『杜氏になるには』 (なるにはBOOKS)読了

杜氏になるには (なるにはBOOKS)

杜氏になるには (なるにはBOOKS)

マイク・モラスキーさんの本*1に出てきたイギリス人杜氏が出てきます。
たまたま図書館でぱらぱらめくっている時にそれを見つけ、
いいや、これもついでに借りよう、と、借りました。

これ、すごいシリーズですね。私も中高の頃こういうの知ってれば。

出版社のなるにはBooks一覧ページ(タイトルのみ)
http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=NARU&code=&type=&year=S&flg=1&word=%82%C8%82%E9%82%C9%82%CDBooks&key=0


宗教家*2とか、お寺から新宗教イスラム教まで網羅してるし。
キリスト教は雪の下教会に取材してるし。
ドライバーは運転手とか物流の巻、建具師は和の仕事の巻と、
仕事イコールタイトルになってない巻もあり、また、
どこに入ってるのか分からない仕事もありますが、
(型枠工とかミキサー車とか産廃とか中古車ディーラーとか)
とにかくすごいわ、一冊一冊これくらい濃密なのか。
欠巻はこれから出るんでしょうが、72巻棋士とか、74巻力士とかほんまに出すんか。

という閑話休題はおいといて、伝統酒蔵から機械化された大関月桂冠まで、
はたまた農閑期の季節労働形態から週休二日正社員雇用まで、
日本酒の暗黒期に人材が集まらなかったので、どの年齢層が手薄か、まで、
中国新聞社の現役記者が非常に的確にぴしぱし取材してそれに基づいて本にしてます。
美味しんぼ夏子の酒は当然参考文献として登場、これは固い本ですわ。

なぜ著者がこの本のライターに指名されたかは、
著者がかつて海外六か国で清酒作りを取材して本にしていたことで、
非常に柔軟にこのテーマにとり組めると判断されたから、だと思います。

海のかなたに蔵元があった

海のかなたに蔵元があった

例えば、モラスキーさんの本に出てくるフィリップ・ハーパーさん(執筆時33歳)の
インタビューは以下のごとし。

頁131
――ほかの酒類と違う日本酒の個性はどこにあるのでしょう。
 ビールはのどごし。ウイスキーは熟成の味。ワインは酸味、渋みと熟成。じゃあ、日本酒のウリは何か。うまみです。そこをもっとアピールしたほうがいいと思うけど、どうも逆にいっているような気がします。たとえば淡麗辛口というのがそうです。でも私たちの造っている酒は違う。山廃酛で、しかも一年以上熟成させているので、うまみが出やすい。しかもなるべく濾過をかけないから、そのうまみが逃げない。もともと濾過は、悪いものを抜く技術です。ていねいに造って悪いものがない酒に、濾過は必要はないと思います。

引き出してるなあと思いました。もっかいこの杜氏さんの本を紹介。

英文版 日本の銘酒ガイド - The Insider's Guide to Sake

英文版 日本の銘酒ガイド - The Insider's Guide to Sake

杜氏」を私は「とじ」と読みますが、この本は「とうじ」です。
どっちにしても、刀自やら湯治やら同音語があって紛らわしい。
さらっと著者は書いてますが、杜氏は蔵人(くらんど)(くろうど)のリーダー、
まとめ役なので、人を動かす能力が必要で、
頁72、杜氏は技術と数字と人間力にたけていないとできない仕事
ということです。人間力が問われるわけですから、下記になります。

頁4
 この本を手にしたあなたは、あるいは別の仕事につくかもしれません。でも酒をたしなむようになってから、この世界にあらためて関心をもつこともあるでしょう。その時に読み返してもらっても、遅くありません。酒の世界には、回り道をして入ってくる人がけっこう多いのですから。

私はこれから入ったりしませんが、いいことばだなあ、と思います。
えーとあと、この本に、鬼殺しは出てきません。以上