覚え書:「今週の本棚・新刊:『第一次世界大戦と日本』=井上寿一・著」、『毎日新聞』2014年07月27日(日)付。


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今週の本棚・新刊:『第一次世界大戦と日本』=井上寿一・著
毎日新聞 2014年07月27日 東京朝刊

 (講談社現代新書・864円)

 今年開戦100年を迎えた第一次世界大戦。関連書の刊行も相次いでいる。本書は、この戦争の日本への影響を新書の形式でコンパクトにまとめた。政治史と庶民の生活史を組み合わせ、戦前の日本人が社民主義的でリベラルな社会を望み、それが実現しつつあった様を描く著者お得意の手法が、今回も光る。

 内容は、おおざっぱにはよく知られている個別の事象も多い。しかし改めて、当時の日本が国際協調的な国家へと歩みを進めたこと、国際連盟での日本人の活躍や二大政党制成立期の議論の濃密さなどを併せて読めば、この時代の「豊かさ」を思わざるを得ない。朝鮮人や女性も、時代状況による大きな限界はありつつも、相対的に活躍の場を広げる。皇室も、立憲君主的なあり方をのぞかせる。しかし、「民主」的な日本が、関東大震災を機に少しずつ危うくなり、満州事変以降、崩壊してゆく。

 大戦で地中海に派遣された海軍将校の日記などミクロの視点を意識しつつ、簡潔明瞭な文体が、いつもながら心地よい。著者は今春、学習院大学長に就任。多忙な日々の中から、次作のアイデアが練られていると期待したい。(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『第一次世界大戦と日本』=井上寿一・著」、『毎日新聞』2014年07月27日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20140727ddm015070016000c.html





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第一次世界大戦と日本 (講談社現代新書)
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