訪英日記1 ヒースロー

 今回の訪英は、実は嫁の用事に便乗してのものだったので、けっこう色んな場所を回りました。
 初日は日本を午前中に出て、イギリスのヒースロー空港に着いたのが夕方の4時半ごろ。時差は日本時間マイナス8時間です。
 12時間の禁煙の後、ヒースロー空港で急いで向かった喫煙所でまず一枚目をパチリ。

 さっそくニュー・ジョンストン書体のお出迎えかと思いきや、よく見るとちょっと違う。「トランスポート」という書体みたいです。そういえば、この書体をデザインしたジョック・キニア&マーガレット・カルバート両氏の名前は、『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』でも出てきました。


 次は路線バス乗り場とバスの車内で見つけた正真正銘のニュー・ジョンストンです。


 この日はヒースローで一泊し、翌朝レンタカーを借りてチチェスターへ。
 夕食で頼んだカマンベール・チーズのフライを一口食べて嫁が一言、「不味い」。
 不幸にも、嫁にとってはイギリスで初めて食べた料理がこれでした。

訪英日記2 チチェスター

 イギリス南東部の街チチェスターに着きました。
 まずは街を探索、11世紀に建てられたという大聖堂がそびえていたりと、とても歴史を感じさせる街並みです。

 チチェスター大聖堂にはこんな日時計がありました。朝7時から夕方6時までを示すのかな? 太陽の角度は季節によって変わりそうだけど、どうなんだろう。
 何世紀に作られた時計かはわかりませんが、IVではなくて時計数字のIIIIが使われています。

 道を挟んだ二つの標識。
 設置された時期が違うのか書体が違っていました。


 ホテルにあった手書きのサインです。
 ドアとシャッターを手動で開け閉めするリフト(エレベータ)で、ガタピシいってちょっと怖かった。

 チチェスター大学で修了書をもらう嫁です。
 これが今回の旅の主目的。仕事と勉強の両立、よく頑張りました! パチパチパチ。

 会場にあったサイン。XやRが可愛かったのでパチリ。

 会場にあったゴミ箱。縦組です。

訪英日記3 ブライトン

 ネットで格安予約したブライトンのホテルに着いてみると、びっくりするくらいの高級ホテルでした。
 高級感ただようホテルの看板。ほのかにGoogleロゴのGっぽい。

 高級感ただようホテルの外観。

 高級感ただようホテルの吹き抜け。

 高級感ただよう……このヘンで止めときます。

 ブライトン市内で。

 怪しいニンジャ・グッズ店SAMURAI。
 ブライトンには忍者になるための道場があるみたいです。

 怪しい大人のお店(SMグッズ店?)のロゴ。

 バーの看板。縦組です。

 ブライトンは坂道の多い海辺の観光都市で、こんなところでした。
 ヌーディスト・ビーチもあるらしい。思わず金スペを思い出す。

 大喜びで飛び跳ねている子供たち。


 ここでなんと、ニュー・ジョンストンをデザインした河野英一氏と合流です!
 まずブライトン市街を案内していただきました。ロイヤル・パビリオンはジョージ4世の別荘だったそうで、とにかく何から何まで豪奢な建物でした。

 ブライトンからディッチリングへ移動。車で20分ほどです。
 写真は車窓から見たサウス・ダウンズ丘陵。とても雄大な景色です。

訪英日記4 ディッチリング

 いよいよ今回の私の目的地、エドワード・ジョンストンゆかりの地のディッチリングです。
 とても長閑な田舎の村で、ああ、こんなところで生活できたらな〜なんて思いました。
 まずはジョンストンがかつて住んでいた家。

 もちろん今は別の人が住んでいるのですが、こんなプレートがありました。
 なんとも優雅なローマン体です。

 ジョンストンのお墓も。

 これはエリック・ギルがかつて住んでいた家です。


 ディッチリング・ミュージアムには、ジョンストンやエリック・ギル、ヒラリー・ダグラス・ペプラー(ミュージアムにはペプラーのお孫さんもいらっしゃいました)が、セントドミニク・プレスとして使っていた手引き印刷機がありました。


 ミュージアム内のジョンストン・コーナー。
 真ん中にジョンストンが実際に文字を書いていた机が置かれていました。仕掛け扉の脇に見える楕円形のものは帽子掛けです。カリグラフィに限らず、ジョンストンは木工も得意だったようです。

