村上・笹川流れでのキャンプから山形・鶴岡へ

沈みゆく夕陽を見ながら

 そうそう申し上げるのを忘れていましたが、今回の旅では一度だけ速度取締りに遭遇しました。福島は白河の町を出て国道4号線に出ようかという大きなカーブのところで一台のパトカーが網を張っていました。朝も7:30頃で、路面が濡れている上にそれほど飛ばす気も無かったので全く問題もなかったのですけれど。朝早くから御苦労なことです┐(´〜`;)┌。
 さて時間的にもそろそろ宿営地は村上だなぁと漠然と考えながら走って来ていて、この間の旅サラダで角野なんとやら(ハリセンボンヂャナイヨ)がここを旅していたなぁと偶然なのか何かの因縁を感じました。丁度良いところに複合ショッピングセンターのジャスコがあったのでここで食材を仕入れることにします。本当は地元密着のスーパーなんかで買った方が地の物が揃ったりして良いのですが、改めて探すのもなんですし。でも、意外と全国展開しているスーパーとは言え、やはりPB商品以外には地の食材も豊富に揃っていて(そりゃ、地元の人を相手にしているんだから当たり前なんですが)、興味深く醤油や味噌といった地域柄の出る調味料を調査しながら食材を調達しました。
 村上の街中を抜けると海岸沿いを走る国道345号線は『笹川流れ』と呼ばれるそうで、海岸には幾つもの海水浴場があり特に宿営地の当てがなかったのですがいたる所にテントを張りBBQを楽しんでいる家族連れやグループが居て、これはなかなかキャンプ・パラダイス♪な感じです。もちろんキャンプ場として幾らかの設備を備えている有料の場所もありますが、それ以外にもいくらでも場所に事欠くことはないでしょう。ワタクシのキャンプスタイルですと水場があれば良しとしますが、無くても水を汲む場所さえあれば汲んで行けばそれで良いのですから、後は安全な場所さえ確保できれば良いのです。あと、もし望めるのなら流木がそこそこあれば焚き火の燃料に困ることはありませんし、無くても基本的に焚き木を当てにせず木炭を携行して来ているので問題はありません。焚き火は秋から春にかけては暖房と明かりのため、夏場はもっぱら明かりと趣味ですネ。焚き火の無いキャンプはどうにも味気ないものです。
 幾つもの候補地をチェックしつつ、道の駅の『笹川流れ』で給水。少し戻ったところに手頃かつ結構広い場所を見つけておいたのでそこに陣取ることにしました。向こう側にはテント村ができていましたが、そこはキャンプ場として営業されていて水場もあるところ。でもテントがくっ付き過ぎていて嫌ですね。こちらはデイキャンプを楽しむ若者や幾つかまばらにテントが張られているだけ。でも結果的にここが大当たりでした。せっかく水もふんだんに汲んできたというのに、すぐ近くに水飲み場があり水には事欠くことがなかったのです。早速テントを張り焚き木を拾い集めることにしました。夏なので日が延びましたね。早めにテントを張り準備を終えたとはいえまだまだ明るいです。
 ジャスコにテナントとして入っていたお酒屋さんにて購入した〆張鶴のワンカップと四合瓶の〆張鶴・月。本醸造ですが、精米歩合はこうじ米55%+掛け米60%という立派なもの。『本醸造吟醸酒(正式には『特別本醸造酒』)』というやつですね。これがなんと一本¥876(ワンカップは¥217)!ついでに申し上げておくと、最近は転倒した時に勿体ないからとバイクの時は買いませんが、一升瓶でも¥1,700台でした(一人2本までの限定販売)。もしこれが違う時ならと涙を呑んで四合瓶にしましたが、やはり地元村上の酒なんですね。テント設営の疲れを缶ビールで癒した後は、日本酒に切り替えましょう。以前は純米にこだわっていましたが、最近ではこうしたお得な四合瓶を見つけ出すのが秘かな喜びです。また実際今回の旅ではこうした低価格(本来の適正価格)の美味しいお酒に出会うことが多かったように思えます。下手すると気取った東京の高級居酒屋・料理屋では一杯(一合ではないにしても)¥7・800を平気で請求するところもあったぐらいですから、複雑な気持ちです。
 日本酒に切り替えるならと、買って来た『のどぐろ』(小さいながらも一尾¥280!)を捌いて身は刺身に、骨と頭は鍋で出汁をとることにしました。だしマニアの面目躍如です。あいにくワサビを持って来忘れ、もらうのも忘れて(ナニヤッテンダカ・・・)いたのですけれど、醤油だけでも十分楽しめました。鍋の方は醤油を少しと塩と酒(これは調味料用の)で潮汁風にしたつもりですが、出来は今ひとつ・・・OTL。
 気を取り直して今度はホタテを殻付きで二つ買って来ましたので、酒と醤油で焼きます。一口で食べるには大きいサイズですから予め二つ割りにして置きました。実家の北海道ではこうしてワタもヒモも食べていましたが、関東では貝柱とヒモぐらいしか食べないようですね。これは青森産のホタテでしたが、これも鮮度は良く全く問題なくワタも食べられました。五月の時のBBQでは醤油がドボドボって入ってしょっぱくなりましたが、今回は気をつけて丁度良い塩梅になりました。ホタテ特有の甘味が出て美味いものです。これで¥78/ヶなんですから、文句ないです。
