LIVE TOUR 2011 "You can't catch me" @厚木市文化会館

いつの間にやら初日が始まってました。一言で表すなら、アーティスティックで良いライブでした。終わった後でクラスタの打ち上げに参加して、それはそれで思うところあるのだけれど、このエントリーはライブの内容に留めます。もうそろそろ断り書きも要らないだろうけれど、後半はキモイんで、耐性あって寛容な人だけどうぞ。セトリを始めとして色々とネタバレがあるので、続きを読むで。
実験的に見出し多用してます。オレンジが中見出しで、青が小見出し

いつもの

会場の厚木市文化会館は初利用。246沿いでアクセスは悪くないのかもしれないけれど、いかんせん遠かった。開場前の物販がグダグダだったりは割愛。ツアーの行程が長いことを考慮して、バッグとパンフとTシャツにエッセイを購入。CDは全部持ってたので会場限定スリーブはスルー。

ステージ構成

1Fの15列付近、中央よりから見てたけれど視界良好。箱のサイズからしてキャパ1,400なんで、どこからでもそれなりだった。ステージ上は上手手前にバンマスの北川さん、その右奥にベースの千ヶ崎さん、その中央寄りにドラムの佐野さん。下手は手前にギターの奥田さんで、左奥にコーラスの戸田和さんとハルナさん、中央寄りにキーボードとピアノの扇谷さんという布陣。中央前方に真綾が居るから、そこからステージ奥に向けて末広がりになる、サガで言えばスペキュレイション
中央の奥に例のバスを正面から模したセットがあり、空中には計3枚の、金網みたいで向こう側が透けて見えるスクリーンがあった。真ん中の1枚は特定の曲の時だけ、ステージ上から吊り下がってきたので、基本的には左右に1枚ずつ。ロンドンバスの車窓を意識してたのかも。

バンドメンバー

パンフを見た感じだと、少なくとも中野331まではストリングスなしになりそう。マニピュレーターの仕事量が今までにないくらい多かった。コーラスはPAの関係もあってか若干地味めで物足りなかった。北川さんはタンバリン持ってることが多かったのと、バンマスらしく全体を常に気にしながらセッションしてた。ギター持ってるときの、両膝がピンと伸びてて、前後に足をやや開いた立ち方が独特だよね。オッケンさんはギターソロとか腰を落として地面に座り込んだりと情熱的なプレイで、クールなドーベルマンでお馴染みの石成さんとは好対照。
千ヶ崎さんはウドベ弾いてる姿が素敵でした。扇谷さんは頻繁にkeyとpianoを往復していて大活躍。ちょっと油断をすると真綾を見ていたはずが佐野さんを見ているのはよくある話。ギター2人も楽器の持ち替え頻度が高かったので、ここらは楽曲のバラエティが豊かな真綾ならではか。ツアーに複数回参加するんで、各楽器にもっと意識を割く会場を自分で決めるのも1つの楽しみ方かも。

本編

セトリを順番に書きつつ、コメントを挟めそうなら追加していく形式で。ライブ後に色々やっちゃったせいで記憶が薄まり、煮え切らない表現が続くのは平にご容赦。
その前に、今回もセトリ予想を公開。微妙に開演時間を過ぎてるのはご愛嬌。

セトリ予想。エタ、秘密、キミ、01、トピア、北川3、エビ、DT、湖、ミライ、sug、夢、月光、プラスカ、ポケ、悲、スクラップ、life
6:01 PM Mar 5th

という20曲を挙げてみた。この略で全部分かった人は褒めてあげよう。かぜよみツアーがタイトルにかぜよみを冠しながらもベスト染みた内容だったり、1年前に文字通りベスト盤をリリースしての武道館Giftがあったので、色々と迷ったのだけれど、YCCMの殆どの楽曲と、演者さん絡みの曲、バンドサウンドが似合いそうな曲を中心にチョイスしてみた。

【0.オープニング】

YCCMのバスがエンジンかけて出発して、標識が指し示すままATSUGIに向かうという影絵風のムービー。地名だけ変えて使いまわせる上に、割と会場も盛り上がるので良いアイデアと言える。2daysの会場の2日目はどうするやら。

