ヴィクトリア朝と屋敷とメイドさん

家事使用人研究者の久我真樹のブログです。主に英国ヴィクトリア朝の屋敷と、そこで働くメイドや執事などを紹介します。

メイド喫茶に初めて行ってみたい人向けに、英国メイド研究者が書いてみる

最近、知人との会話の中で「仕事」という言葉をポジティブな意味で使ったら、ネガティブな意味で受け止められて、そのギャップが面白いなぁと思う機会がありました。「その人が使う言葉は、その人がどのような経験をして、見方をしているかで決まる」というのは、『英国メイドの世界』を出版した時に、痛切に感じました。



「メイド」の言葉も、受け手によって大きく意味が異なります。



歴史的英国メイド研究をする立場として無視できないのは、日本における「メイド喫茶」の話題です。私が出版できたのもある意味でそのブームと無縁ではないこともありますので、「英国メイド」経由で「メイド喫茶」に興味がある人に向けてこのテキストを書いてみます。



「私が好きなお店が、今後も続いていくように」との願いもあります。メイド喫茶に詳しい方には「いまさら何言っているの?」と思うことばかりかもしれませんが、多分、私のブログの読者はあまりこの領域に関心が無いと思いますので、それなりの意義があるでのはないかと。



自分の体験に基づくものなので、おすすめのお店として名前が出ていないことに他意はありません。和菓子の紹介をしているブログでケーキが紹介されていないことを怒る人はいないと思いますので、そういうような話にて。


1.メイド喫茶に興味を持つ流れ

単純に紹介しても何なので、まずは私とメイド喫茶の出会いの背景などから。

1-1.メイドコスプレ=同人だったという認識

当初、自分とメイド喫茶の接点は、極めて薄いものでした。「自分が研究する英国メイド以外には興味が無い」と、私はメイド喫茶だけではなく、世の中に流布するアニメやコミックス、ラノベなどのメイドコンテンツに関心を持たずにいました。さらにこの頃は誰かとメイドについて話すよりは、「本を読んだ方が学びが多いから、本を読む」と思っていました。



とはいえ、リアルのメイド服を見る機会が無かったわけではありません。メイド研究同人誌の発表の場となるコミケや制服系の同人イベントでは、メイド服を見る機会が多くありました。多分、今でも、これまでに見たメイドコスプレの累計数は、自分がこれまでメイド喫茶で見たメイドの累計数より多いと思えるぐらい、軸は「同人」界隈にありました。



メイド喫茶ブームを迎える以前の頃は、強いてコスプレ広場に行く必要もなく、自分のサークルスペースにいるだけで、メイド服を着た人を見ることができれました。正直なところ、同人イベントだけで十分だったと言えます。


1-2.メイド喫茶遍歴

メイドブームの渦中で生じたメイド喫茶への関心は、主に「英国メイド」的なクラシカルな雰囲気を訴求したメイド喫茶に向かい、時々、足を運ぶというレベルでした。記憶にある限り、メイド喫茶(ここでは、「メイド服やそれに近しいコンセプト的な要素を持つ店舗、執事喫茶含む」総称として)への来訪の初回年と頻度は、以下の通りです。



2003年『Sweet Maid Garden』(『エマ』『シャーリー』系同人誌即売会

2005年『JAMアキハバラ』、『Wonder Parlour』(2回)

2006年『シャッツキステ』(1章:2回、2章:8回?)

2009年『欧風ギルドレストラン ザ・グランヴァニア』

2010年『執事喫茶Swallowtail』

2010年『月夜のサアカス』(2回)

2011年『クラシカルカフェ Cicaro』

2011年『Hand Maid Cafe うさぎの森 L⇔R

2011年『Cafe Favorite Piece』



2003年はイベント内のカフェ企画で文化祭的なものでした。そこから友人に誘われて『JAMアキハバラ』へ行き、さらにメイド喫茶ブームの中でクラシカル系な雰囲気をコンセプトを持っている店舗が出現し、足を運びました。私の認識では、クラシカル系は決して主流ではなく、カウンターとして登場したもので、「世の中に少ないから自分で作ってしまえ」的なところで共感するものがあり、興味を持っていました。



自己認識として少ない方だと思いつつ、世の中的にはメイド喫茶に「足を運ぶか」「運ばないか」が分かれ道で、一度行ってしまえば後はもう同じでしょうが、2009年ぐらいまでは「メイド喫茶に10回も行っていない」と言えました。(ここは「そんなに行っていない」と差別化するポイントですが、世の中的に見れば「10回も行っているのかよ!」と突込みが入るところでしょう)