 何という茄子だったか忘れましたが小型のまん丸なナス。これはヘタを取って焼いているところですが、4ヶ入りの袋で一ヶは手に塩を取りナスを摑んで30秒ほど塩揉みしましたら立派な浅漬けが出来ました。果肉はミッチリ詰まっていて一瞬固いのですが塩が馴染むにつれて、良い具合にしな垂れて来てとても塩だけとは思えない旨みでした。不思議とアクは感じませんでした。
 もう一つはこれも地の食材、栃尾揚げです。関東でよく目にするサイズの厚さにして3倍、面積にして2.5倍ほどでしょうか、中も詰まっていてこれを炭火で焼いてから一口大に切って頂くともうこれでお腹は膨れてしまいました。お酒もいつしかなくなってしまい、夢の中へ・・・。
 翌朝は暑くもなく寒くもない過ごしやすい気温の中目が覚めました。東京とは違いエアコンなしに快適に眠れる、キャンプの朝は最高ですネ。
 海では漁船が出て何か獲っているようですが、何が揚がっているかまでは判りません。写真では見にくいですが、中央部分に虹が左方向に向かって立ち上っています。消えていた焚き火を再び熾して、別にMSRのドラゴンフライでお湯を沸かし、朝の紅茶を淹れることにします。今日の行程を考えながら地図を見て紅茶を飲む、この時間が好きなんですねぇ。
 実は目的地の秋田市までは残すところ200kmほど。偶然、新発田バイク屋さんで情報を仕入れたところ秋田まではすぐだよ、とのことで実際日帰りのツーリングに出るとか。しかし今回の目的ではこの日(日曜日)の内に到着しては困るので、もう少しのんびりしたルート設定が必要なのです。しかもこの日は午後から雨で、天気は下り坂と言われているし、山形はもう少し巡ってみたい(2006年に月山でキャンプをしたことぐらいですから)ので、海岸から山の方へ向かってみることにしました。

 とりあえず『笹川流れ』を堪能しつつ、海岸線をひた走ります。それにしてもキレイな海で、曇り空ながら海の底が透けて見えるのは水質がとても良いのでしょう。そのため、道の途中では藻塩を作って販売している工場・直販所がありこの海水ならさもありなんと感じます。
 道の駅『あつみ』というところ。少し休憩していきましょう。こちらはもう既に山形に入ったところです。山形も南北に広いですがこちらは県の中西部に当たりますね。過去のルートから言うと全く通ったことがない部分で満足。海産物も販売されていますが、新潟との県境だからなのか、新潟の粟島(椎名誠の古くからのファンならお馴染みの島です)のトビウオの干物や鯵の干物が売られている反面、温海(あつみ)の特産である赤カブ漬けも売られています。岐阜の高山の特産だったはずだったのだが、と訝しく思いつつも一口試食。ほぼ同じ味付けでした。かなり離れた地域なのですが、これは面白い発見でした。
 そこから少し先の山の中に温海温泉という温泉街がありました。過去の経験から例えていうなら、島根の玉造温泉の温泉街にチョッと似ていますかね。朝市の表示もされていてこれは楽しみだと探してみましたが良く判らず足湯に浸かることにしました。表層は予想外に熱いお湯でビックリしました。
泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 源泉温度68℃
結果的にはこの時刻(9:15)には既に朝市は終了していたのですが、やや落胆しつつ携帯で天気予報を見ると昼からの降水確率80%なりΣ( ̄ロ ̄lll) ガビーン。足湯に浸かりながら今後の行き先を探していると、鶴岡の市内に入る手前に『湯量豊富』と注意を喚起する赤文字で書かれた温泉が目に留まりました。
 湯田川温泉という山形県では最古級の温泉だそうで、こちらは『正面湯』という共同浴場です。なかなか風格のある建物で、中に入ろうと入口に書かれている注意書きを見ると午前8時から10時までは清掃作業につき入浴できません(日曜日。他の曜日は違うみたいなのでHPにてご確認下さい)て書いてあります。時刻はまだ9:40過ぎ、呆然と立ち尽くしていると、湯上りのオバチャンが女湯の方からヒョッコリ出て来ました。あれこの方が掃除でもなさるのか?と思いつつまだ入れないんですよね、と話しかけるといやもう入れるヨ、入るんならと教えてくれました。 見た目は古めかしい建物ながら、実はオートロック式の鍵で簡単には入れないようになっていて、『ご利用の際は、商店(船見商店・大井商店)で入湯券をお求めいただき、ドアを開けてもらってください』となっているのです。それではとそのオバチャンが手にしていたのは個人で購入しているご近所さんならではの特別会員権とでもいうべき電子ロックのキーで、入るのならそこの隙間に、と壁に開けられた穴に200円お金を入れるとそのキーを入口のセンサーにかざす(触れさせて認証していた)と、鍵が開いたのでした。何という見た目とのギャップなのでしょう!