【1.eternal return】

ライブの1曲目予想でも安定して名前が挙がってたこの曲でYCCMツアーはスタート。実はあんまり記憶に残ってないのは、ストライプデザインの網タイツ(ストッキング?)と、赤い衣装、髪を後ろはアップにして、前はパーマかけてサイドに流した感じのヴィジュアルに意識を持っていかれてたからかも。ライブ頭の数曲はPAの関係でどうしてもボーカルは埋もれがちなのだけれど、喉の調子が悪いということは無さそうだなーと一安心。

【2.秘密】

YCCMを通しで数十回は聴いてるので流れとしてはシックリ来るんだけれど、そこまでアップテンポが多くないYCCMで頭に2曲持ってきて大丈夫かなと思った。イントロからAメロにかけて、全体として暗いステージの中で真横からの照明が、パッシングライトを照らしたみたいで映えた。「対向車線を」の歌詞の再現でしょう。
アップテンポなナンバーで、佐野さんのドラムも冴えるわけで(2コーラス入る前の短い間奏の部分とかカッコよすぎ)、当然のようにリズムにノリつつステージを見てたけれど、メロディ的にも開放感があるサビでも真綾は殆ど動かず。内心を吐き出すかのように歌っていたのが、歌詞や曲のテーマと合わさって凄く印象的だった。

【3.ミライ地図】

ツアータイトルに偽りない3連続。CDでの蓮っ葉というか気だるい感じが減って、その分カワイイ歌い方だったように思う。前の曲とのギャップもあるか。

MC1

こんばんは、坂本真綾です。という挨拶と一緒にするお辞儀が素朴というか不恰好というかで微笑んでしまう。レコ発ツアーだからライブ初披露の曲が多いけれど、沢山ある持ち歌の中にも歌ったことのない曲があるのでそれをと。

【4.キミドリ】

特徴的なイントロの『とぅーるるっとぅるっ』てとこはコーラスの魅せ場。でも、自分のフェチを晒すなら、あのコーラスはヘッドホンで再生して脳内で鳴る位置が微妙にズレルとこに味があるのだよ。曲のタイトルまんまの淡い緑の照明。生ストリングスで聴いてみたい気もした。Cメロの英語コーラス部分がマニピュレーターだったか、生コーラスだったか判断付かなかった。

【5.美しい人】

最初のフレーズ『この声が聞こえるなら』の1音目から、喉をギリギリまで緊張させて歌ってるのが伝わってきて、やっぱりライブでの原キーは辛いんだなと思ったのだけれど、5月に大阪で聴いた時よりも完成度が相当高いままに最後まで歌いきったのには、感心するやら呆れるやら。
YCCMで唯一セトリ予想から外したら、綺麗に裏切ってくれた。言い訳させて貰えば、ここまで弦をマニピュレーター依存にするとは思わなくて、弦が居ないならやらないだろうと思ったのさ。薄ぼんやりとした紫の照明に客席が満たされる中、菅野さん楽曲のもたらす異世界感に軽く酔ってた。

【6.みずうみ】

喉を酷使しそうな美人の次に、イントロが長くてAメロも穏やかで、喉を回復できそうな楽曲が配置されたのはセトリの妙だねと@taletの真似っこしてみる。リスニングパーティの時にライブでどうやって再現するんだろうと思ってたアウトロの多重コーラス部分は、コーラスの量が減った分だけバンドとのセッション感が増えていて良い雰囲気だった。
タイトルまんまの青い照明が綺麗。今回のライブでは小さい手書きの張り紙ながら、光り物の禁止が真綾サイドから告知され、各所に小さな波紋を広げてるようなので、いつの日か拾い集めてみたい。

【7.ピース】

これは予想外の1曲。昔にリリースされた曲を歌う時は、真綾の歌い方の変化を楽しむようにしてるのだけれど、この曲は想像してたよりも変化が小さかったように思う。当時としては相当に大人びて背伸びした歌い方をしてるし、曲のイメージがはっきりしてるのも一因か。アウトロに『You can't catch me♪』とファンクな節回しも追加されての特別verなんで、ツアー通してやるんじゃないかな。

