ニート再考。ていうかニートって言葉使うのもうやめません?
また根拠の無いグラフ遊びをしやがって、と怒られそうですけど、今日は以下のことを主張したいと思います。
- 若年層無業者問題を考えるのに「ニート」という新たな区分は必要ないこと
- 若年層無業者問題の本質は20〜24歳の労働力人口の減少にあること
- 20〜24歳の労働力人口の減少は景気の動向と密接な関係があること
- 「ニート」という言葉で問題の本質からfocusをそらすことは、無意味であるだけでなく有害であること
例によって変なところがあれば容赦なく突っ込んでくださいまし。
ということで、まず最初にお断りを。先日、ニートなんて曖昧な言葉じゃなくて「若年層失業者」と呼べば良いじゃない、と書いたけど、彼ら/彼女らは求職活動をしてないので定義上失業者ではないんですね。だから名称としては「若年層無業者」になるそうです。失礼しました。
で、この若年層無業者なる言葉は実は厚生労働省が定義しているらしく(ニートは内閣府定義)、労働力調査における非労働力人口との定義の違いは以下のもののようです*1。
ニート(内閣府定義)=15〜34歳非労働力人口−学生−主婦 【参考】若年層無業者(厚労省定義)=15〜34歳非労働力人口−学生−既婚者−家事手伝い
この定義により明らかですが、「ニート」がある期間に増加した場合、その間に学生さんと新婚さんが著しく増加も減少もしていないとすれば、その「ニート」の増加は「15〜34歳非労働力人口」の増加と比例するわけです。
さてここで質問。どなたか、今問題になっている「ニート」が増加した期間に、学生さんや新婚さんが著しく増加もしくは減少している、というデータをお持ちでしょうか?(反語的表現)。
つまり、前にも書きましたが、「ニート」の絶対数でなく増減の推移を見るだけであれば、単に15〜34歳非労働力人口に注目すれば良いわけですよ。で、我々が主に問題にしているのは「ニート」の絶対数ではなくその増加傾向なわけです。要は「ニート」なんて言葉を新たに用意する必要なんかどこにもないんじゃないですかと。これがひとつめの論点。
次。じゃ非労働力人口が問題だってことで15〜34歳労働力人口の推移を見てみると、これがぱっと見た目、問題なんかなさそうに見える【図1】。
【図1:労働力人口推移(1970-2004)】
ところが、この15〜34歳非労働力人口の内訳を見ると、世界が一変する。どうすか【図2】。
【図2:15〜34歳の労働力人口推移(1970-2004)】
1992年以降の20〜24歳の労働力人口の減少はすさまじいものがある。
この図を見て言えることは、ニートだのひきこもりだの言うけれども、要は20〜24歳の大学新卒の人たちが就職を諦めてしまっている(=求職活動をしていない=非労働力となっている)ことが大きな問題なんじゃないの、ということ。問題の本質はここにあるんじゃないかと僕は思うわけですよ。これが2点目。
で次。労働力人口の増減は景気の動向に左右されることが知られている。ということで20〜24歳の労働力人口比と実質GDPの推移を見てみたのが下の図【図3】。
【図3:20〜24歳労働力人口比と実質GDPの推移(1984〜2004)】
はい。どう見ても20〜24歳の労働力人口の減少は景気と密接に関係してますね。これが3点目。
ということで結論。「ニート」なんて言葉を使ってさも新しい問題であるかのように喧伝されている現象は、実は単なる景気の悪化による20〜24歳の労働力人口の減少に過ぎないのではないか、ということが以上の事実から言えると僕は考える。
で、もし仮にこれが正しければ、「ニート」なんて言葉を使うこと、更にはその問題が個人の資質や家庭環境等の問題であるかのように主張することは、意味が無いだけでなく、問題の本質からfocusをそらしてしまう点で有害極まりないんじゃなかろうか。
ていうかですね。It's economy, stupid!ですよ。あんたら何馬鹿なことやってんだと。既存の良く知られた問題に新しい名前を付ける奴がいたら、まずそいつは自分のことしか考えてないと思って間違いないんじゃないですかね。いい加減にしてほしいです。
【ソース】
- 総務省統計局 労働力調査 http://www.stat.go.jp/data/roudou/
- 内閣府 経済社会総合研究所 GDP長期時系列 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe044-2/gdemenujb.html
【追記】
面倒なんでやってませんが、20〜24歳の労働力人口が1992年以降も25〜34歳のそれと同等に推移していた場合の失業率(特に若年層失業率)を誰か計算してくれないかなあ【他力本願のsvnseeds】。