ヒーローになる時、それは今じゃない

フィギュアスケート羽生結弦選手が、試合前の練習中に中国の選手と衝突して負傷したものの、傷口に包帯と絆創膏を巻いて強行出場したことが話題になっています。



コーチのブライアン・オーサー氏は「今はヒーローになる時ではない、と言い聞かせたが、結弦の決意は固かった。彼の目を見て大丈夫だと思ったし、普通に話せていたので彼の判断を尊重した」と話したそうですが、ちょっと甲斐よしひろが入った言い回しにも見えますね。

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で、あごを7針、右側頭部を3針縫ったという結弦きゅんは車椅子に乗って緊急帰国し、精密検査を受けるそうですが、脳震盪の疑いが濃いにも関わらず強行出場したことに対し、各方面から批判が出ています。そりゃ本人は「大丈夫だ、やらせてくれ」と言うでしょうけど、こういうときはコーチとかが止めなきゃいかんですよね。


最近は、アメフトやラグビーなど激しいコンタクトを伴うスポーツでは、脳震盪を起こした選手はすぐ休養させるようになりました。
柔道では、教育現場で相次いだ事故により、安全対策の充実が急務となっています。それを踏まえた今回の件への批判について、くわしくはこちらを参照のこと。

まあ、フィギュアスケートはコンタクトスポーツではないので、脳震盪に対処するルールやガイドラインがそもそも想定されていなかったのかもしれませんけど、怪我を押して出場することを美談扱いする風潮はよくないですねえ。


脳震盪といえば、最近では新日本プロレスDDT飯伏幸太が、7月4日の後楽園ホールで開催されたIWGPジュニアの防衛戦において、KUSHIDAのキックで脳震盪を起こしてなす術もなく敗れ、そのダメージが深刻だったため一ヶ月の欠場を申し渡されたことがありました。飯伏はこれでG1クライマックスも全欠場する事態となり、キャリア的にはもったいないことでしたが、身体のほうがだいじですからねえ。新日本プロレスでは、2000年にも福田雅一が硬膜下血腫から復帰してすぐに死亡したリング禍を経験していますし、レスラーの脳の扱いには慎重にもなるのでしょう。

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脳震盪を起こした選手が、回復する前に転倒などしてまた頭に衝撃を受けた場合は、セカンドインパクトと呼ばれる重篤な損傷につながる危険もあります。サブカルに足を突っ込んだ人だったら、セカンドインパクトという語感だけでその恐ろしさは感覚的に理解できると思います。

ちなみに、結弦きゅんは「シンジ君に似ている」と話題になったこともあり、緒方恵美コラ画像を絶賛したものでした。




ボクシングの名伯楽として知られたエディ・タウンゼントは、選手がピンチになると誰よりも早くタオルを投げる、といわれていました。

オーケー!ボーイ―エディさんからの伝言

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指導者として招かれたジムに竹刀が置いてあるのを見て「アレ捨てないとボク教えないよ! リングの上で叩かれて、リングを降りてまた叩かれるの? ボクはハートのラブで教えるの」と憤慨したというエディさんは、タオルを投げるのが早いと言われても「ボクシング辞めたアトの人生の方が長いのヨ。誰がそのボクサーの面倒ヲ見てくれるの? 無事に家に帰シテあげるのもワタシの仕事ネ」と語っていたといいます。


結弦きゅんのコーチであるブライアンさんに、エディさんのような「ハートのラブ」がなかったわけではなく、頭を打つことの怖さを認識していないだけだと思うので、これからはこういう風潮が改まることを願いたいものです。