MC2

何喋ったのか覚えてないw 次の曲も少し懐かしい感じです、と結んだのだけ。

【8.スピカ】

確かにちょっとだけ懐かしいかも。自分は銀河劇場行ってないからライブでは初聴き。何かと可哀想な扱いを受けるh-wonder曲だけれど、スピカはメロディ綺麗でキャッチーだし、割と好きな部類なんで聴けて嬉しかった。
サビ前の『知りたいの』のメロディのところだけ、天井からのスポットライト照明が綺麗だったたのはこの曲だったかな。Cメロの『始まるメロディ』のCDでの歌い方が、自分の中ではポスト菅野時代に特有の歌い方なのだけれど、cosmic cuuneのまめぐの2:06の部分と同じような物なのかもと思った。@naslights他、分かる人だけ分かればいいや。ライブではあまり目立たなかったんで、この話は完全に蛇足。

【9.ゼロとイチ】

正面後ろのバスのとこまで2段くらい階段があるのだけれど、そこにお座りして歌う真綾。これしか覚えてないのが酷い。オクターブコーラスの所は下が主旋律なんだね。

【10.キミノセイ】

武道館で言うところの『SONIC BOOM』ポジション。アウトロ入ってすぐに真綾が衣装がえに引っ込み、ギターソロが唸ったりするバンド無双タイム。

【11.ねこといぬ -instrumental-】

コーラスのお2人と、たしか北川さんもはけて、扇谷さんがピアノに移動しソロがスタート。暫くは聞き覚えの無いメロディが続いたのだけれど、ウドベやドラム、ギターが混ざってきて始まったのは、DIVEでもかなり好きな『ねこといぬ』のジャズアレンジver。何ともいえず渋い、お酒の似合う空間が生まれてて、セトリ予想のあの曲もありうるなと期待も高まる一方。
惜しむらくは、途中からお色直しを済ませた真綾が加わることなく、instrumentalで終わってしまったこと。いつかこんなジャジーな雰囲気のライブで聴きたいなー。それこそ、今度のブルーノートみたいな場所で。


【12.hello】

2枚のスクリーンにキラキラとした星みたいな光が点るなか、これまた懐かしい感じのSE音が。お色直し後の衣装は、照明の関係でイマイチはっきりしなかったけれど、茶色ロング丈のワンピースで腰の辺りに黒の超大きいリボンがついたもので、色彩的に割と地味目だった。
少し不思議なことに、この曲も今まで一度も歌われてなかったのね。ラスサビ入り前からのオッケンさんが掻き鳴らすギターが、割と長い尺続いてたんだなーとか思った。

MC3

helloの仮タイトルは『手紙』だったこと、奇しくもYCCMの『手紙』も去った人から残された人へのメッセージであること。

【13.手紙】

CDにおけるAメロのあの甘くて可愛い感じが減って、歌の主体が猫から人間ぽくなったかも。YCCMで1,2を争うくらいに好きな曲だったのでライブで聴けて嬉しかったのだけれど、あの昇天するようなコーラスには最後の『fuxu』の部分にしか真綾が参加しなかったのが心残り。曲最後の鈴の音も無かったかもしれない。

【14.悲しくてやりきれない】

お色直しの『ねこといぬ』のジャジーな雰囲気に、ありうると思ったら本当にあって、セトリ予想的にも大勝利。ステージ奥のバスセットより手前に赤い緞帳がかかっていて、ちょっと地味目な衣装もジャズバーのステージで歌う歌手みたいな雰囲気が出てて凄く良かった。シンプルなアレンジでボーカルも前に出てきて凄く心地よかったし、この日のマイベストを争う一曲。

【15.ムーンライト(または“きみが眠るための音楽”)】

バックが扇谷さんのピアノソロにアレンジされたムーンライト。中央スクリーンが降りてきて、横並びに3枚になったところに満月が移ろっていくという演出。さながら精神と時の部屋みたいな勢いで月が動いてた。ボーカルがややフラット気味に聞こえる部分があって、個人的にはいまひとつ物足りなかった。『僕恋』や『NO FEAR』とは違って、ピアノソロに向いてる曲とも思わないのだけれど、次のライブの時にはもう少し意識して聴いてみたい。

