杉並洋舞連盟第24回「創作舞踊&バレエ」

標記公演評をアップする。

杉並洋舞連盟の「創作舞踊&バレエ」が24回目を迎えた(共催・杉並区教育委員会、杉並区文化団体連合会)。コンテンポラリーダンス、モダンダンス、古典バレエによるトリプル・ビル。全て合同作品である。


幕開けは、自身優れたダンサーでもある鈴木竜振付の『LUDUS』。ラテン語で「遊戯」や「訓練」の意。バレエ出身の15人の少女達がコンテンポラリーの語彙で踊る。照明、音楽構成(シューベルトショパン、J・ホプキンズ)は洗練されている。特に一旦幕を下げた後、全員がレオタード・シルエットでバレエのポジションを繰り返しながら奥に向かう終幕は印象的。ダンサーたちはそれぞれの個性を生かした衣裳(武田久美子)に身を包み、振付を自分の感覚で吸収している。バレエダンサーにとって教育的であると同時に、作品としても面白い、クリエイティヴな空間だった。


続いては、モダンダンスの大ベテラン河野潤振付の『帰ってきたピーターパン』。大小の子ども達が、制服少女、野球やサッカー少女、アイドル風少女となって、『あまちゃん』の音楽やヒップホップの曲に合わせて、元気一杯に踊る。合間にピーターパンとティンカーベルのデュオや、フック船長のマイム、タコの着ぐるみダンスが舞台を彩る。見る方も楽しいが、踊る方の楽しさがそれ以上に伝わる、エネルギー満タンの舞台だった。


最後は、登坂太頼演出・再振付による『ドン・キホーテバルセロナの賑わい〜』。二幕仕立てで、ドン・キホーテがキューピッドに矢を射られるプロローグが付く。一幕はナイフ狂言までをまとめ、二幕の結婚式ではドン・キホーテが神父の役目。エスパーダとメルセデスボレロに続き、ドルシネアと森の女王のソロが加わったグランパで幕となる。街の踊り子達がトレアドールの振りを担当。以前男性がキューピッドを踊るのを見たが(つまりトラヴェスティを解消)、それとは逆に、プティパ時代のように男装の女性トレアドールを、どうせなら見てみたかった。


キトリはWキャストで二日目は佐藤桂子。技術があり、踊り方も演技も十分に心得ているが、やや模範演技のような感じ。もう少し胸襟を開いたら、祝祭感が増したかもしれない。対するバジルは元Kバレエダンサーの橋本直樹。美しくコントロールされた踊り、品のある演技、舞台マナーが素晴らしい。はまり役だった。エスパーダの登坂、メルセデスの出口佳奈子も同じ。執行伸宜のノーブルなドン・キホーテ、営野翔一の技巧派サンチョ・パンサ、保坂アントン慶の苦み走ったロレンツォ、染谷野委のおとぼけガマーシュが、一貫した演技でドラマの立ち上げに貢献した。(3月30日 セシオン杉並) *『音楽舞踊新聞』No.2925(H26.5.1号)初出