「青の炎」を観た(ネタバレあり)

青の炎 特別版 [DVD]

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出演: 二宮和也, 松浦亜弥, 鈴木杏, 秋吉久美子, 中村梅雀
監督: 蜷川幸雄

湘南の高校に通う17歳の少年、秀一は母・友子と妹・遥香との三人で穏やかに暮らしていた。ところがある日、母が10年前に結婚してすぐに離婚した男・曾根が現われ、家に居座ってしまったことから、平和だった家庭は一変する。曾根は傍若無人に振る舞い、母ばかりか妹にまで暴行をはたらこうとするのだった。やがて、警察や法律では問題が解決できないと悟った秀一は、自らの手で曾根を殺害する決意を固める。そして、“完全犯罪”の計画を練り上げると、それを実行に移す。恋人の紀子にわずかな不審を持たれた以外、その犯行は完璧なはずだった…。

青の炎を観ました。これを観た理由は貴志祐介さんが書いた原作をついこの前読んだから。そしてこの小説を手に取った理由が映画版を先に知って興味が湧いたからという実に回りくどい経路をたどっております。
この映画を興味を持ったのは、僕たちの二宮和也、ニノが主演を務めていると知ったからです。
後この映画から実験的に映画を観ながらメモを取ってみます。家だとメモを取りながらでも一時停止や巻き戻しを使えばさしあたりなく映画を理解できるので良いです。しかし映画館だとどうでしょうね。
では以下映画の感想です。ネタバレ含んでおりますのでご注意を。


まず結論から言ってしまうと、退屈な映画でした。これ多分原作知らない人は主人公の心情が読み取りづらく展開についていけないと思いました。
原作を読んだことあれば原作から補完しつつ映画を観賞する事が出来ましたが。
そしてなぜこのような事が起きたからというと、この原作が倒叙推理小説というジャンルでそれがこの作品の面白さの根幹だからだと思います。
倒叙形式とは何かをwikipediaから引用。

倒叙形式では、初めに犯人を主軸に描写がなされ、読者は犯人と犯行過程がわかった上で物語が展開される。その上で、探偵役がどのようにして犯行を見抜くのか(犯人はどこから足が付くのか)、どのようにして犯人を追い詰めるのか(探偵と犯人のやり取り)が物語の主旨となる。また、先に犯人にスポットが当たることにより、一般的に尺が短くなりがちな動機の描写において、何故、犯行に至ったのかという点を強く描写することが可能である。

漫画でいうとデスノートが有名ですかね。
つまりこの小説の魅力は櫛森秀一が完全犯罪を企み、それを遂行させるためのKUFU、そして様々な葛藤が秀一の独白として描写されている訳です。
推理小説ではないですがラノベハルヒ森見登美彦作品なども主人公の独白がストーリーテリングの推進力となってます。

話を映画に戻すと、この原作を実写化するにあたって倒叙形式を完全に捨ててしまっているんです。つまり秀一側の心情が分かりづらい。原作では家族を守るため完全犯罪を目論む秀一の葛藤が、中島敦の「山月記」の引用などを使ってくどいほど描かれているんですが、映画ではその葛藤シーンが少なく印象的でもないのでひどく軽薄にみえてしまいます。
また倒叙形式を捨ててしまった為秀一が立てた完全犯罪を刑事が打ち破るという楽しみも半減してしまいます。原作では、刑事はもっと多くの証拠を打ち出して秀一を追い詰めます。しかし映画では曽根の銀歯の詰め物と拓也の部屋から出てきた曽根殺害に使った道具くらいですか。この証拠だけであっさりと折れてさせてしまうとは。

後は紀子の描き方も問題です。原作では紀子は秀一に気がありよく彼を観察してます。それが後々秀一の完全犯罪を阻止させてしまう可能性を生じさせます。また秀一自体も彼女に恋をして彼女の存在もあって衝撃的なラストシーンを迎える事になります。
しかし映画での紀子の描き方が中途半端で秀一との関係もせいぜい友達レベルとしか受け取れずラストシーンの選択に必然性が生じなくなります。
結局彼女がストーリーに及ぼした影響は、秀一のアリバイを覆すだけ。しかしその影響も「警察に言わないから…」と自ら否定してしまいます。これは原作にもあるんですがこれでは映画での紀子は本当に要らない子になっちゃいます。
ただ家族の関係性の描き方、とりわけ遥とのやりとりは良かったので思い切って紀子の要素は全カットでも良かったのではないでしょうか。

良かった点

  • ニノの存在感。荒削りかつ棒読みも多々見られたが脚本に秀一の魅力を削がれた上でそれでもまだ秀一が魅力的に見えるのもニノのおかげであろう。ニノ最高!
  • あやや可愛い。それだけ。
  • 秀一と紀子が水槽のガラス越しに手を合わせるシーンが綺麗。あれ紀子が出てった後のシーンだったがイメージショットなのかな。あそこの色彩表現が綺麗だった。割とありがちな演出だけど。

その他駄目な点。

  • 秀一が秀才なのか分からない。原作では秀才であることは色々な描写で明確であるが映画では分からない。茶髪なのも引っ掛かった。
  • 曽根殺害の際にアリバイ作りのため電車ではなくロードレーサーを使って移動するがそれの説明も無い。また原作ではスピードアップと変装を込めて全身ロードレーサー仕様の服装をするが映画では普通に制服。そりゃ石岡にも見つかるわ。
  • 紀子や遥に自分が殺害をした事を仄めかすのは違うと思うの。一人で悩みを抱え込んで家族や紀子に迷惑をかけないが為の最後の選択だったのに、それを告白しちゃったらやっぱり必然性が無くなると思う。
  • 秀一と石岡の密談するシーンなぜ博物館を選んだんだろう。ああいう所は監視カメラあるはずだし。普通に喫茶店とかでいいんじゃないだろうか。
  • 細かいが自転車は左側通行ですよ!ルールは守りましょう。海とロードバイクとの絵を取りたいのは分かるが。レースウェア持ってるほどのガチな人が逆送とは噴飯ものです。
  • テープレコーダーって出す必要あった?ラストであれ再生させたけど何?

とはまぁづらづら書きましたが脚本が雑すぎます。前評判高めの作品を選んで観てるせいかここまで退屈で残念な映画を観たのは今年初です。トロンレガシーよりひどかったですw

オープニングとエンディングの曲。
Pink Floyd - The post war dream


ニノファンして次はこの作品を観たいです

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