MC4
【16.DOWN TOWN】

引き続き赤緞帳が似合う一曲。ホーンは来ないだろうし暫くライブではお預けかと思ってたけれど、マニピュレーター無双で解決だった。北川さんがタンバリンを持って踊ったり、ウキウキしたり、観客に振りを煽ったりと大活躍。リハでは大人しかったらしく、呆気に取られた真綾が歌詞を飛ばしたり転びそうになったりする始末。振りはサビで両手を上げて左右にスイングする感じで、個人的には『風待ち』よりはやってて恥ずかしくない。歌を聴いてるだけで楽しくなる、ライブ向きの曲だし、いつか全楽器生でやって欲しい。

【17.Private Sky】

DTからリズムを切らさずにシンプルなメンバー紹介(ダンサー兼バンマス扱いの北川大勝利)を挟んだ後のこの曲。ライブ映えするのは武道館で経験済みなんで、安心して盛り上がれたけれど、ホールだとジャンプするのはシンドイなw 
Giftの映像が勝手に頭に浮かんじゃう辺り、完全に調教済みである。こっからのアッパーパートより前で茶色のワンピース脱いでたけれど、中身の衣装は既に記憶の外。

【18.Get No Satisfaction!】

ライブの本編終盤はアップテンポを連続でって割とよくあるパターン。バンマス北川さんなんで安定のセトリ予想。イントロのギターフレーズが短く感じちゃうのはご愛嬌。照明が部分的にキツかった。この前後辺りでボーカルが割れそうなくらい大きく聴こえた曲が1つあった。喉が温まったのか、PAの調整かは謎。

【19.マジックナンバー

『GNS』からノンストップでの北川メドレー。セトリを通しての数少ないアニタイシングル曲。というか『スピカ』『DT』とこれだけ。ラスサビ前できっちり手拍子も鳴り止んで一人で勝手にご満悦。他のお客さんに苛立つことが少ないライブだったことは、とてもラッキーなこと。

【20.光あれ】

マジックナンバー』が終わってから間があったので、ラス曲前のMCになるかと思ったら、意外にも『光あれ』。かぜよみツアーでのMCの印象が強すぎるから、今回は外してくると思ったのだけどね。相変わらず「満ちあふれ」の部分の照明は自重しない感じで眩しかった。「無力すぎる僕のために」の部分で、自分も手を振れるようになりたい。会場にやってる人が少なくとも一人いた。

MC5

アルバムYCCMについて。かぜよみとの差異とか、このツアーの展望とか。

【21.トピア】

この曲のまったり感、黄昏感は凄まじいものがあり、そういう意味ではライブのラストにも相応しいかも。『eternal return』で始まり、『トピア』で終わるというのは早々に決まったのかも。パンフにもCDの収録順に関してのエピソードがあったし。YCCM曲はアレ1曲を残して全部本編での披露というのも少し予想外だった。

MC6

「アンコール」の掛け声の一切無い、手拍子のみによるお呼び立て。ライブグッズの白と黒のTシャツを垂直に真っ二つにしたのを縫い合わせた氷炎魔団長フレイザードみたいな衣装。「真綾ちゃんと同じ格好をしたい!」な女子からキッチリ回収する戦略ですね、わかります。
物議を醸した2Gで4kのUSBメモリには壁紙や音声データが入ってるなどという、なぜ事前に発表しておかないんだという情報の公開があった。真綾サイドの掌で踊らされてる感が否めない終演後の物販行列である。
閑話休題。一番最近にレコーディングした曲を歌いますと。

【22.エイプリルフール】

ブルーノートまでお預けかと思ったら発売早々にライブで披露してくれた。北川さんとのサビは甘々で良い雰囲気。電気ロケット程ではないけれど、デュエット曲と呼べるかもしれない。

