粉薬を飲むごとき煩わしさだ。苦い匂いや味が鼻と口に広がる。勢いよく飲めば咽せ返る。そんな一冊だ。 日本とは、なかなか人を得ない。つくづく、そう思う。一角の人物が大きな役目を担わない。結果、中途半端な痴れ者がのさばり、碌なことにならない。軍人勅諭ができたのも、西郷や江藤の反乱が怖かったからだ。心底震え上がった。道理を正面から眦を上げて言われると、どうしようもない。本当に嫌だ、と思った。原理原則を貫き、昨日まで言ってたことと違うと詰問されると窮する。辛かったのだ。だからこそ、おとなしてくしてくれ、言うことをきいてくれ、と祈るようにわざわざ文字にした。 そして、満蒙である。そもそも満蒙などという言葉…