2.メイド喫茶への関心の高まり

ところで、2010年以降にメイド喫茶へ足を運ぶ機会が増えました。これは出版とTwitterの影響です。


2-1.出版後によく聞かれる「英国メイド」と「日本のメイド」

まず「英国」とはいえ、「メイド」の本を出したことで、メイド喫茶との違いをとてもよく聞かれるようになりました。シャッツキステのイベントで話をした時も、当然のように質問されました。なので、しっかりと「英国メイド」と「日本のメイド」を関連させて説明できるようになりたい気持ちが強くなりました。



また、客観的に見て、私が『英国メイドの世界』と言う本を出版できたのも、日本のメイド喫茶ブームがあったからです。そうであればこそ、「メイド喫茶は英国メイドではない」と無視するのではなく、総合的に「メイドブームの歴史」を理解し、10年以上先に残るようにしようと思いました。



その辺りの資料収集や情報整理は、メイドブームに集約していますが、来年にかけて深耕していく領域です。


2-2.メイド喫茶常連の方々との交流

次に、Twitterで「メイド喫茶クラスタ」的な方々と知り合いました。それまで主体的にメイド喫茶のサイトを見る機会を持ちませんでしたし、前述したように強い興味もなかったのですが、シャッツキステでの出版記念コラボイベントを通じて、或いは出版を通じてフォローし、フォローされて、視点が変わりました。



自分の本がメイド喫茶に通う人たちにも読まれていたり、メイド喫茶の店員の方の手にも届いているのを知りましたし、followして交流するうちに、自分の関心のなかった領域の情報もいろいろと入ってくるようになったのです。自分が好きなお店の常連の方が通っているお店を知り、そこに足を運んでみて「実際に、良いお店だった」との体験もしました。


3.多様なメイド喫茶の中でのおすすめ

さて、本題です。



そもそも、日本のメイドイメージはひとつではありません。メイド服を着た店員がメジャーになって言ったきっかけのひとつは明確に、「喫茶店にメイド服を着た店員さんがいる」ところですが、産業は多様化し、メイド服を着た店員がいる「喫茶店」から、「眼鏡屋」「マッサージ」「美容院」「キャバクラ」「風俗」まで、幅広く「メイド服」は存在しています。



その上、メイド喫茶自体が細分化しています。強引に分かりやすくすると、「メイド服を着た店員がいる喫茶店」と、「メイド服を着た店員によるアトラクション要素を含むイベント型」とに分かれます。



分類は 外神田7丁目のキセキ/2010年版秋葉原メイド系飲食店ポジショニングマップや、秋葉原コンセプト系カフェのポジショニングマップが詳しいです。


3-1.喫茶店:過去の延長線上にメイド服っぽい制服採用

日本にメイド喫茶が無かった頃から、メイド服的な衣装は飲食業界に持ち込まれていました。そうした制服ブームは1990年代にメイドブームと並行して、或いはそれ以上に盛り上がりを見せた領域でした。デパートの飲食系店員の制服でも、メイド服に似た衣装を見かけることがあるでしょう。



[特集]第2期メイドブーム〜制服ブームから派生したメイド服リアル化・「コスプレ」喫茶成立まで(1990年代)



ファミレスではアンナミラーズが有名ですし、「不二家レストランの高級店」とされる不二家系列のファミレスだった「ブロンズパロット」の制服もマニアの間では知られています。2001〜2002年には、既に下記のような制服本が出版されています。



街で見かける可愛い制服―レストラン・菓子店編

街で見かける可愛い制服―レストラン・菓子店編



素敵なお店のかわいい制服

素敵なお店のかわいい制服





で、このような「結果としてメイド服っぽい服を採用している」系列で自分のオススメは、「椿屋珈琲店」です。有名な珈琲店で普通のお客さんがほとんどと思いますが、ここの制服はなぜかクラシカルなメイド服を採用しています。



メイド喫茶ではありませんが、「メイド服を着た店員がいる普通の喫茶店」に行きたい初心者の方には、オススメです。この制服の採用が自覚的なものかどうかは別の話ですが、似たようなところでは日光・東照宮の近くにあるレストランも有名です。それはご自身で調べてみてください。


3-2.メイド喫茶

メイド喫茶らしいメイド喫茶でかつ老舗的なところで有名なのは、下記3店でしょうか。この3店もそれぞれにカラーが違うので(というほど詳しくない・行っていないお店の方が多い)、詳しくはホームページをご覧ください。



キュアメイドカフェ

メイリッシュ

JAMアキハバラ



キュアメイドカフェは日本最初のメイド喫茶として知られ、メイリッシュは「T-ZONE」が母体だったこともあって、その店舗展開が新聞記事になったり、『ガイアの夜明け』で取り上げられたりしました(メイド喫茶ブームとメディア露出



