静岡の高速バス倉庫 アーカイブ

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snow again -heavenly-


 正月パスで東北へ行きたい、そう前々から思っていたのだが、今までその機会に恵まれる事がなかった。何しろ、一度熱海まで出なくては使えないとか、指定券が取りにくい、とか理由は色々あった。しかし、折角だから出かけてみよう・・・そう思ってネットから指定券を予約し、「ドリーム静岡・浜松号」初便に乗りに行ったとき、神田駅で発券してもらった。
 最初は、新潟から「きらきらうえつ」号で雪見酒を楽しもうと言う行程であったが、羽越本線での特急脱線事故。仕方ないなぁ、と思いながら、鳴子温泉で初温泉を楽しもうと言う事に行程を変更した。そう、結果としては結構面白く、楽しめた訳で。

元旦の静岡発4:40。「サンライズ瀬戸」から正月パスの旅は始まった。「サンライズ瀬戸」には普通車指定席が連結されており、当然ではあるがこの列車も熱海以東では使用可能である。まぁ、静岡熱海間は別途支払をしなくてはならないが。
 列車に乗り込むと、車掌さんはJR西日本の方。ついでに車両もJR西日本所属編成。だが、全てを理解している様子で特急券・乗車券・正月パスを確認すると場所を案内しいてくれた。
 指定された席に座る?と、取りあえず睡魔が襲ってくる。気が付けば平塚あたり。横になっているのも何なので、ロビーコーナーで東京まで過ごす。今年の乗り初めはサンライズ瀬戸、なかなか上々。

 東京駅では、わずか8分の乗換で「Maxやまびこ103号」に乗り込む。2階席と言う事で禁煙車。まぁ、でも、隣が自由席の喫煙車なので問題はない。
 元旦の都心を抜け、関東平野を北に向かって駆け上がる頃、ようやく雲間から初日の出を拝む事ができた。弱い光ではあるが、それでも初日の出は初日の出。今年一年の無事を願いながら列車は東北へ。
 新白河あたりで車窓に雪が目立ちはじめ、福島・仙台と進む毎に雪の白さが目立ってくる。ああ、ようやく東北へ来たのだなぁ、と実感。静岡では考えられない光景だけに、旅心がみなぎってくるのが自分でも分かる。
 仙台でやまびこを降り、一駅だけではあるが「はやて5号」に乗換。

「はやて5号」に乗り込むと、そこには「Maxやまびこ103号」では想像もつかない程のお客さんが。多分、盛岡や八戸へ行くのかなぁと思うわけだが。初めは、東京からこの「はやて5号」に乗ろうと思っていた訳だが、なかなか古川までの通しの指定席が取れなかった。
 しかし、これだけ混んでいるのならば、仙台まで「やまびこ」に乗った方が案外正解だったような気もしないではない。たった10分程度の「はやて」初乗車。機会があれば今度は八戸へ、そして青森や函館にも行ってみたいと思いながら古川で降りる。
 さて、今度は初めての陸羽東線ディーゼルカーでの旅路である。ホームに降りると風が冷たい。

 来た列車は4両編成と思ったより長く、無事に進行方向窓側の席を確保。
 住宅街を抜けると車窓のはまぶしい程の雪景色が広がる。正直、これを見たいがために東北へ来たって言っても過言ではない訳で。真っ白な雪原(多分、田んぼかなんかだとは思うんですが)の中を走る風景を想像しながら、列車は一路目的地である鳴子温泉へ。
 お客さんは自分を含め、一目見ただけで「正月パス」を使っている人が多いような気もしないではないが、地元の人も結構乗っているような気がしないでもない。そう、確かに地域があって、人がいて、そこに列車が走っている。そこにお邪魔させてもらっている訳で。

鳴子温泉駅に到着し、観光案内所で「湯巡りパス」を購入し、早速一カ所目の共同浴場に向かう。
 「早稲田桟敷湯」。元々は早稲田大学の学生がボーリングの実習で温泉を掘り当てた事にその名前は由来すると言う。また、建物そのものも工学部の研究室が設計したと言う事らしい。また、運営しているのはまちづくり会社と言う事で、「地域」と「大学」が連携し、「地域の価値を創造している」と言う事で、自分にとって色々と示唆させられる共同浴場である。
 お湯はそんなに熱くなく、非常に入りやすいお湯だった。年末のコミケ疲れがお湯の中にゆっくりと溶けて行くのを感じた。そう、まさにこの一瞬のために東北へ来た。そう思わせてくれるいいお湯だった。

 続いて「滝の湯」。鳴子温泉の中では一番由緒ある温泉らしく、建物は「早稲田桟敷湯」とは違って非常に風格がある。元旦は無料で入浴できると言う事で、非常に多くの入浴客で賑わっていた。正直どうしようかなぁ、と思ったわけだが、結局入ってしまう。
 熱いお湯が最高。歴史を感じさせる建物を眺めながら入る浴場の空間はまた格別。
 その後、温泉街をぶらぶら歩き、名物の山菜そばを食べてから鳴子温泉駅に戻る。ここから先は峠越えの区間であり、恐らく雪景色も綺麗だろうから、と言う事で駅の売店でビールを買う。
 もう一度、今度はゆっくりと来たいものである。

