Rob Cohen監督『Stealth』(邦題:ステルス)

ステルス [Blu-ray]

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2005年の米国映画。
米国映画で「素数」という言葉が出ると、必ずと言っていいくらい「1とその数自身でしか割り切れない数」という説明が入る・・・ような気がする。前に観たのでも説明してたなあ、なんだったっけなあ。
それはともかく、世界中に蔓延するテロリズムの脅威。にもかかわらず、僕たちが日々安穏と暮らしていけるのは、「世界の警察」米軍様が影で頑張ってくれていたからなんだ。薄々感づいてはいたけど、やっぱりそうだったんだ!
もちろんこの映画の舞台は近未来2016年に設定されている。しかし、慧眼な観客なら誰でも気づくように、それはただの映画的虚構である。米軍は今日も、レーダーに映らないステルス爆撃機を駆って世界中を飛び回っているはずだ。24分後にラングーンのビルの地下室でテロリストの会合が開かれるとなれば、もちろん飛んで行って急降下爆撃だ。400名の志願者の中から選ばれた3人のBest and Brightestだから、狙いは決して外さない。ビルは解体爆破されたかのように真下に崩れ落ち、周囲への被害はゼロである。
そんな彼らだが、人工知能の暴走のために、タジキスタンの核テロリストのアジトを爆破してしまい、周辺諸国放射能粉塵が撒き散らされてしまうことだって、もちろん、ないとは言わない。だがヒューマニズムこそが彼らの持ち前。該当地域への医療ケアの要請も忘れない。
他方で彼らは米軍でもある。『Behind Enemy Lines』でも描かれたように、たとえ国交のない北朝鮮の国内であろうと、味方が墜落すればちゃんと助けにいく。かりにその結果、最新兵器による外国軍の無断の領空侵犯に対して正当な防衛出動に出てきただけの北朝鮮軍を皆殺しにしてしまうことになったとしても、だ。
そんな命を懸けた多忙な日々のなか、唐突に訪れる束の間の休息。タイの大自然の中で、女パイロットは窮屈な飛行服を脱ぎ捨て、山の中なのにビキニで大はしゃぎだ。彼女に秘めた恋心を抱く男パイロットは、その姿をひたすら撮影する。明日をも知れぬ毎日の中、胸の熱くなるロマンスシーンである。その頃、黒人男パイロットは、タイ娘と一夜のラヴアフェアを楽しんでいる。言葉が通じないということで、アジア女は米軍なら誰でもいいかのような描き方に違和感を感じるアジアの観客は多いだろう。しかしそれは短慮というものである。彼女は、命を懸けて自分たちを守ってくれる「世界の警察」に、彼女なりの恩返しをしたのに違いないのだから。ちなみに上述の「ビキニ」のくだりは、その直後の出動で放射能を撒き散らすことになる彼らの皮肉な運命を暗示した見事な暗喩になっている。監督の力量が窺える素晴らしいショットだ。
なお、世界の「警察」が「stealth」とはこれいかに、といった疑問に対しては(以下略