 浴槽は思いのほかそれほど大きくはないのですがコの字型に囲むように洗い場があり滔々と流れ出てくるお湯は確かに豊富な湯量です。
泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 加水・加温なしだそうです

 身体を洗って浴槽に身を沈めると丁度良い湯加減です。癖の無いお湯で大変清々しい気持ちの良さです。やはり掛け流しで溢れていくお湯というのはもったいない反面、きれいだという印象が強いですから、清潔感が違いますね。ご近所さんが多いのか、入って来た人達がお互いに挨拶しています。こんなに安く気持ちの良い風呂には入れるならご近所さんは自宅に風呂があってもやはり毎日のように入りに来るのでしょうね。
 サッパリしたところで、鶴岡市内へ。特に当てもないのですけれども急ぐ旅であるまいしと何となく鶴岡の駅に来ましたがそれほど大きくもなく鄙びている訳でもないし、要するに取り立てて面白い駅でもなく、少し早いですが途中見掛けた蕎麦屋さんで昼食をとることにしました。
 菅沼という蕎麦屋さん。バイクを止めてヘルメットを脱いで『準備中』の札を見ると時刻はそれでも11:20過ぎ。もうそろそろ開けるのだろうと高をくくって、入口に向かおうとしたら、中から店員さんが出て来て営業中の向きに変えてワタクシにどうぞいらっしゃいませと。こりゃあ丁度良い、とほくそ笑んで店内に入るともう既に何組かのお客さんが。一体どういうこと?疑問符で頭が一杯になりながら、着席。いつものもり蕎麦をメニューに探しますが見当たらず、ざる蕎麦(むぎ)との表記があります。蕎麦が食べたくて入ったのに、うどんでも食べさせられるのかといささか焦りながら、注文を取りに来た若い女の子に尋ねると、むぎというのはこの地域ではお馴染みの『麦きり』といううどんでもなくひやむぎでもない麺のことだそうで、それにでも出来ますよとのことで当然ながらワタクシは蕎麦にしました。
 ざる蕎麦大盛り¥850。ワタクシ普段はもり蕎麦のほうが好みなんですが(海苔がくっ付いて邪魔くさい)、海苔を入らないからと言ってその分安くなるのかどうか判らないのでざるで頼みました(ケチだねぇ我ながら)。揚げ玉が添えられていて薬味は本ワサビとネギです。以前本でも読んではいたのですが、喉越しで味わうと言うよりしっかり噛み締めて蕎麦の風味を楽しむ麺です。やや太い蕎麦は奥歯で噛んでもしっかり押し返してきます。高齢者にはキツいんではないか?と余計な心配をしてしまいますが、隣の大先輩4人組はしっかり完食してスタスタお帰りになりました。小さい頃から蕎麦とはこういうもんだと思えば問題ないのでしょう。しっかり噛んで食べるので食べ終える頃には満腹になり大満足です。
 少し降り始めた雨の中、キャンプ候補地に向けて、花火大会の準備も忙しい赤川沿いの道を走り始めたのですが、いささかまだ早過ぎるとばかりにもう少し鶴岡の町をグルリと囲むバイパス沿いのホームセンターやスーパーで買い物と醤油・味噌の調査をしてしばし時間を潰すことにしました。(まだ続く)