。そしてこれを見ながら授業をすすめることで、教師のほうも混乱…
はじめに 文科省がしきりに「学力の3要素」と言う今日この頃、私立大学の世界史入試問題の変化について検証します。今回は同志社大学です。 www.doshisha.ac.jp 私大専願者の憧れかつ難関国立大学の併願先として関西私立大学の生態系の長に君臨する同志社大学ですが、世界史の問題は基本教科書準拠、旧センター試験で8割以上得点できる人はその蓄積に私立的な知識を追加すれば合格点が取れる難易度です。 合格者平均点は以下の表のとおり8割を超える日が続出です。世界史では差をつけられない、ミスすれば即アウトという世界です。( д) ゚ ゚ 参考 2年分の受験者平均点と合格者平均点 2月5日 文系全学2月…
押し入れを整理していたら昔テレビ放送を録画したVHSのビデオテープが出てきた。その中の1本に、1991年12月8日にNHK教育テレビ(現Eテレ)の『芸術劇場』が収められていた。この日の番組では、最初の1時間が『モーツァルト・オン・ツアー ウィーン・プラハ もう一つの世界』と銘打ったアンドレ・プレヴィン(1929-2019)の解説と演奏が収められていて、その1時間番組の前半でプレヴィンが『フィガロの結婚』の西洋史における意味合いが解説し、後半でフィガロと並行して書かれたピアノ協奏曲第24番ハ短調K491の全曲を弾き振りする番組が吹き替えと字幕付きで流された。続いて、この日の放送のメインとして『フ…
私たちは歴史の変わり目に立っている? ⽣成AIは人類社会を変える発明だと、多くの人が主張しています。 たとえばMicrosoftドイツ法⼈のCTO アンドレアス・ブラウン⽒は、GPT‐4の登場を「初代iPhone」に匹敵するターニングポイントだと述べました。また、東京大学副学⻑の太⽥邦史⽒は、学⽣に向けた声明⽂の中で「組み替えDNA技術」に匹敵する変⾰だろうと指摘しました(太⽥⽒の専⾨分野は分⼦⽣物学)。さらにビル・ゲイツ⽒は、AIは「GUI」以来の⾰命的なテクノロジーの進歩だと主張しています。要するにAIが社会に与える影響の大きさを、それぞれ⾃分にとって⼀番⾝近な「インパクトがあった過去の発…
宮廷でハープを奏でる王妃マリー・アントワネット 画・Jean-Baptiste André Gautier-Dagoty / Wikimedia, Reprocessed by Vosot Ikeida 文・ぼそっと池井多 歴史をつくるのは嫉妬である 「パンがないならケーキを食べればいいのに」(*1) と言ったために、マリー・アントワネットは殺されたようなものだと思う。 フランス王妃であった彼女はぜいたくな暮らしをしているから民衆の貧困を知らない、と反感を買ったのだ。 しかしこれは、それぞれの認識の中にしか棲めないという人間の宿命を物語っている。彼女はケーキというものがあるのが当たり前の世界に…
こんにちは、ぽてぽです。 今回は啓蒙思想についてわかりやすく解説します! 日本の今の政治の考え方とつながるところがあり、 公民と歴史のどちらでも重要な部分なのでぜひチェックしてみてください! 【こんなかたにおすすめ】 歴史が苦手な方 世界史の流れをおさらいしたい方 受験生の方 公民を勉強中の方 [17~18世紀 英・仏] けいもうしそう(啓蒙思想)ってなに? 【広めた3人】 ①ロック ②モンテスキュー ③ルソー 〈ロックとルソーの違い〉 学校に通っていなかった当時の人々にどうやって広まった?? 【まとめ】
enocoで開催されたTIPAアートプロデュース2024「徳永写真美術研究所に関わる作家7人の個展と研究活動の報告展」の個展のうち、主催者の一人である徳永隆之の展示を別途取り上げる。 約20年間に亘って収集された、大量の「手書きの世界地図」がすごかったのだ。