野辺・路傍の如意輪観音が好き...

 私は仏さま・仏像の中では、あの姿からか如意輪観音が好き。如意輪観音とい えば、まず大阪・観心寺にある国宝の如意輪観音像など有名である。しかし、確か毎年5月の二日間だけの一般公開。いつも気軽に見る、あがめるというわけにはいかない。

 いわゆるこれら、名のあるお寺のやんごとなき仏像・壁画は、施政者や高僧・貴族などが発願し、これまた名工や名匠が彫ったもの。国宝・重要文化財級のものも数々。比類のない美しさ、尊さで信仰を集め、また時代を越えて多くの人々を魅了し続けている。

 これに対し、石造文化財といわれるものがある。これは、民衆がさまざまな願いをこめ、自然発生的に彫造された野の仏、道路脇の仏、寺の境内の石仏などである。名もない石工やまったくの素人の手になったものばかりだが、村のはずれのお地蔵さんのごとく、大変身近なものである。
 
 これらは高貴な仏像と違って、常に民衆とともにあった。民衆とともに泣き笑い生きてきた。ごく身近であるとともに、素朴な信仰と生活、先人の息遣いさえ感じられる。

 雑草や熊笹に中に埋もれ、長い間風雨にさらされ、銘文の判読も不可能なものもあるが、寺の構内に安置されたものなどは保存状態がいいものもある。石仏・石神といっても地蔵菩薩道祖神、庚神搭、馬頭観音をはじめいろいろなものがあるが、私が中でも一番好きなのは、やはり如意輪観音である。

 いつも通る道すがらにあったりもするが、いろいろ見て歩いて、ほんとうにハっとする美しい像に出くわすことがある。片膝を立て、首を傾げて片ひじで頬を支えているお姿(思惟の形というそうである)がなんともいい。写真は、私の好きな野辺の如意輪観音の一つ、長野市は信更地区古藤の草堂の石像。