覚え書:「今週の本棚・新刊:『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』=日野行介・著」、『毎日新聞』2013年11月10日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』=日野行介・著
毎日新聞 2013年11月10日 東京朝刊

 (岩波新書・798円)

 今なお14万人を超える住民が避難を余儀なくされている、東京電力福島第1原発事故。拡散された放射性物質による健康への影響を調べるため、福島県が実施している県民健康管理調査を巡る問題を、執拗(しつよう)に追い続けた新聞記者のリポートである。

 情報公開制度で入手した膨大な資料を丹念に読み込み、そこから浮かび上がる疑問を、一つ一つ関係者に突きつける。約1年にわたり、そんな地道な作業を繰り返し、実態に迫っていく。

 専門家たちが秘密裏に会議を重ねて「シナリオ」を描き、県の担当者は議事録すら改竄(かいざん)する−−。本書を読み進めるうちに「一体、誰のための調査なのか」という疑問を抱かずにはいられなくなる。あえて指摘しておきたいが、調査の原資には、国と東電が支出した約1000億円の基金が充てられているのである。

 「放射線被曝(ひばく)(特に内部被曝)と健康被害の歴史は、国と一部の『専門家』による隠蔽(いんぺい)と情報操作の繰り返しだった」。エピローグの一文に、健康管理調査の真相を記録として残そうと決意した、著者の思いが凝縮されている。「権威」とは何なのか。そんな思いに駆られる。(政)
    −−「今週の本棚・新刊:『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』=日野行介・著」、『毎日新聞』2013年11月10日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20131110ddm015070028000c.html




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