守銭奴というものは今も昔も小説中の恰好の登場人物です。特徴的と謂うよりも象徴的なのです。何の象徴でしょうか。現在の『状況』が自分が死ぬまで変わらないと、そして自分は死ぬ事も老いる事も無いと、加えて金は絶対に自分を裏切らないと盲信している人間の象徴です。現在の状況は天候不順に拠る世界的な作物の不作一つで、或いは自国或いは他国のそれでさえも戦争一つで根本的に変わります。またそれよりも尚激しく、自分を支えてくれていた家族が失われる事に拠って決定的に変ります。また程無く脚が痛くなり、更には困った事に若い頃には絶対に間違えなかった金の計算すら頻繁に間違える様になります。おまけに金貨を何処(どこ)に蔵(し…