日記:ほんと、「おれのことば」なんてないですよ。


慶應義塾大学出版会より『井筒俊彦全集』刊行が始まったので、すこしだけ書いておきます。

慶應義塾大学出版会 | 神秘哲学 一九四九年 ― 一九五一年 | 井筒俊彦 木下雄介

「『神秘哲学』初版と人文書院版、著作集版の間の重要な校異を収録」。

井筒さんの神秘とは、人間存在そのものへの肉薄のプロセスだし、どこまでも言語を離れないという非・恣意性の極地だから、この刊行は時代を画することになると思う。

俗に、公定国語教育みたいなものが「自分の言葉で語りなさいw」っていうけど、量子論を引くまでもなく、無から何かをポン!みたいなオリジナリティなんてある訳ではない。

テクストに忠実に向き合うことで、実際のところ、訓詁とは似て非なるものが現出するのだと思う。

窮極の「おれのことば」は「わたしは○○(名前)である」という自己同定の独白だけしかない。

ほんと、「おれのことば」なんてないですよ。

わたしたちの目の前にひろがり、語り継がれた言葉を、どう、担い立つかどうかだけの話ですよね。

アカデミズム批判の代表が「象牙の塔」とかいうけど(ほんで、そういうパターンはあると思うけど)、現実には、一言一句と向き合うと、社会と隔絶するどころか、根柢的な批判を持ち合わせることが必然されると思いますね。

ほんと、井筒俊彦先生から学んでいかなければならない。





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