「日本原発小説集」書評 その2

東京新聞」(1月15日)の新刊欄では、次のような紹介がなされていた。

目に見えない放射能の不気味さを描いた清水義範放射能がいっぱい」、原発建設によって死に絶えた寒村の悲劇の歴史を創造した野坂昭如「乱離骨灰鬼胎草」、外国人日雇い原発労働者の日本人への憎悪を扱った平石貴樹「虹のカマクーラ」など五篇を収録。一九八四年から九四年にかけて発表され、原発の危険や被害の恐ろしさを描いた物語から3・11後の現代日本が克明に浮かび上がる。

初出を見て、古い作品ばかりという印象は持っていたが、よく見てみると、80年代から90年代にかけての10年間に対象を絞り込んで、作品を選んであるようだ。「まえがき」が物足りない気がしていたが、この年代を限定した作品配置もみると「暗に読者に語ろうとする何か」が編者にはあったのかもしれない。書誌学を手掛けているならば尚の事。