理由にならない理由で「矢野穂積」に関するウィキペディアの項目の全削除を求める「市議会議員」?


2ちゃんねるで知りましたが、そしてXENONさんも触れていますが、Wikipedia「矢野穂積」について、「草の根共同事務所」名で即時削除が求められていたみたいですね?


2009年6月25日 (木) 06:33の版*1


けっきょく、即時削除の方針には合致しないということで通常の削除依頼に回すように指摘され、即時削除テンプレートも取り除かれたみたいですけれども。


2009年6月25日 (木) 06:43の版


2009年6月25日 (木) 06:33の版にはつらつらと削除要求の根拠が書かれていますが、けっきょく何ら説得力ある理由を示すことなく、次のように恫喝めいた要求をしているだけです(06:40の版のスクリーンショット画像)。


「頁全部の記述について指摘すると再現〔ママ〕がありませんが、これら全てを裏付ける証拠がありますので、本ページは、一方的に矢野穂積議員を誹謗中傷し、名誉を毀損するものですので、個々の記述の訂正では足りませんので、全頁につき、ただちに削除の処置が必要です。(草の根共同事務所)」


しかし、たとえば「来歴」の項などは、基本的には事実を淡々と記載しているだけなんですけれども。

来歴
1995年4月23日、東村山市議会議員選挙で次点で落選。その3日後、同選挙4位で当選した朝木直子(「草の根市民グループ」所属)は、矢野を当選させるため松戸市へ転出。被選挙権を失ったとして市選挙管理委員会に当選辞退を申し入れ、替わりに矢野が繰上げ当選を果たした。しかし、市民らによって当選無効を求める裁判を起こされ、1997年8月、最高裁で矢野の次点当選は無効であるとの判決が下された[1]。なお、この判決の後、朝木は自らが市議会議員であると主張して東村山市を相手取り提訴した。訴えは却下されたが、市は訴訟費用として52万5千円を支出した[2]。


1995年には「草の根市民グループ」所属の朝木明代の万引き被疑事件と転落死事件が発生し、矢野は創価学会による陰謀説を展開した。


1999年4月、東村山市議会議員選挙で24位で当選。2003年4月、東村山市議会議員選挙で26位で当選。


まさか市議会選挙時の当選順位に関する情報が「矢野穂積議員を誹謗中傷し、名誉を毀損するもの」などとは、いくら矢野「市議」でも言えないでしょう。冒頭で触れられている議席譲渡事件にしても、そりゃ矢野・朝木両「市議」にとっては隠蔽したい黒歴史かもしれませんが、事実だからしかたがありません。


上記要求の前に書き連ねてある根拠にしても、はちゃめちゃです。その内容や文体からして、そしてその支離滅裂さからして、矢野・朝木両「市議」のいずれかが書いたものに間違いないと思われますが、そうだとすれば、公職者がこのような屁理屈でWikipediaの項目の全削除を求めたというのは、前代未聞(あるいはきわめて珍しい例)ではないでしょうか。


いちおう内容を簡単に見ておきましょう。最初に「FORUM21」事件のことが書いてあります。

創価本部が、朝木明代議員殺害件に関して「朝木明代は創価に殺された」と題する週刊現代記事を名誉毀損罪で刑事告訴した事件で、朝木明代議員遺族らが不起訴となった理由として、不起訴処分を決定した検察官が「創価側(信者)が事件に関与した疑いは否定できない」と発言した経過を「フォーラム21」掲載対談記事で紹介した矢野穂積議員らを提訴した裁判は、08年6月18日最高裁判決で、創価本部が敗訴し、矢野議員らの敗訴が確定しているほか、


創価学会と矢野「市議」らが両方敗訴したことになっていますが、これは、「東村山市民新聞」で「殺害事件でなく自殺だと指摘した同僚議員の私〔矢野〕」と書いちゃったとき(市議会でも同様の発言をしている)と同じ、単なるミスでしょう。


しかし、これがWikipedia「矢野穂積」の記述内容とどのように関連しているのかは、さっぱりわかりません。


次に「月刊タイムス」事件(何度も言っているのですが「タイムズ」ではありません)の話が持ち出されています。

05年5月13日に確定した「月刊タイムズ事件最高裁判決」は、創価系ライター被告宇留島瑞郎が「朝木明代議員は万引き苦に自殺した」と記述したことについて、警察捜査結果によっても「朝木明代議員は自殺したとはいえず、他に証拠はない」と明確に判示し、被告宇留島瑞郎が記述した「朝木明代議員が万引き苦に自殺した」ということは真実ではない、ことが確定しました。しかも、別訴事件で東京地裁八王子支部黒津裁判長は、訴訟当事者(被告)として被告宇留島瑞郎がこのことを知った以上、「この最高裁判決が確定した2005年5月13日以降は、宇留島瑞郎は「朝木明代議員が万引き苦に自殺した」とは記述できない」と08年3月7日直接、宇留島に警告しています。


しかし「月刊タイムス」事件判決は、朝木明代市議が「万引き苦に自殺した」可能性を否定したものではなく、単に断定するだけの証拠はないと認定したに過ぎません。また、裁判長の「警告」内容も、「宇留島瑞郎は『朝木明代議員が万引き苦に自殺した』と断定的に記述することはできない」という趣旨であったに過ぎないことは、矢野・朝木両「市議」自身が認めています。このあたりの話については以下の記事を参照。


