カニカニカニカニ! …謎だらけの「あいうら」主題歌「カニ☆Do-Luck!」を考える

 

 
カニカニカニカニカニカニカニカニ!!
 
…テレビアニメあいうらを観ました。まぁ、何に驚いたかってあのOP曲です。素晴らしい美術背景、穏やかなシナリオ、可愛いキャラクター…そんな本編のエモーションを全部根底からひっくり返すかの如きハチャメチャなOP曲。
 
アレは一体何なんでしょう?
 
何回聴き返してみても、どう考えてみても謎だらけの曲です。「何故、5分のショートアニメというフォーマットの中でたっぷり1分もOPに使うのか?」「何故、唐突にスティーブ・ジョブズが出てくるのか?」「何故、アンディ・ウォーホルシルクスクリーン作品をパロディにしたのか?」「そもそも、何故、蟹なのか?」。疑問点を列挙していくと益々、本作のOP曲カニ☆Do-Luck!」のカオティック度合いが極まってきます。
 
ひたすら「蟹蟹蟹蟹!」と連呼する歌詞もインパクト大なこのナンバー。そんなこんなで、今回のエントリでは、この「あいうら」のOP曲「カニ☆Do-Luck!」についてアレやコレやと書いてみたいと思います。
 
 

■先ずは、歌詞を書き起こしてみよう! そして、作曲者は…


 
とにかく、曲の全容を少しでも掴む為に、先ずは歌詞の書き起こしをしてみたいと思います。これで、リリックが全部合っているかちょっと自信はないのですが、全体の雰囲気は捉えているハズ。
 

揚げろ! 揚げろ!
蟹だ! 蟹だ! Yeah!
 
フライパンの中 次々
飛びます! 飛びます! ダイビング
出来立てをいただきましょ
Fly! 蟹フライ
 
タラバズワイ 毛蟹は定番 Are You All Right?
食べちゃダメ スベスベマンジュウ Do You Know?
決め手は蟹味噌 病みつき夢見そう
 
おやつ気分で テンション
パッション クエッスチョン
「ヤケドしちゃうぞ?」
 
蟹蟹蟹蟹!
カニカニカニカニ!)
Fly Away
何何何何!?
カニカニカニカニ!)
食べなきゃ分かんない
蟹蟹蟹蟹!
カニカニカニカニ!)
これ如何に?
 
三ツ星シェフ 裸足でランナウェイ
デタラメレシピでOK Go My Way

 
「毛蟹は定番」の後の歌詞の聴き取りが微妙なんですが、概要としてはこんな感じではないかな、と。…しかし、改めてテキストで観返してみると、何だコレ!?
 
何故、アニメの第一印象に少なからぬ影響を及ぼすOP曲で、ここまで蟹を推すのか? どうして、蟹なのか!? …やはり、この曲に対して次々に飛び出す「何故」の噴出を抑えることができません。
 
リリックはこんなにも謎だらけな感じ(でも、キュート)ですが、サウンドの方はピコピコしたテクノポップナンバーで素晴らしい。クレジットで作曲者を確認してみれば、作曲は三浦誠司さん。個人的には、ご愁傷さま二ノ宮くんのOP曲「ユビキリ」我が家のお稲荷さま。後期ED曲の「シアワセの言霊」を作られた方という印象が強い作曲家さん。うわっ! あの曲大好きなんですよ!
 
<「ご愁傷さま二ノ宮くん」ED / ユビキリ>

 
<「我が家のお稲荷さま。」ED / シアワセの言霊>

 
どちらも、トランスのようなアッパーなダンスミュージックの高揚感とドラマティックなメロディーを、テクノポップの可愛らしい曲調にミックスさせたようなグレートなナンバーであり、個人的にもお気に入りのアニメソング。ハチャメチャな歌詞でも、それが決して"イロモノ"に終わらず、キチンとメロディーが印象に残る楽曲に仕上がっているのは、この三浦さんの音楽的センスに依るところが大きいのではないかと思います。
 
 

■何故、アンディ・ウォーホルなのか?


 
蟹を連呼するミステリアスな歌詞に比例して、映像も謎だらけです。本エントリの冒頭にも書きましたが、何故、ジョブズが出てくるのか? そして、何故、ウォーホルの作品群をオマージュしているのか?
 
印刷技術を使ってアートの世界に革命を起こしたポップアートのパイオニアアンディ・ウォーホル。ウォーホルをアニメに起用した意図は全くもって不明ですが、唯一言えることは、このOPアニメーションを作った人はウォーホルが本当に好きな人なんだろうな、ということ。何と言っても、そのパロディのセンスが抜群です。
 


 


 
マリリン・モンローは蟹に、そして、キャンベル・スープはカニ缶に。ウォーホルのポップアートのモチーフをそのまま蟹に置き換えたアニメーションは、非常に洒落が効いている。中でも、一番おもしろかったのがコレ。
 


 
ウォーホルがプロデュースしたニューヨークのロックバンド、The Velvet Undergroundのデビュー・アルバムである「The Velvet Underground and Nico」のジャケットを丸々パロディーに。ジャケットに描かれたウォーホル作のバナナの絵画は、勿論、蟹にメタモルフォーゼを果たしている。凝っているのが、このヴェルヴェッツのバナナジャケ、発売当初のレコードではこのバナナの部分がステッカーになっていて、"Peel Slowly and See"という指示通りにステッカーを剥がすと中からピンク色のバナナの果肉が現れる…という、ややエロティックなギミックが施されていたのですが、「あいうら」のOPではその辺りも丸々完コピ。蟹の殻を剥くと、蟹肉が…といった具合に、オリジナルのバナナジャケの意匠を、そのまま蟹にレイアウト変更完了
 


 
こうやってジックリと見ていくと、このOP曲が所謂"電波ソング"に留まることなく、非常に凝ったギミックと緻密な計算の上に成り立っているのはでないかという気がしてきます。…いや、あくまで気がするだけで、あの本編との圧倒的な温度差とか、その辺のギャップについては相変わらず謎のままなのですが…。
 
もう、とにかくこの曲に関しては、色々なことが気になり過ぎますよ、カニ…。