 13時発の新庄行きは2両編成のワンマンカー。おまけに一人用席が窓側に向ける事ができるようになっていると言う豪華仕様?それこそおいらの知る限りじゃリゾート21位しかないんですが。
 正直に言えば、非常に座りにくいです。ですが、風光明媚な区間の車窓を楽しんで欲しい、と言う心意気はマジ感じる事が出来たので、進行方向に対して約45度の位置にして楽しむ事に。
 真っ白に染まっている風景を本当に楽しむ事ができます。途中の最上駅で対向列車との交換があると言う事で多少停車。車外に出て雪の感触を楽しんでいる自分がそこに居る。滅多に出来ない冬の体験、と言った所だろうか。

 そして、再び新庄に向けて列車は出発。
 雪こそ舞っては居ない曇り空だったのが、雲が切れて青空が望めるようになると、いっそうその空の青に雪の白さが映えてくる。
 正直、こんな光景を見たのはいつ以来だろうか。確かに北海道に出かけた事はあるが、それももう約4年位前の話。一昨年の12月に東京都心部に雪が積もったのを見たこともあるが(写真も撮りに行ったが)、それでもすぐ溶けてしまうような雪だった。それとは全く違う、本当に積もる白い雪。全てを覆い尽くし、春までの眠りに誘うような。そう、眠りの刻に迷い込んだ旅行者、そんなのが自分のそのときの役回りなのかもしれない。

白く染まる吐息 見つめるまなざしに
冷たい手のひらが ぬくもりを感じていた

光のイルミネーション 街のざわめきも
愛しいこの想い 少しでもあなたに伝えて

優しく囁いて 眩しくきらめいて
大事な瞬間
激しく求めて いつまでも二人が
過ごせますように
   From"snow again -heavenly-" ,Album"suite"
   2005, ave;new

唐突に、年末に買ったCDの歌詞を思い出した。
何故か分からないが、唐突に。少しだけ暖かい気持ちになれたような気がする。さぁ、自分のまちへ帰ろう。

 新庄駅
 駅前を少し歩き、雪に触ってみる。冷たい。けれども、その感覚がどこか心地良い。そして歩いてみる。
 滑りそうになる。そこを踏ん張って歩いてみる。寒い。けれども、イヤじゃない。少しだけ見える青空、そして、少しだけ華やかに見える駅前の様子。その様子はどうしても「地方都市」のそれだった。けれども、そこには「暮らし」の匂いがする。そう、それを感じる事が出来た。
 そして、そのまちと東京を結ぶ列車に乗るために駅に戻る。「つばさ124」号。ようやく、この「つばさ」号に初めて乗る事ができる。多少、東北の匂いに名残惜しさを感じながら。また機会があったら来よう。

 駅で買い込んだ地酒で「雪見酒」を楽しみながら東京への道を辿る。そんなうちに、疲れが出てきたのかうとうとし始める。まぁ、そのままでいいや・・・と思いながら一眠りする。
 そして、目が覚めると列車は夕焼けの中を走っていた。そう、夕陽の赤い紫色と宵闇の濃い紫色。鮮やかな夕焼けを眺めながら、列車は東京へと進んでいく。
 板谷峠を越えれば福島。仙台からのMaxやまびこ124号と繋がれば後は東京まで一息。新白河を越える頃には線路の雪も消え、乾いた関東平野に戻ってきた事を感じさせてくれる。そして、大宮、上野と列車は見慣れた光景の中に帰っていく。しかし、まだ旅は終わらない。

 上越新幹線の事故の煽りを喰らい、上野着の段階ですでに何分か遅れていた。取りあえず上野で山手線に乗り換え、東京駅を目指す。
 東京駅からは高速バスで清水を目指して帰るつもりであったが、1930発の静岡行急行には間に合いそうも無い。仕方ないので、東海道線ホームに上がり、目の前にあったグリーン券販売機にSuicaを突っ込んで沼津までのグリーン券を購入し、1930発の「湘南ライナー5号」で小田原まで向かう。そう、大学院に通っていた頃の帰宅のダイヤパターンに乗った訳だ。後は勝手知ったる何とやら。駅のコンビニで買った夕食とお茶で一息つきながら、正月パスの出口である熱海を目指す。

 小田原で乗り換えた普通電車は、最新のE231系だった。実際に「E231系の沼津行」は見た事があるものの、まだ乗った事は無かった。最後にこんな小さなプレゼントを楽しめた。そんな事だけで少し嬉しくなる。
 雪のまちから、温暖のまちへ。そう、思ったよりも長い旅路であった。けれども、そこには色んな人の色んな想いが溢れている。
 そんな色んな想いを感じることが出来る旅に、今年はどれだけ出かける事ができるのだろうか。

 沼津から乗った普通電車、そう、そこには「日常」があった。「日常」と「非日常」。そんな中を行ったり来たりする2006年が、静かに始まった。
【乗車リスト】
静岡0440-東京0708 特急「サンライズ瀬戸JR西日本285系・出雲電車区
東京0716-仙台0930 新幹線「Maxやまびこ103号」
仙台0943-古川0956 新幹線「はやて5号」
古川1005-鳴子温泉1050 陸羽東線普通4725D JR東日本キハ110系・小牛田運輸区
鳴子温泉1300-新庄1403 陸羽東線普通727D  JR東日本キハ110系・小牛田運輸区
新庄1527-上野1908頃? 新幹線「つばさ124号」
上野1918-東京1924 山手線 JR東日本E231系東京総合車両センター
東京1930-小田原2043 「湘南ライナー5号」 JR東日本185系田町車両センター
小田原2047-沼津2132 東海道線普通333M JR東日本E231系国府津車両センター
沼津2134-草薙2220 東海道線(東海)普通833M JR東海211系5000番台・静岡車両区