横組み/縦組み(平野甲賀)

安尚秀、平野甲賀「文字の夢に感応する」(in 『別冊本とコンピュータ3 コリアン・ドリーム! 韓国電子メディア探訪』、pp.153-162)


安尚秀氏は韓国のフォント・デザイナー。
「日本語はタテ組み、ハングルはヨコ組みという基本的な違いがありますね」という平野甲賀氏の発言(p.161)に対して、安氏曰く、


タテ組み、ヨコ組みということは、もしかしたらいまは日本だけに残っている問題じゃないでしょうか。韓国は全部ヨコ組みで、新聞も最近、全部ヨコ組みになりました。中国でもほとんどヨコ組みですね。
日本では、タテ組みが東洋の精神を表す、いわばアイデンティティのように考えられているみたいですね。でも、私の考えではそれは選択の問題です。東洋の文字はタテ組みもできるし、ヨコ組みもできる可能性を持っています。韓国はタテ組みを選ばずにヨコ組みを選びました。そして、漢字を選ばずにハングルを選んだのです。たしかに、ここまで急激に変わったのは韓国ぐらいだと思いますが。(ibid.)
これに対して、平野氏曰く、

僕の感覚では、タテ組みは文章を読むためのもので、ヨコ組みよいうのは説明的な文書のためのものという感覚があります。日本では、文芸書をヨコ組みすることはほとんどないですね。
タテ組みで、面白いことがあるんです。組んでいくと、漢字は字間が詰まっているけど、ひらがなや点がくると字間があきますよね。かぎカッコなんかがくると、もっと前後があいてしまう。それを欧文のように詰めちゃえばいいと思うけど、それは本文組みでは絶対しないんです。タイトルや見出しではやりますけどね。このベタ組みでないと、本を読んだ気がしないんです。(pp.161-162)
それに対して、

アン それは活版で文字を組んでいた頃からの伝統ですよね。私から見ると、それがおかしいんですね。こういった点画のシステムがいまだに残っているのが理解しがたい。
平野 僕もおかしいと思っていますよ。(笑)でも、それでないと読めないわけです。(p.162)
縦書き/横書きの問題にはhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071210/1197307578 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090327/1238171332 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090826/1251288655 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100705/1278302108で言及している。