〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈われは知る、テロリストの かなしき心を――〉 石川啄木


[シロタエギク]


小社会 高知新聞

  • 〈われは知る、テロリストの かなしき心を――〉。石川啄木の「ココアのひと匙(さじ)」は、こんな書き出しで始まる。テロリストの心情に思いを寄せた詩は、1911(明治44)年に発表された。
  • かなしき心とは〈言葉とおこなひとを分ちがたき ただひとつの心〉であり〈奪はれたる言葉のかはりに おこなひをもて語らむとする心〉。啄木を突き動かしたのは明治天皇の暗殺を企てたとされる「大逆事件」(10年)か。それとも伊藤博文の暗殺(09年)だったのか。
  • テロを生む土壌について考えるのは大切だ。それでも暴力という「おこなひ」は肯定できない。啄木の詩とは逆に、表現や報道の「言葉」を奪おうとするテロも同じである。
  • パリの週刊紙本社が武装した男3人に襲撃され、編集者や画家ら多数の死傷者が出た。
  • 果てしない議論の後に、冷めたココアのひと匙をすする。そのうすにがい舌触りにかなしき心を知ったと、啄木は詩を結ぶ。

(2015-01-09 高知新聞

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