覚え書:「ビジネス 子育て支援と経済成長 [著]柴田悠 [文]森健(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2017年03月19日(日)付。

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ビジネス
子育て支援と経済成長 [著]柴田悠
[文]森健(ジャーナリスト)  [掲載]2017年03月19日

■保育拡充で財政改善の可能性説く

 日本の社会保障は高齢者には手厚いが、子育てには手薄だ。だが、子育て支援の予算を増やせば、経済効果は2・3倍にもなる可能性があるという。さらに副次効果として労働生産性を上げ、子どもの貧困や自殺を減らし、財政も改善するという。万能薬のようだが、この驚くべき効果を社会保障論の著者が統計分析から導いたのが本書だ。
 著者は日本の最重要問題を財政難と考え、そこから問題の原因を論理的に特定していく。そのうちのひとつ、労働力の女性比率が上がると、翌年の労働生産性が上がるという効果。著者は国際通貨基金の統計分析から、日本の女性労働力参加率がG7レベルまで上がれば1人あたりのGDPは約4%、北欧レベルなら8%増えるという推計を示す。
 では、その女性を活(い)かすにはどうするか。そこで必要なのが保育サービスだ。OECD諸国では、保育への政府支出をGDP比で1%増やすと労働力女性比率は1・21%増えるとされる。因果関係を遡(さかのぼ)ってみれば、保育の拡充こそが日本の経済や財政を向上させる要因だったとわかる。
 最後に著者は財源の問題にも触れ、解決策も提示する。本書にはいますぐ社会で議論すべき課題が詰まっている。
    −−「ビジネス 子育て支援と経済成長 [著]柴田悠 [文]森健(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2017年03月19日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2017031900015.html


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