MC7

一人旅に行ってからもう1年半が過ぎたけれど、今になってあの旅の意義を実感できるようになったかも。

【23.everywhere】

やっぱりサビ頭の「everywhere」は本人は歌えないというもどかしさ。

【24.stand up, girls!】

再びだか三度だか中央のスクリーンが下りてきて、クラップのタイミングを指示する両手のモデルが映される。野球場とかでもよくある奴だね。で、坂本・ハートマン・真綾軍曹による声だしの訓練開始。最終的には結構会場に響いてるなーって感じるくらいの音量になったのだけれど、『ツッタン、ッタタン』という手拍子を叩きながら「stand up, girls!」って声を出すのは割と難しかった。どっちかに気を取られるとどっちかが疎かになってしまう。挙句に最後の方は予告なしに、手拍子が裏打ち指示になる始末。
慣れたら楽しいし、真綾軍曹もご満悦だったし、真綾ファンでカラオケに行ったりする人は練習しておくといいかも。ポケ空と違って全くの初見の人でも対応できるというのは良いことかも。今回のツアーは成長させるツアーらしいけれど、一番成長するのは観客の手拍子錬度に違いない。なるほど…そういう事だったか…

MC8
【25.ポケットを空にして】

本スレでいい加減に飽きたという意見を見て、難しいところだなーと。ライブという非日常と、日常との橋渡しをする曲という認識がありそうだし、かぜよみファイナルみたいに裏切られたら嬉しいから、個人的には今のままでいいけれど。

【26.エンディング】

後ろのセットのロンドンバス脇から舞台裏に真綾がはけて、オープニングと同じ影絵で次の会場を目指すというムービーが流れて終了。BGMでかかってた『eternal return』と会場の拍手の一体感で、良い具合にライブの余韻に浸れた。


という全25曲のライブでした。

考察

という名のポエムコーナー。
まずセトリ予想に関しては、挙げた20曲中17曲が的中。こう見ると中々の数字だけれど、YCCM曲は鉄板だし、外したのが『ドリーミング』、『スクラップ』、『Life is good』と独自色を出した部分なので、読みきった感は薄い。追加公演等でのセトリ変更に淡く期待しておこう。

アーティスティック?

個人的に今回のセトリには殆ど不満が無いけれど、客観的に見ればそれなりにコアな真綾ファン向けだと思う。かぜよみや武道館はライト層でも知ってるだろう曲が多かったけれど、今回は「知らない曲ばっか…」ってなる人も居るかもしれない。ストレートに言っちゃえば、菅野時代のアニタイシングルを1曲もセトリに混ぜてこなかったのだけれど、これは割と思い切った決断なんだろうか? アルバム全曲やってるわけだからレコ発ツアーとしてはこれ以上無く正しいし、記事の冒頭にライブがアーティスティックだったと表現したのは、1つにはこの点に由来する。


2つ目の理由は、私見だと断っておくけれど、MCでの自分語り要素が減ったと感じたから。ライブ本編のレポでMCの部分はコメントが少ないように、今回はMCがグサグサ刺さって、素晴らしいor苦しいという場面が個人的には無かった。勿論YCCMを作るに当たってどういう姿勢で臨んだのか、とかには坂本真綾らしさが詰まってたけれど、アルバムのリリースに伴う大量のメディア露出で見聞きした内容に被る部分が多かった。
かぜよみの『光あれ』や武道館の『I.D.』が、ミューマガのレビューで揶揄される位に"坂本真綾"に溢れてたのと比較すると、物足りなく感じる人も居るかもしれない。片や半生、片やアルバム製作にかかった1,2年という、年月の差かとも考えたけれど、YCCMだって15年の歳月の上に成り立ってるものだし、この視点はイマイチ説得力が無い。新しいアルバム作ったから、それを引っさげてライブをやろうという、歌手としてはありふれた動機の上のツアーなんだろうと思った。


