世界的幹細胞研究者、黄禹錫教授に対する疑惑

入院中の黄教授


事件の概要については、以下のサイトが詳しくまとめられていますので、ご参照ください。


「10分で分かる韓国の生命倫理問題」(幻影随想さま)
「韓国の生命倫理問題に関する急展開について」(幻影随想さま)


最初に問題になったのが、研究用受精卵の入手方法に絡む倫理問題でした。
これについては、紆余曲折はあったものの、黄禹錫教授が謝罪会見を行ったことで、韓国国内では、多くの韓国人女性が卵子提供のボランティアを申し出るなど、国民的英雄を擁護する世論が圧倒的でした。
逆に、問題を大きく報道したテレビ局が批判の的となり、番組のスポンサーがすべて降板、番組打ち切りのうえ、関係者が謝罪までする騒ぎとなりました。
しかし、その後、論文データの捏造疑惑まで持ち上がって、黄禹錫教授個人の問題から、韓国科学界、韓国全体の信用問題にまで発展してきました。
そんな中、ソウル大学の教授たちが真相解明に乗り出したいと申し出たようです。

『「黄教授論文自主検証を」ソウル大一部教授ら 』(中央日報)

ソウル大学の教授らは8日、黄禹錫(ファンウソック)教授論文の真偽可否を自主検証することを鄭雲燦(チョン・ウンチャン)総長に要求した。
ソウル大学生命科学部イ・ヒョンスック、イジュノ教授はこの日、学長会議後、鄭総長にこのような内容を書いた文を渡した。文にはソウル大教授数十人の署名と関連資料が含まれている。
教授らは「黄教授チームの論文真偽問題が国内外に提起された以上、これを世論に便乗した感情的愛国主義で隠す問題は絶対にないと思う」とし「ソウル大が大学レベルで科学真実性委員会(OSI、Office of Scientific Integrity)を構成し、黄教授チームの論文に対して提起された疑惑を徹底的に再検証することが、今後のソウル大でのすべての研究が国際的信頼を失わない唯一の道」と主張した。
教授らは「黄教授チームの論文はデータを綿密に分析した結果、単純な編集上の間違いだというには無理な部分が多い」とし「幹細胞に対するDNA分析データの中でもかなり多数が釈然としないという疑問を持たざるを得ない」と明らかにした。
また「今、沈黙すれば大韓民国の科学が国際的信頼を喪失することになり、これによって国家的災いをもたらことを深刻に憂慮する」と強調し「自主真相調査をこれ以上先送りにはできない」と総長の決断を促した。
鄭総長はこれに対し「OSIを早急に発足させれば、外国ではまるで黄禹錫教授に何か誤りがあって早急に調査に乗り出すように映る」とし「慎重にアプローチしなくてはならない」としている。


教授たちの意見は、すごく真っ当で、とくに「黄教授チームの論文に対して提起された疑惑を徹底的に再検証することが、今後のソウル大でのすべての研究が国際的信頼を失わない唯一の道」という部分は、まさにその通りであると思いますし、データの捏造があったかどうかに関わらず、ぜひ行うべきことだと思います。
しかし、この教授たちの切実な意見に対して、ソウル大学サイドは、国内世論を気にしているためか、及び腰のように思えます。

黄教授の研究は、世界的にも注目を集めていましたし、それ以上に、韓国国内では、ノーベル賞受賞も含めて、大きな期待が掛かっていました。
今、その研究に大きな疑惑が持ち上がっている以上、自らの手で真相を解明する必要があるでしょう。
それができれば、仮に捏造が本当であったとしても、それは黄教授チームだけの過ちで済むでしょうが、韓国社会が疑惑から目をそむけ、真相を解明しようとする努力を行わないなら、韓国自体の信用が地に落ちることになるでしょう。