「ソラニン」(1) 浅野いにお

 社会人2年目の芽衣子とフリーターの種田のカップルを主人公に、種田のバンド仲間との生活を描いたマンガ。「ソラニン」とは、ジャガイモの芽などに含まれている有毒物質だそうです。作中では、曲名としても使われていまし、主人公たちの名前を含めて、キーワード的に登場してます。
 今のままの生活でいいのかと、自分の人生に対して不安を抱え、現在の生活に満足できない日々を送っている人たちばかりが登場する青臭い若者たちの青春マンガとも言えるかもしれません。作風やスタンスで好き嫌いがはっきり分かれるタイプのマンガです。オシャレ臭は隠せません。
 私としても、好きだと言い切れないような微妙な感覚で、毎回悶えながら読んでいます。ストーリーとしても、読んでいる最中は、登場人物の悩みや葛藤に対して共感できるような気もしてくるのですが、正直言って作品中の主人公たちの生活スタイルって私にはまったく縁のないものなんですよね。同じ同棲生活を描いた木尾士目の「四年生」、「五年生」を読んでいたときに感じたものと似たような感覚を感じました。
 私の場合、過剰なほどの安定志向により、日常への虚無感は感じても人生について悩むことは殆どありません。死なない限りは生きていこう、といったところでしょうか。まあ、生きていくなら楽に生きたいとは思います。特に最近はその傾向が強いです。突発的な不安や感情の波を別にすれば、大局的に見て、希望もないけど絶望もないといった感じでしょうか。つまらない人生ですが、だからこそオタクをやっていて良かったと思います。こだわりの無い人生だけは考えられません。
 それはともかく、結論としては、絶賛することには照れがあるけれど、評価はしているといったところです。素直に言えば、なんだかんだ言っても好きなのです。まあ自分に合うかどうかは読んでみないと分からないかもしれません。マンガとしての完成度は高いので、まずは読んでみる事をオススメします。