『アトミック・ボックス』
- タイトル:アトミック・ボックス
- 原題:Atomic Box
- ジャンル:小説
- 著者:池澤夏樹
- 製作年:2014
- 製作国:日本
- 劇中年:2013
- 要素:親子、核兵器、日本、警察、女、アメリカ、北朝鮮、マンハント
- 評価:★★★★☆
- あらすじ:若き社会学者美汐は、父親から死の直前に一枚のCD-ROMを託される。困惑する彼女のまえに現れる公安警察たち。瀬戸内海の小島に暮らす平凡な漁師だったはずの父が、かつて核兵器開発に関わっていた――。父の過去を清算するため、彼女は東京へと向かう。
- 寸評:池澤夏樹といえば純文学畑のイメージが強いが、ル・カレと北欧ミステリを愛読するというだけあって、スパイフィクション的ケレンも、どんでん返しの衝撃もお手の物。そのうえ、テーマが「日本による核兵器開発」である。これが面白くないわけないじゃないか!/美汐が、島生まれの感覚や社会学者としての人脈を使って軽やかに警察を出し抜いていく逃走劇はどこか牧歌的で愉快だ。大風呂敷を丁寧に畳みつつ、深刻ぶった告発や問題提起に堕さず、最終的に個人の幸福へと着地していくところも実にスマートでやさしい。同じ年・同じテーマの『残響のテロル』とあわせて楽しむことで、両者の違いに思いを馳せるというのもおすすめ。
- これもおすすめ:『残響のテロル』『カデナ』『われらが背きし者』