やり口

やっぱりやり口としては、量を読んでいることで度肝を抜く、か、思いもよらないような指摘をして知的にうならせる、かのどっちかだと思うわけだ。知性の切れ味と量の圧倒。もちろん、できれば両方兼ねてるほうが望ましい。オタクがオタク評論に納得できないのはその辺が原因の多くを占めるんじゃないかという気がするよ。
というかそんなこと別にあえて言わなくても、批評ってそういうもんなんじゃないかなー。シーン全体に目配りがなかったり、シーンのトレンドについていってない人に時評できないのは無理ないと思う。
業界の内部の構造がどうなってるかわからないんだけど、例えば雑誌の書評欄を持っているような推理小説評論家は、古今東西の名作と現代の新作にはあまねく目を通しているように思う。それに比べてオタク評論をやりたい人で、全オタクアイテムを制覇しているという人はいるのかしら。まあもちろんオタク界の領域の問題があるので制覇といってもそれを定義するのが一苦労なんだけど。けど仮に最大公約数的にマンガとアニメとゲームくらいだとしても、それぞれのジャンル細分化もすすんでるから、アイテム押さえるだけでも大変だろうなあ。マンガでいえば、少年青年少女女性の各ジャンルにちらばってるし。デスノハガレンNANAハチクロと....あといくつあるかな。そう考えると各論であるマンガオタク論とかゲームオタク論が立ち上がってこないと総論としてのオタク論というのは難しいのではないか、という気もするけれど、それはあくまで実証主義的アプローチをとるときの話であって概念論としては可能、ということになるのかしら。よくわからんなあ。やっぱり「イデアとしてのオタク」と考える方が正しいのかなあ。

週刊文春 11/11号

特集は香田さんの人となりと新潟大地震。どちらもワイドショー的。文春はしかしマキコ粘着が好きだな。加賀孝英「土地不正買い上げ」記事は興味深かった。こういう記事があると買った甲斐がある思いがする。ワイド特集の紳助司会者ネタは中立視点。このネタは多くの人を思考停止的中立に押しとどめているようで面白い。関西芸人叩きをしたいグループと帰国子女空気読めない系女子を叩きたいグループは重なっているのかも。記事中、被害者Aさんの証言によれば、彼女が紳助司会者にかけた言葉は以下。

すいません、私は二十年前に吉本の東京事務所が赤坂にあった時、
木村・大崎チームに大変お世話になりまして、紳助さんにも可愛がって
いただいたんですよ。

これに司会者が切れたらしい。暴力は言語道断としても内容としては微妙だな。
連載。大地震を取り上げるなら真正面からとりあげてほしい。最初に地震をさらっとネタにして本題は映画祭という林真理子のエッセイには少し眉をひそめた。ワールドシリーズの結果と共にずっと李啓充のコラムがどう反応するか気になっているが、今週はまだ初戦に勝った時点での原稿。一方、こちらも連載の松井インタビューではすでに結果が出た後の感想が語られている。〆切ってそんなに差があるのか。来週は李コラムが増ページだといいなあ。

QJ vol.56

笑い飯」特集だったので。ロングインタビューとモブ・ノリオとの奈良人対談は面白かった。ロングインタビューを読むとしかし、本来、QJが取り上げるタイプのコンビじゃないよなあと思う。おしゃれ目指してないし。映画撮ったりしなさそうだし。べったべただし。QJ自体をよく知らないので偏見かもしれないけど。というか個人的偏見きわまりないのだが笑い芸人が映画撮ったり映画撮りたがったりするのにどうも背筋が寒くなる。ベタありきじゃないですかねえ。笑い飯は映画撮らなさそうで安心した。奈良人対談は、近畿における奈良の微妙な感じを表現している。とにかく奈良は保守王国なのだ。全国で言えば島根とかそういう感じ。だけど電車で1時間もかからずに大阪、ってところがポイント。
それ以外では「Out of Japanese HipHop」が面白かった。語り系業界史。歴史はやっぱり無味無臭より誰かの思いっきり私的な観点からが面白いな。「DEATH NOTE」特集は微妙。西島大介×冲方丁×乙一デスノ鼎談、冒頭が

西島 僕は昨日あわててコミックス第二巻を読んだばかりなので、
最先端の「DEATH NOTE」の状況をまったく知らないんですけど、
みなさんは「ジャンプ」を毎週読んでいるんですよね。
いつ頃からハマり出したんですか。

ということだが、この対談の収録日が04/08/20、デスノ2巻の発売日は04/07/02。もーこんなやつ鼎談に出すなよーと一瞬思った(あ、冲方・乙両氏は読み切りから読んでるらしい)。鼎談の構成としてハマリ2人に素人1人っていうのはベストなのかもしれないが、その素人が西島大介っていうのにがっかりだ。この鼎談でも西島には「批評家としても活躍」という紹介が述べられていて、また自分自身がそのような印象を抱いていたので余計に思うのだが、デスノの評判がクソ高いのはそれこそ連載開始すぐから聞こえることだし、そうでなくとも毎週ジャンプ読んでれば、話題を呼ぶであろうことはすぐわかる。漫画読みなら面白いかどうかはともかくジャンプぐらいチェックしとけよと。一冊、30分もかかんないじゃないか。つーか、ジャンプマガジンサンデーヤンジャンヤンマガスピリッツアフタモーニングビックコミックオリジナル漫サン漫ゴラくらいチェックしろよといいたいところだ。あ、チャンピオン入ってない。IKKIもビームも入ってないなあ。うーむ。じゃあ前言訂正で、ジャンプぐらいチェックしろよでいいです。語りや批評についてはいろんな解釈が人によってあるだろうが、自分としてはやっぱり量を読んでいない人というのはなんかがっかりする。しかもデスノですよ。評判が高いだけでなく、今やっててどこの本屋でもコンビニでも容易に手に入る作品をオンタイムで読んでないって。量読めばいいってわけじゃないし、量と質はイコールじゃないのは重々承知の上ですが、そういう感想を抱いてしまったなあ。