陰陽師

 安城市歴史博物館で「陰陽師 安倍晴明」展が開催中だ。
http://hicbc.com/news/detail.asp?ref=yh&id=00044D70
 あの荒俣宏さんも行かれたんですぞ。展示室の中の妖(あやかし)たちも、妖怪の本家の登場にびっくりしていたとか、いなかったとか(笑)。

 ワシャももちろん行ってきた。いやーぁなかなかおもしろかったですぞ。
 まず、安倍晴明である。小説、映画、ドラマ、コミックなどでは若くてクールな二枚目として描かれているが、実際に晴明が歴史上に登場してくるのは40を過ぎてからだった。平安時代の40歳だから、もう初老と言っていい。その時が天文得業生(てんもんとくごうしょう)という立場だった。上に天文博士従七位上)がいたから、その助手のようなものでしょうね。
 晴明が天文博士になるのは52歳の時で、このあたりから文献に頻繁に登場することになる。まず「小右記」(しょうゆうき)という公家日記には985年に現れる。忌ごとがあって、それを行うのに日がいいか悪いかを占うということを陰陽師がやるわけだ。そもそも平安時代で科学的なことはなにも解らない。闇は深く物の怪はそこここの辻や河原に潜んでいた頃だから、何事につけても陰陽師の言うとおりにしないと障りがあるということですな。
 晴明は「小右記」の著者の藤原実資(さねすけ)の怪異アドバイザーだった。この日記に書かれた頃は、晴明65歳だからけっこうジジイになっている。今なら80過ぎといったところか。
「方違え」を指示したりとか「泰山府君祭」を主催したり、忙しい日常を過ごしていたことが覗える。貴族がそこにいて、邪な思いにとらわれる時、物の怪は必ず現れる。六条御息所の生霊が、葵上の寝所を襲ったようにね……。
 闇の深い平安時代のことである。晴明の出番は確実に多かった。

 陰陽師について、荒俣さんは平成14年に『陰陽師』(集英社新書)を上梓されている。専門家中の専門家を歴史博物館にお呼びしてしまったんだね。
 でも、楽しそうにご覧になられ、学芸員にもしきりに質問をされていたようだから、ホッとしている。

 現代の妖怪たちが蠢きだした。鬼謀の大妖怪「小池婆」(こいけばばあ)が中級妖怪をいじめている。
 おっと「小池婆」ってワルシャワが言い出したわけではないですぞ。水木しげる『日本妖怪大全』(講談社+α文庫)に載っている歴とした本物の妖怪なのだ。
 それも、野をうろつくオオカミどもに頼りにされている老猫で、木に登った人間をつかまえて喰らうためにオオカミたちに呼ばれて登場する。樹が高いのでオオカミたちの作ったオオカミピラミッドの頂点に登って人間に害を成そうとするが、間一髪、人間の反撃と夜明けが早かったので助かったという話。
 ワルシャワはぜんぜん話を創作していませんよ。そう書いてあるんだから仕方がない。「小池婆」、本当に雲州松江にいたんだから(笑)。