蛇崩れ(じゃくずれ)

 今朝の天声人語もつまらない。まず冒頭に磯田道史さんの著作から「蛇崩れ」という言葉を引いてくる。それはいい。しかしそこから深掘りをせず、磯田さんをマクラに使うだけで、現状の災害を写すことに専念をする。そんなことは国民はNHKの災害放送で散っているし、朝日新聞の駄コラムの上の欄にもトップででかでかと書いてあるじゃないか。
 駄コラム「結」の文章の書き出しである。《日本列島に重なるかのような太い雨雲は、この国にまとわりついた大蛇にも思える。》って、誰でもそう思うようなことを、日本を代表するコラムニスト(笑)が得々と書くんじゃない(怒)。そしてあまりに貧しい文末はこうだ。《そのまま東へ這って進むのか。警戒は緩められない。》あたりまえであろう。朝から脱力感に襲われた。

 駄コラムはどうでもいい。それよりも重要なことを記しておきたい。ワシャも磯田さんの著作『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)から話を拡げていく。磯田さんはそこで2014年8月の広島市安佐南地区で発生した大規模な土砂崩れのことを取り上げ、かつてそこが「蛇落地」(じゃらくち)と呼ばれていたことを知る。「蛇落地」すなわち「土砂崩れ発生地」のことであった。江戸期に「上楽寺」(じょうらくじ)という上品な地名に読み替えられているが、そこは土砂崩壊危険地帯であった。
 そういった意味からも、何人の方が亡くなられたという情報も必要ではあろうが、詳細な地名を挙げて、どこでどういった災害が発生したかということを報道してもらいたい。そうすれば同様の地名を持つ川沿い、急傾斜地などに住む人はさらに警戒するであろう。

 愛知県内の蛇落系の地名をいくつか挙げておきますね。知多郡阿久比町岡崎市小豆坂、犬山市入鹿、倉曽洞、西尾市吉良、豊田市足助などなど。これらは、急傾斜地、崩落地、水の集中する場所などという意味があるのだそうな。

 おそらく今回の集中豪雨で被害に遭われた地域の地名にもそういった先人の知恵が秘められている思う。
 歴史に学ぶというのは、そういった観点もある。