そしてこれも、Wikipedia「矢野穂積」の記述内容とどのように関連しているのか、さっぱりわかりません。Wikipediaでは、朝木明代市議の件についても「万引き被疑事件と転落死事件」と中立的に表記されており、いったい何が言いたくてこれらの裁判を持ち出しているのか。これらの裁判について、虚実交えた宣伝をなりふり構わず行なわなければならない事情でも生じているのでしょうか。


その次の一文は、いちおうWikipediaの項目の記述内容に関連しています。

また、http://www.higashimurayamasiminsinbun.com/page154.htmlにあるように、矢野穂積議員らは監査請求や住民訴訟で市職員が不正・違法支出した公金等を7600万円も市に取り戻していますが、本頁では「東村山市が応訴に要した費用は2,400万円」などと一方的な記述がなされているほか、


東村山市が応訴に要した費用は2,400万円」という記述が『多摩東京日報』第1109号(2008年3月15日・25日付)に基づいていることはちゃんと注記してあり(「多摩」が「多磨」になってますが)、「一方的な記述」と決めつけるには当たらないでしょう。


矢野穂積議員らは監査請求や住民訴訟で市職員が不正・違法支出した公金等を7600万円も市に取り戻しています」という主張も併記せよという要求なら理解できますが(この主張については凪論〈地方公共団体を考える2 〜住民監査請求の考察 「東村山市民新聞」のインチキ極まる記述を中心に〜〉など参照)、項目の全削除を求める理由にはなりません。こんな書き込みをしている暇があったら、これら70件の裁判についてきちんと説明をしていただきたいものです。


これに続く文章はいよいよ支離滅裂で、何が言いたいのかさっぱりわかりません。

「見ず知らずの高校生らを相手取り訴訟を起こしている。」などとこれも一方的な記述をしていますが、朝木明代議員事件の発生当時の捜査の指揮をした千葉英司元副署長がこの事件に関する、矢野穂積議員が発行人である東村山市民新聞HPの記事を提訴しましたが、矢野議員らが勝訴し、東京高裁ですでに確定しています(08年8月28日東京高裁確定判決)。


見ず知らずの高校生らを相手取り訴訟を起こしている。」というのは少年冤罪事件のことですが(エアフォース〈少年冤罪事件〉も参照)、確かに「高校生ら」という表現は不正確だと思われます(少年が最初に濡れ衣をかけられたのは17歳のときだったが、有職少年であって高校には行っていなかった可能性があり、また矢野から民事裁判を起こされたときにはすでに21歳になっていた)。


しかし、無関係の少年を一方的に暴行事件の犯人と決めつけ、東京地裁から、「仮にも公職にある者がこの曖昧な記憶に基づき、しかも司法警察職員による捜査がなされながら刑事訴追の手続きが執られていない被告を名指しで犯人であると断定している点において極めて特異であると言わねばならない」などと指摘されたのは事実です。


そして、この点に関わる記述について「一方的」と決めつけた後で、なぜ、ほぼ無関係な事件(インターネット「東村山市民新聞」裁判)の話を持ち出しているのか。


これは千葉英司さんが東村山市民新聞〈創価・公明特集〉の記述について起こした名誉毀損訴訟で、第1審では千葉さんに対する名誉毀損が認定されましたが、控訴審では、記事からは
「原告(千葉氏)が万引き冤罪事件に関与した」
「原告が創価学会に肩入れして不正な捜査をした」
「被告矢野に対する暴行事件について、原告が創価学会に肩入れして捜査をしなかった」

などとは読み取れないとして、名誉毀損の成立を認めなかったものです(要は「FORUM21」事件の場合と同じ、ちんけな勝ちパターン)。


創価・公明特集〉の下の方には確かに「矢野議員を襲った人物の親も創価信者で、自分も信者に登録されていた!」という見出しの記述がありますが、控訴審では、少年冤罪事件そのものについて実質的な審理が行なわれたわけではありません。したがって、「『見ず知らずの高校生らを相手取り訴訟を起こしている。』などとこれも一方的な記述をしていますが、」と書いた後にこの件を持ち出すのは、まったく失当と言うことができるでしょう。


いったい何がしたかったのかなあ。まあ、矢野・朝木両「市議」の体質を示すサンプルとしては、貴重な事例だったと言えるかもしれません。


なお、「東村山市民新聞」の6月27日付更新については、わざわざ新しい記事を立てるほどのこともありませんでしたので、昨日の記事に追記しておきました。


【追記】
以下の記述はネタとして記事の冒頭に置いておいたものですが、その後、真摯な陳謝・訂正が行なわれましたので、その潔さを評価すべきと考え、目立たないよう文末に持ってきました。

いやー、川崎のレストランのメニューに「パトラッシュ特製ミートローフ」と書いてあるのを見て、


パトラッシュ → 「フランダースの犬」に出てくる犬 → 在日朝鮮・韓国人が「犬食」をしている証拠


という発想(たぶん)をする人がいるとは思いませんでした。



有門サン(瀬戸サンの弟子)って面白いなあ。朝から大爆笑して、危うくルーベンスの絵の前で昇天してしまうところでした。該当する記述はさっそく削除されてましたので、これ以上は言いませんけれども(たぶん)。

*1:追記(6月28日):06:33というのは協定世界時(UTC)ですから、日本時間では午後3時33分。その後、「東村山市民新聞」トップページで6月26日付の更新が行なわれた(6月25日午後4時26分ごろ)というわけですね。