高度に発達したメイドさんは名探偵と区別がつかない
- 作者: 樺薫,赤賀博隆
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/08/17
- メディア: 文庫
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で、発売前から大いに期待していて、本が出るとすぐに買ったのだが、先に『妹は絶対君主なお嬢様 (美少女文庫)』を読んでいるうちに夏バテになって本が読めなくなって、結局、1週間遅れでさきほど読み終えた。
読後感を一言でいえば、『シャーロック・ホームズ対オカルト怪人―あるいは「哲学者の輪」事件 (河出文庫)』みたいな小説だった。タイトルはよかったんだけどねぇ。
メイドと名探偵の対決となれば、知略を尽くした勝負がいちばんなのだが、まあ、別に武侠勝負でもジャンケン勝負でも、お料理勝負でもなんでもいい。ただ、とにかくメイドさんが名探偵と戦うという愉快なエピソードが読みたかったのだが……全然対決していないよ。
ヒロインのメイドさんがやったことと言えば、名探偵がお屋敷にやってくる前に事件の捜査を進めて、いざ名探偵が到着したら適当にのらりくらりと誤魔化して、何か事件があったという確証を名探偵が得る前に収拾をつけてしまっただけだ。その捜査も屋敷の中を探って証拠を見つけて犯人を突き止めるというもので、機知の要素がほとんどない。事件の前にメイドさんの智力を示すエピソードがいくつかあったので「これはもしかするともしかするかも……」と淡い期待を抱いたけれど、やっぱりそれは高望みだったようだ。
『めいたん』の読みどころはたぶんそんなところではではなくて、随所に鏤められた「わかる人にはわかる」ネタの数々なのだろう。でも、ミステリネタのいくつかがわかったくらいで、SFネタは全然わからなかった。
面白かったのは、探偵事務所の売り文句に『麻雀打てばピタリと当たる! 心理探偵術の超本場』というのがあったこと*2と、ヒロインの行動がこれの考案のきっかけになるというエピソードだ。でも、小ネタの面白さが小説全体の面白さに直結していないのがちょっと辛い。
ちょっとネガティヴなことを書いてしまったが、登場人物のキャラクターはベタ過ぎず、そこそこ個性もある。文章は読みやすくて詰まるところがない。そして、何より設定がいい。つまり、骨格はしっかりしているのだから、後は肉付けの問題だ。このまま単発で終わってしまうのはもったいないので、ぜひ続篇を書いてもらいたいと思う。