 多分ジョンストンお手製の仕掛け扉の注意書き。


 次に訪れたのがエドワード・ジョンストン協会会長のジェラルド・フロイス氏のスタジオです。右の人物がフロイス氏。

 フロイス氏の作品です。文字も絵もすべて手書きとは、とても信じられません。


 英語が苦手中の苦手である私なので、会話はほとんど嫁に頼りっぱなしでした。話したいことは頭の中に渦巻いているのですが、言葉がなかなか出てきません。
 特に、フロイスさんに「烏有」の意味を聞かれたときにはパニックでした。「カンブン」「ハンゴ」「イズクンゾ」なんて日本語を連発し、「烏有はNothingだ」なんてムチャクチャなことを言っていたのですが、河野さんと嫁が二人掛かりでちゃんと訳してくれました。

 このあと、河野氏フロイス氏と共に夕食に出かけ、とても美味しいインド料理をごちそうになりました。
 イギリスは食事が不味いなんて言われていますが、そんなことはありません。地元の人は知っている、美味しいお店がちゃんとあるのです。
 お二人に夜遅くまでおつき合いいただいたあと、高速道路を飛ばしてロンドンへ向かいました。
 河野さん、フロイスさん、本当にお世話になりました。ありがとうございました。本が完成したら真っ先にお送りします!

訪英日記5 ロンドン

 翌日、ロンドンの街を散策しました。チチェスターやディッチリングの後なので、空気の悪さがやけに気になります。
 これはオックスフォード・サーカス駅。ニュー・ジョンストンとブルズアイの円形マークが見えます。

 駅の通路に古いサインがあったのでパチリ。ジョンストン・サンズっぽいけどちょっと小文字のx-ハイトが低い気がする。

 ピカデリー・サーカス駅内のブルズアイ。

 パディントン駅にあった文字の上下にリボン付きのブルズアイ。やはりカッコいい。

 ここにもニュー・ジョンストン。非常口のマークは万国共通?

 年代物のサイン。いい味でてます。

 デパートで見つけた日本語。「極度乾燥(しなさい)」ってなんのこっちゃ! これがロンドン子には「Cool」に見えるのだろうか?


 コベント・ガーデンにあるロンドン交通博物館(London Transport Museum)にも行ってきました。

 館内には馬車や電車、バスの実物がたくさん展示してあって、興奮して走り回る子供たちであふれていました。


 地下鉄工事の模型に見入る子供も。とても精巧な作りで、いくら眺めても飽きません。

 もちろんジョンストン書体コーナーもありました。


 夜は昔の会社の同僚ルディさんと食事。フランス料理(かな?)で、メインに嫁はカニ、私はウサギ、ルディさんはハトを注文。ウサギはちょっとクセがありましたが、美味しくいただきました(鶏肉のような、でも少し鮭みたいな味もした)。
 ルディさんはこれまでロンドン在住でしたが、近々故郷のベルギーに帰る予定とのこと。引っ越しの間際なのにつき合ってくれました。

 訪英前にルディさんにお願いしていた「Dryad Lettering Card」(1934年版)も無事入手。これはジョンストンが監修したというレタリング・カードで、日本語版『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』で使えるかと思い、オークションでの入札をお願いしていたのでした。落札価格はなんと3ポンド! 安っ。

 下は帰り際に見つけた看板です。iの点が唐辛子に! ルディさんによると、pilpelは唐辛子を使った料理のことらしい。
 クーパー・ブラックを見ると頭の中でSuperflyの音が鳴り始めるのは私だけか。

 ベーカーストリート駅のタイルはもちろんこれ。


 いよいよ最終日。
 ルディさんに教えてもらったタイポグラフィ関係が充実している古本屋さんCollinge & Clarkに。ショーウィンドウには小型のアダナ印刷機が。
 店内は、カクストン、モリス、タイポグラフィ、プライベート・プレスといった背文字で溢れていました。でも高い本は買えないから端物印刷物が欲しいと言うと、机の下の方からごそごそと出してくれたので、お土産用にいくつか購入しました。


 Collinge & Clarkからキングス・クロス駅に向かう途中に大英図書館がありました。
 こっちの新館には入ったことがないけど、残念ながら今回は時間がなくて素通りです。

 この後、パディントン駅からヒースロー空港に向かい、飛行機で11時間半かけて帰国しました。
 駆け足で今回の訪英を振り返ってみました。
 移動距離が長くて疲れましたが、とても充実した、楽しい旅でした。


 さて、これから仕事モードに切り替え、『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』の追い込みにかかります!