五色の雲

五色の雲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

五色の雲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 著者ロバート・ファン・ヒューリックについては、2月2日のこのブログで紹介した。この本が5冊目である。
 主人公の狄仁傑(Di Ren Jie)は平来・漢源・蒲陽・蘭坊などの県知事を歴任し、さまざまな難事件を解決する。「狄判事」とも呼ばれている。唐時代の中国では、知事が判事も兼ねていて、いわばその地方の司法・立法・行政の三権を握っていた。
 本書は題名を含め、8編の短編集である。
 時々、中国古典に出てくる文字があるので意味がわからない。そこで中国語辞典で調べてみた。思いつくまま記す。
 ○河伯(he bo):黄河の神。転じて水の神。水伯とも書く。
 ○洛女(luo nu):水神(女神)。伏儀氏の娘が洛水に溺死してその神になったという。
 原著は英語で書かれているが、当然中国語にも翻訳されている。一冊だけ見つけて購入した。「大唐狄公案」二である。全部で4部になっている。この本での著者の紹介によると、彼は15ヶ国語に通暁し、主にアジア地域で外交官として働いている。外交官としての仕事だけでなく、中国学の研究、作家としても活躍した。また、中国古代の琴棋書画にも力を入れている。20歳から書を練習し、古琴も研究したばかりでなく、中国語で旧体詩も創作している。中国の著名な作家である郭沫若や画家の徐悲鵬とも詩の唱和をしているのだから、本格的である。政治家の馮玉祥や張之洞らとも交流があった。

 
 
 上の写真は宮内フサ(1985年102歳で死去)作品 巳年の振り槌 94歳


俚謡 (湯朝竹山人 辰文館 大正2年刊 1913年)から
  ○紅葉踏む鹿 憎いといへど 恋の文書く 筆となる
  ○いとし可愛子に 旅させ親よ 憂いも辛いも 旅で知る
  ○夢になりとも 逢はせてたもれ 夢に浮名は 立ちやせまい