『春高楼の』を読みました

清水義範さんの『春高楼の』を読みました〜。

春高楼の (講談社文庫)
清水 義範
講談社
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相変わらず清水さんの気楽なタッチの文章なんですけれど、気楽さの中にちょっとニヤリとさせる技を忍ばせるっていう例の手口が好きで、いろいろ読んでいます。

この本は、20世紀になったばかりの頃の帝大生を主人公にした青春譚、です。当時の学生の生活や考えは、基本的には100年後の現代とそれほど変わってないんじゃないかと思えるほどに青春を謳歌しております。そういう風に思わせるようにこの本は書かれていますからそりゃそうなんですけれども。プロットはそれほど斬新ではないんですけど、100年前の明治の話をあらゆる面から丹念に調べ上げたであろうその仕事にとにかく感服します。

しかしいろいろ知らない話が出てきて面白かったですよー。「賄い征伐」って知ってますかね、当時の寮や下宿住まいの学生たちの面白イベントだったようです。「ミルクホール」は知ってるでしょう。「タレ義太」「ドースル連」なんて今で言うAKB48とそのファン。花見の中でやるイベント「豚追い」なんて、あっこれは割と今でも世界中で見られるお祭りですかね。樋口淳一郎という主人公は、学生の身分でありながら、当時の楽しいことをいろいろ体験しているんですよねーうらやましい。明治の学生が楽しくやってたイベントは、多分いまの学生がタイムスリップしてやっても楽しいことであろうと、断言してもいいかもしれません。で、まあそういう細かいところでポイントを稼ぎつつ、土井晩翠などの当時の文壇や、幸徳秋水などの当時の労働運動を織り交ぜて、物語に大きな流れを作っていきます。これは大したもんです。なにしろ調べないと書けません。

この作品の時代は明治後期、1901年頃の話ですけれど、実は私も勘違いしていたことがありまして、明治時代ってのは一言で言いますが、45年もあったわけですねー。明治初期と明治後期じゃ、もうお話にならんほどに世の中が変わっているわけで。なにしろ大日本帝国憲法ができたのは明治22年ですよ。じゃあそれまでの御一新からの22年間、どういう政治だったんだと考えると、とにかく政治どころじゃなかったのかもしれないし、gdgdだったんだろうなと。洋館だとかの普段何気なく抱いている明治チックなイメージというのは、明治後期になってようやく固まってきたものなんじゃないでせうか。