迷 宮 旅 行 記

長距離のバス待つ君の人生はさておき旅はまだ先がある

サハリン〈第8日〉

ユジノサハリンスク、廃船ツアー】


起きるとやっぱり雨だったが、昨日ほどじゃない。


昼くらいから廃船探索ツアーに出かけた。


2日前、コルサコフまで往復した路線バスの車窓から、あたりの辺鄙な集落を眺めていると、その向こうの寂しげな灰色の海岸が心を誘い、おまけにチラチラ見えるあれは「廃船じゃないか!」と気づいた。胸が騒いだ。それをちゃんと見るためにもう一回来ようと決心していたのだ。


道路の標識で土地の名をメモしておいたので、それを頼りにバス停を降り、海に向って歩いていく。

小径を通り草むらを抜けると、誰もいない静かな海岸。おまけにすぐ際に線路が敷かれている。


ビクトル・エリセの『みつばちのささやき』みたいだった。


廃船はそこにあった。

少し離れてもう1隻。


海岸に沿って歩きながら写真をたくさん撮った(◎は拡大)













期待をはるかに超えて心ひかれる風景だった。私はきっとこんな場所を訪れたいとずっと願っていたのだ。



さらにバスで少し移動した所で、もう1つ廃船を見つけた。


足を踏み入れた場所は軍かなにかの施設だったようで、係の若い男に追い払われながら写真を撮った。


最初の2隻も遠くに見えた。


まったく計画になかったこと。ガイド本にもなにも載っていないこと。それを旅行中に自分で思い立ち挑んでみる。こういうのが旅の醍醐味だったのだと、これまで何度も旅行しているくせに、初めて気がついた。



ユジノサハリンスク駅に戻ったのは5時半ごろ。


ビジネスセンターという所でインターネットができると聞き、それらしき4つの建物に入ってみたが、いずれも違った。

そのあと、町の北側にある露天市場やショッピング街に行ってみた。ほとんどの店は18時くらいで閉まるようだ。

食べ物を買って帰りホテルの部屋で食べた。豚肉のチーズソテーみたいなもので、トマトとキノコも入っていて、冷めていたがとてもうまかった。


21時。外はまだいくらか明るいので、散歩に出た。町の中心にあるアパート群のあたりへ。建物の1階にはマガジン(ロシアのなんでも屋)がよくあり、22時ごろでもまだ開いているところもあった。日本のコンビニほどではないが、ちょっとした買い物などけっこう便利なのではないか。


毎日歩き回っているので、体はけっこうくたびれている。手足の筋肉も微妙に痛む。しかしホテルの部屋ではなかなかクールダウンできず、テレビをずっと眺める。言葉がわからないと映像をむしろよく見るのがおもしろい。画面のサイズ、カメラの動き、カットのつなぎ。ロシアのドラマは動きがきっちりしているように思う。オリンピックのニュースは主にロシア選手の活躍を伝えている。柔道で金。ということは日本の選手は負けたのか。



(ロシアのテレビが北海道のラーメン店をリポートしていた)


そうしてようやくベッドに入り、『舞踏会へ向かう三人の農夫』を読もうすると、こんどはもう、すぐに眠ってしまうのだった。


*廃船は3日目にも見ている → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat+travelog/20120726/p1
*この日の記録はこちらにも → http://d.hatena.ne.jp/tokyocat/20120816/p1














【take it easy】