書評:『お金は銀行に預けるな−金融リテラシーの基本と実践』勝間和代/光文社新書

長らく私の金融リテラシーに関するベース本は木村剛『投資戦略の発想法』であったが、それと並んで私の金融ベースとして書棚にならべることができる1冊。

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

私たちは、自分のお金を労働で稼ぐ、自分で稼いだお金を消費する、というやり方にはとても慣れているのですが、自分のお金が自分以外のところでお金を稼いでくる、あるいは自分で稼いだお金を消費という形ではなく、投資をするという考え方には、今一つなじみ切れていません。(本文より)
自分のお金は自分でコントロールする−。年金不安、所得格差が進む中、私がちが身につけなければならない"能力"とは。
家計の将来に備え、「自分の安心を買い」「生活をよりよくする」ために必要な考え方とノウハウを、第一人者が分かりやすく解説。

金融リテラシーにとどまらず、本書では新書というわずか200数十ページの枠の中に、実際の投資ノウハウや投資スタンスについての解説までが含まれている。著者が定義する金融リテラシーの概要は以下の通りだが、これらの項目についての解説を読むということだけでも、本書は読む価値がある。

  • 金融の役割について、直感的に理解できる力
  • 金融の基本的な理論、特にリスクとリターンの関係を理解する力
  • 個別の金融商品について、情報を正しく入力する力
  • 入手した情報の中から、コストを見抜く力
  • 入手した情報の中から、リスクを見抜く力
  • 入手した情報の中から、期待リターンを計量する力
  • 上記を組み合わせて、自分に合った資産ポートフォリオを作る力

市場を予測することは出来ない、という前提に立ち、それであってもリスクを持つことの引き替えに確実に提供される、"リスクプレミアム"を活かし、長期的に得られることが期待される数%のリターンをいかに味方に付けるか。個人という限られた金融資産しか持たないプレーヤーがどのように金融市場に参加するべきなのか、本書によって学ぶことが出来る基本的なスタンスは今後、高度経済成長が期待できない日本で生活していくのであれば、必須の知識といえるかもしれない。

  • 第1章 金融リテラシーの必要性
  • 第2章 金融商品別の視点
  • 第3章 実践
    • ステップ? リスク資産への投資の意志を固める
    • ステップ? リスク資産に投資をする予算とゴールを決める
    • ステップ? 証券会社に口座を開く
    • ステップ? インデックス型の投資信託の積み立て投資を始める
    • ステップ? 数ヶ月から半年、「ながら勉強」で基礎を固める
    • ステップ? ボーナスが入ったら、アクティブ型の投資信託にチャレンジ
    • ステップ? リスクマネジメントを学ぶ
    • ステップ? リターンが安定したら、投資信託以外の商品にチャレンジ
    • ステップ? 応用的な勉強に少しずつチャレンジ
    • ステップ? 金融資産構成のリバランスの習慣をつける
  • 第4章 金融を通じた社会責任の遂行

この目次のどこかに「ふーん」という部分があるのであれば、とりあえず本屋の店頭でパラパラとページをめくってみてください。