最後、3つ目の理由は、真綾のボーカルの完成度が高かったこと。巷で散見される表現としてCD音源みたいというのがあるけれど、良くも悪くもそんなだった。ボーカルがCD並みのクオリティで何が悪いのかと思うだろうけど、自分はライブにはライブらしさを求めている。今回のセトリだと『ムーンライト』みたく、バックバンドに大胆なアレンジが施されてたら、ライブならではの醍醐味として受け取れる。けれど、自分は楽器を演奏できないし、あんま耳も良くないから、バンドへの期待や要望はそこまで高くない。やっぱり、何よりも真綾の歌声を求めてにライブ会場に足を運んでいる。
歌声のライブらしさとはなんだろうか。
例えば、CDのリリース時期が古かったりすれば、声質や歌い方の変化みたいなのを楽しめるだろう。自分の真綾ライブレポを読み返す限り、割とそういう聴き方をしてきてる。そこに真綾本人の成長物語を勝手に作り、重ね合わせたりまでやったかもしれない。
しかし、今回のライブの中核をなすYCCMの楽曲は、レコーディングから長くても1年くらいしか経ってなく、ライブとCDとで歌い方に大きい差がない。その結果、どれだけCD音源に近づけて歌えているか、という粗探しをするような聴き方になってしまった気がする。『ムーンライト』の自分の評価が低いのは、そこらへんが原因かもしれない。
とはいえ、CDと同じようにライブでも歌えるというのは、やっぱ凄いことなわけで。非難覚悟で言うならば、DIVEリリース当時の真綾が『ピース』とか歌ったら、今回のライブよりはかなり低いクオリティになると思う。一人の歌い手として素晴らしい技量を持つに至ったことは、ファンとしても喜ばしいことだし、ツアーを通してこのコンディションを維持し、もし更なる飛躍があるのなら、それはこの上ない喜びだ。

長くなったけれど主にこの3つの理由から、ライブ終演直後の自分はアーティスティックという表現を選んだのだと思う。別に、"アーティスティック"という単語に明確な定義があるわけじゃなく、自分の脳内で都合よく1つの単語にまとめたというだけなので、武道館の時の"エンターテイナー"と同じようなものだと思ってもらえれば、おそらく間違いはない。

You can't catch me

厚木帰りの電車の中で@taletや@fluorsparと、今回のライブの核は何だったんだろうという話をした。かぜよみでの『光あれ』や『カザミドリ』、Giftでの『I.D.』や『everywhere』みたいな曲は果たしてあったのか。プロモーションレベルで考えるとYCCMのメインチューンは『秘密』になるのだけれど、今回のライブでは序盤であっさりとやってしまった。自分の欲望と、現実の困難さを認めた上で、それでも前に進んでく『eternal return』も、『everywhere』とは違った角度から自分の帰る場所を歌った『トピア』も、それ1つでこのツアーを象徴するには少し物足りない感がある。
明確な結論が出ないままに乗り換える駅がきて別れたのだけれど、一人になってからライブのパンフレットを読み始め、3ページに及ぶインタビューの内容に思わず唸ってしまった。自分が知りたかったこと、考えてたことの答えがそこにあった。徹夜明けでハイになってたのもあるけれど、坂本真綾スゲーって一人で脳内で盛り上がっていた。
でも、この記事ではその細かい中身に関しては触れないことにする。なぜなら、最後にツアーを総括する時まで温めておく事に意味があると思うから。"アーティスティック"の部分で、自分語りが減って個人的に物足りないと評したのだけれど、その分は期せずしてパンフレットのインタビューで補完できた。このインタビューの内容をライブのMCで語ってしまうと、それはまた矛盾が出てしまうので、パンフレットに掲載という形は正しいと思う。今となってはパンフのデザインまで全肯定したくなるから、儲心って恐ろしい。
これからライブに参加する人はこんな所を読んでないだろうから、既に参加した人でパンフ持ってない人がいたら、どっかで買ってみるといいんじゃないかな。でも、インタビューの内容がその人にとって全然面白くなくても、一切責任取らないけれど。

終わりに

だらだら書いてきたけれど、そろそろ次の福岡公演も始まってしまいそうなんで(別に参加はしないけれど)ここらで締めたいと思う。今のところ厚木を含めて6公演分のチケットを持っていて、その中には気が向いたら参加しようかなー程度に思ってた会場もあるのだけれど、ツアー初日を経たことで、参加したいとう意欲が少し高まった。4月24日の国際フォーラムが終わった時に、自分がどんな気分でいるのか、想像するだけでなぜか愉快だ。たとえどっちに転んだとしても、それは無意味ではないだろうから。
当日参加した人、最後まで読んだ人、お疲れ様でした。