他に、グランヴァニアも喫茶店が主体なところなので、障壁は高いかもしれませんが、選びやすいのではないかと。


3-3.メイド喫茶:イベント系・萌えを売りにする

こちらは異世界に迷い込む系というか、テレビで使われる機会が多い店舗です。



ぴなふぉあ

@ほぉ〜むcafe



私は行ったことが無いので、詳しくありません。「ぴなふぉあ」はアキバを舞台にした『電車男』に出てくるメイド喫茶のモデルとして知られていますし、実は毎日新聞デジタル「MANTANWEB」にぴなメイド生活と言うコラムを連載しています。これは個人的に驚いた世の中との接点です。



「@ほぉ〜むcafe」はメイド喫茶の現在のメディア露出の流れを変えた有名店です。上記のメイド喫茶ブームとメディア露出で取り上げたように、メイド喫茶ブームの際には最もメディア露出した店舗のひとつと思えますし、アイドル展開も行いました。メイド服→アイドルの系譜は、どなたかに語っていただきたいところです。



自分が行っていないお店を紹介するのも何なので、私が初心者でもお手頃に楽しめると思うのは、『Hand Maid Cafe うさぎの森 L⇔R』です。ここは私が知る限りでは『執事喫茶Swallowtail』と同じく同人誌を扱うK-BOOKSの経営する店舗なので、よく考えられたコンセプトになっています。



この辺りの店舗は初心者が行くには敷居が高いかもしれませんので、「自分が行ってみたいお店(コンセプト)なのか」という事前調査をするのが良いかと思います。


3-4.コンセプト・こだわり系

最後が、私が個人的に好きなお店です。いずれもオーナーの方が「好き」だから立ち上げたもので、ある意味では表現に近いものがあります。同人誌を「好きだから作ってきた」私にとって、実際にビジネスとしてお店を立ち上げて経営し、人を雇用するこうした方々には敬意を持っています。



何よりも、「オタク的文化」を大切にしているところが好きです。



人にオススメする手前、2回以上訪問した店に限定しています。



月夜のサアカス

Wonder Parlour Cafe

シャッツキステ



『月夜のサアカス』はヨーロッパ・少女漫画的な世界観で、広々とした店内は落ち着いた雰囲気となっています。本棚が多く、多種多様な本・漫画・写真集(建物など)が並んでいます。時々創作表現と重なるイベントを行っていますし、料理が美味しいのでランチにもオススメのお店です。



Wonder Parlour Cafe』はヴィクトリア朝メイドにこだわった池袋の店舗です。紅茶やケーキ、店内装飾へのこだわりもつよく、メイドさんのサービスレベルも極めて高いです。年に数回、メイドさんによるピアノの演奏などもあります。英国らしさだけかと思いきや、オタク界隈との接点も深く、時期によってはコスプレイベントもありますので、その辺りは日本のメイド喫茶の流れも踏襲しています。



そして、『シャッツキステ』は「アキハバラカルチャーカフェ」を名乗るだけあって、今は多様な領域に展開しています。「メイドが営むオタクの遊び場」「好きを表現・共有する場」として成立し、店員のメイドさんや常連さんによる「夜話」や、ボードゲーム、あるいは私が『英国メイドの世界』出版時に行ったようなイベントや、この冬には2011年12月25日(日)〜12月31日(土) 芦田豊雄 回顧展のような展示も行われています。



どの店舗も「日本のオタクカルチャーを大切にしている」ところが、個人的に応援したくなるポイントです。


4.終わりに

どこかのタイミングで書き直すこともあるかもしれませんが、どの店舗も私が行っている時間が基本的に平日昼過ぎ〜夕方なことが多いので、お店や来客する方の雰囲気が時間帯によって異なるかもしれない点は、ご了承ください。



また、ここで取り上げていない、深い言及をしていない店舗については詳しく知らないので書いていません。



あくまでも私の行動範囲が限定されるだけで、実際には北海道、愛知県や大阪府、福岡県など全国各地にもメイド喫茶は点在しており、名店と呼ばれるお店も存在しています。この視点を私に与えて下さったのは、ブログたかとらのメイド喫茶リストです。こちらを見ると、メイド喫茶の全国での浸透ぐらいに驚かされます。



何かの領域を語るときに、「自分の観測範囲だけ」で語ることは避けたいものですし、予断を持つことにも注意が必要です。今回は「私が知りえる範囲」で書きました。基本的に、興味が無い人にはまったく入ってこない情報と思いますので、このブログで何かしら、メイド喫茶への視点が広がる方がいれば、幸いです。