覚え書:「書評:デモクラシーは、仁義である 岡田憲治 著」、『東京新聞』2016年09月11日(日)付。

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デモクラシーは、仁義である 岡田憲治 著

2016年9月11日
 
◆面倒?でも手放すな
[評者]五野井郁夫=高千穂大教授
 近年、民主主義に対する不満と幻滅が世界中で広まっている。社会的閉塞(へいそく)感を手っ取り早く打破してくれそうな強いリーダー待望論や、効率性のために民主主義の価値や手続きを捨て去ってもよいとする安易な発想が、各国で独裁的な手法をとる政治家を生む一因となっている。
 なかなか望むような結果が出ず、また決定に時間がかかる民主主義は非効率だといった批判に対して、政治学者の著者は民主主義を「これだけは外してはいけない」という仁義だと説く。
 では、この民主主義という仁義から外れると世の中はどうなってしまうのか。著者は「全ては暴力が決する」やり方が横行し、民主主義が掃いて捨てられる政治体制が出来すると警鐘を鳴らす。暴力が支配する社会の行く末は、統治者の利害や嗜好(しこう)に個人の人生が左右され、自由な発言が許されない全体主義の政治だ。
 人間が不完全な存在である以上、政治に最良を望むのは不可能である。だが、民主主義は意見の表明や知る権利といった、われわれが享受しているごく普通の生活を社会として破壊させない工夫であり、それは「最悪を避ける選択」なのだ。
 人々を抑圧する最悪の政治体制をこの国に再び出現させないためにも、たとえ面倒な手続きでうまくいかないとしても、われわれは民主主義の政治を絶対に手放してはならないのである。
 (角川新書 ・ 864円)
<おかだ・けんじ> 1962年生まれ。専修大教授。著書『働く大人の教養課程』など。
◆もう1冊 
 小森陽一ほか著『あきらめることをあきらめた』(かもがわ出版)。若者、母親らが民主主義や平和について討議。
    −−「書評:デモクラシーは、仁義である 岡田憲治 著」、『東京新聞』2016年09月11日(日)付。

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岡田 憲治
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