漆間官房副長官(事務)の「記憶にない」発言の下手な嘘


 はっきり言って、これは下手な嘘である。私に言わせれば、漆間氏はこの嘘によって墓穴を掘ったのであり、正しく追及されれば氏にはもはや辞任以外の道はない。


 ところが、追及の仕方がわからない人が少なくないかのようである。まずメディア。漆間があのように言ったことは、要するにメディアの報道の全面否定なのであって、「自民党側は立件できない」というふうに漆間発言を報じたメディアは残らず、漆間の「記憶にない」発言で馬鹿にされ、コケにされ、なめられているのである。なぜメディアは、スクラムを組んで直ちに抗議しないのか。全くの腰抜けだと言わざるをえない。


 ではどう追及すればよいのか。話は簡単である。すなわち、今回の報道はもともとオフレコだったが、そのオフレコ記事での「政府高官」が誰かということが問題になり、そしてこれがついに政府側から明らかにされた。明らかにしたのは河村官房長官である。ところで河村官房長官は、これを明らかにした際、どう言っていたっけ? 朝日新聞の記事によって復習すると次のとおりである。

漆間氏実名公表の官房長官「不適切な発言、厳重に注意」
2009年3月8日18時56分


 河村官房長官は8日のフジテレビとNHKの番組で、西松建設の違法献金事件を巡り「自民党側は立件できない」と発言した政府高官が、官僚トップの漆間(うるま)巌官房副長官であることを明らかにした。河村氏は、漆間氏が元警察庁長官で特に誤解を招きやすいことから「極めて不適切な発言で厳重に注意した」と述べた。


 実名公表の理由について、河村氏は記者団に「オフレコ懇談といえども、話が出た以上は、説明責任を果たさなくてはいけない」と説明。麻生首相も7日に「(捜査情報に基づいた発言は)あり得べきことではないから、はっきりしたほうがいい」と了承したという。


 河村氏によると、漆間氏から「一般論を話した。断定的に捜査の趨勢(すうせい)を語ったものではない。検察の情報を持って言ったのでは断じてない」との報告を受け、公の場での説明を求めたという。漆間氏は9日の定例記者会見で真意を説明する。


 民主党鳩山由紀夫幹事長は「漆間氏は元警察庁長官で一番情報が入りやすい。検察と内閣が通じ合っていたと思わざるを得ない」と批判。同党は9日の参院予算委員会で政府を追及する。

 ここで注目すべきは河村氏の発言とされる部分であり、その中で河村氏は「極めて不適切な発言で厳重に注意した」と述べている。河村氏の言う、漆間氏が行なった「極めて不適切な発言」とは何か? 言うまでもなく、それは「自民党側は立件できない」という発言を指している。つまり、漆間氏が「自民党側は立件できない」と言ったということは、河村官房長官がこれを証言しているのである。


 であるから、漆間氏がその部分の発言を言った「記憶がない」のなら、漆間氏は、河村氏は嘘を言っていると主張しているのと同じである。今度は、河村官房長官が嘘を言った件で批判されねばならず、しかも河村氏は日曜日にわざわざテレビに出てまでしてそう言ったのだから、国民をわざわざ騒がせたその責任は重大であり、辞任に値するだろう。


 実に見やすい道理である。漆間官房副長官とやらは、どこの一流大学をお出になりどういう優秀な官僚だったか、私はとんと存じないが、記憶がないということを言って周囲に迷惑をかけるようではもはや終わり、耄碌じじいである。自分の愚かさを知り、自ら進んで職を辞するのが最善だろう。