「ハル」感想
「進撃の巨人」のWIT STUDIO制作による初劇場アニメ作品。近未来の京都、最愛の恋人ハルを失ったショックから立ち直れない女性くるみと、彼女の心を癒すべく派遣されたハルそっくりのロボット・ロボハル=キューイチの交流を描くSFラブストーリー。
ちなみに、1996年公開の故・森田芳光監督作品「ハル」とは何の関係もないのであしからず。
さておき。
単刀直入に言えば、全てにおいて「惜しい」作品。京都ならではの美しい景観や、そこに暮らす個性豊かな人々はなかなか魅力的なのだが、その良さをまったく昇華できず、持て余してしまった印象を受けた。
主人公カップルをはじめ、介護ホームの面々やハルの悪友等、使いこなせてさえいればもっと良質な人間ドラマを形成できたはずなのに、大半はただそこにいるだけか、あるいは賑やかし、はたまた本当に必要なのか不明な具合に。
また同じく、近未来らしいガジェットの数々もほとんど機能しておらず、正直これなら現代劇でも十分だったのではと首を傾げるばかり。カラータイマーみたいな巨大ボタンがカメラになっている必然性はとりあえず置いとくとして、映像記憶媒体がいるなら普通にスマホでも良かった気が。近未来ではないが物語のキーアイテムであるルービックキューブも、途中からさっぱりいらない子状態で、果たして本当に必要だったのか、もうちょっと上手いやり方あったんじゃないのかと、やはりクエスチョン。
ハルの過去に関しても、ものすごく不透明で蛇足的な部分が多く、それでいて肝心な点は語られないというお約束パターン。そのハルに成り代わるキューイチのポジションも、なぜ染物屋の下にいたのか、元々何をするロボットだったのか、やはり説明ナシ。ために、あらゆる面で中途半端でスッカスカに感じてしまう。素材は悪くないのに、もったいない。
「ああ、やっぱりそうですよねぇ」的なオチも相俟って、60分の短尺ながらグッと縮めれば30分弱に、それこそ「戦国コレクション」のようなオムニバス形式ならば一本分で消化できそうな濃度。予算の関係か、技術の問題かは存じ上げないが、もう少し推敲すれば、1時間半の尺でも十分鑑賞に耐えられる作品になったはず。
こう言っては悪いが、初の劇場アニメという実験的な意味合いと、人気声優をフィーチャーしたアイドル映画的側面がアリアリと感じ取れてしまう。繰り返すが、技術はものすごく高いものを持っているスタジオだと察するので、是非とも次回作は脚本と監督を変えて臨んでいただきたい(エー)。
☆☆☆★★−−
今回は尺に合わせて超簡単に、星3つマイナスマイナス!!
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