nothing last

 旅行に行った 一週間











 直島という 岡山と香川のあいだにある小さな島にいって それから四国をぐるりと廻った




 直島では家プロジェクトという家を利用したアートが公開されており そのショップではgutevolkの『suomi』とくるりの『the world is mine』が販売されていた




 香川県丸亀市にある猪熊弦一郎現代美術館というところに行ったら エルネスト・ネトの個展が開かれていた 3Fフロアで比較的小振りな作品を公開しており 張り巡らされた薄布と それを濾して届くぼんやりとした柔らかい光と 空気すら弾んでいるような無重力的な空間が創られていた 薄い布で空間を作成するという大きな作品を作る人で それらの布は上空にいくにつれ細くより合わせられていき 最終的に一カ所に集まるように作られていた そこではターメリックなどの香辛料が重しの代わりに使われており 視覚 聴覚を超えて 匂いも作品の一部として作用するよう考えられているらしい


「サーカス小屋と同じ設計だそうですよ」


 しげしげと観て回っていた僕の近くに 美術館スタッフの女性がそれとなく近づいてきて教えてくれた


「そうなんですか」


「今回は重しが二つあって 片方が80kgずつあるそうなんです」


「じゃあこれ全体って160kgだけで支えられてるんですね」


 蜘蛛の糸にも似て張り巡らされた上空の布を見上げると 彼女もつられてか顔を上げた


「布の張り巡らし方によって変わってくるそうですよ」


 僕はお礼を言って 携帯で写真を撮っている彼女に声をかけて 作品の外へ出た




 徳島県には小便小僧という像がなぜか渓谷の崖際に立たされており それを見にいって ちょうどフェラチオをしているように見える角度と高さで写真を撮った デジカメに記録された彼女のフェラチオ写真を見ながら いったい何人の馬鹿がこんなことをやったのだろう と僕は思った




 ちょうど高知県に入った日に台風がやってきて 沈下橋という名前で呼ばれている四万十川の橋がいくつか沈んだ


「天気の良い日は沈下橋から飛び込めるんだって」


 飛び込んでやろうと目論んでいた彼女が言った


「今日は橋が沈んでるし流れも速くなってるから まぁ無理だけどね」


 下流から上流へ一つ一つ順番に回りはじめた どこの橋にも僕らのような観光客と思われる数人の男女と 地元の方と思われる知った風な口を利くおじさんがいた


「この橋 今は渡れないんでしょうか?」


「今は無理だなぁ 水の流れが早くて落ちたら死んじまう 橋が見えてるから渡れないこともないけど 流木とかに足払われることもあるしな」


 彼女が訊ねると 水色のポロシャツを着たおじさんが笑いながら答えた




 愛媛県で最後に泊まったホテルはできたばかりらしく 部屋には室内風呂 露天風呂 岩盤浴があり 42インチのプラズマテレビまで設置されていた MUSIC ONからスペースシャワーTV はてはよくビジネスホテルなんかで有料のAVチャンネルまで見放題で 二人 バイブを入れられた画面の中の女に見入っていた




 家に帰ると 窓が一枚開けっ放しになっていて お風呂ではシャワーの栓が締まりきっておらず ホースを伝って少量の水が流れ出ていた


「泥棒入らなくて良かったねー」


 変わった様子のない家を見回して 彼女は言った


「入ったところで何もないんだけどね」


「なんもねぇ!」


art-school それ?」


「そう」


 teenage lastを久し振りに聴いたら 木下理樹には もう色々なものができてしまったんだなと感じられた


 なんもねぇ


 うん