日々記 観劇別館 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017-04-23

『王家の紋章』感想(2017.4.22マチネ)

キャスト:
メンフィス=浦井健治 キャロル新妻聖子 イズミル=宮野真守 ライアン=伊礼彼方 ミタムン=愛加あゆ ナフテラ=出雲綾 ルカ=矢田悠祐 ウナス=木暮真一郎 アイシス濱田めぐみ イムホテップ=山口祐一郎

王家の紋章』再演を、今回は聖子キャロルで観てまいりました。

手持ちのチケットは今の所これが最後です。もう一度観るかどうかは定かではありません。

前回のブログに再演版の演出について文句ばかり書いていますが、今回改めて観て、

「初演版で削られた箇所を初めからなかったものとして、まっさらな気持ちで観れば、意外と素直に楽しめるかも」

と思い直しました。

観たものの感想や考察を書こうと思いますが、あまり気合いが入っておりません。

聞く所によれば2.5次元ミュージカル界(そんなものがあるのか)では「板が出るまでネタバレ厳禁」という掟があるらしいですが、そこまで書く気力が湧いてこない……。

とは言え、DVDは帝劇にて購入を予約しました。もう一度観たい、というよりは今後の舞台作品の映像化の継続に繋がれば、という思いから、投資のつもりで2バージョン予約しています。

では、以下、感想+考察にまいります。

前回初めて佐江キャロルを観て、カワイイ! 声も出ている! と思ったのですが、今回聖子キャロルを観たら、声の伸びが遙かに尋常ではありませんでした。

別に歌唱力だけで評価するわけではなく、聖子キャロルの方が気の強さにプラスしてキャロルの必死さや面倒くささの含有率が高いような気がして、個人的には好みです。さすが「王族」。

宮野イズミルは2回目でしたが、今回はあまり「うぜえ」とは思いませんでした。既に公演日程の中日が近かったためか、何と言うか、声の出し方とか、表現が洗練されてきたような印象です。

イズミルがキャロルに惹かれたタイミングが分かりづらいとか、イズミルの歌唱の出番が続きすぎるとか、全く役者さん方の責任ではない要素において、心境の変化の色づけをしていくのは本当大変だろうと思います。

ついでに、あのずるずるした衣裳で殺陣をこなすのもかなり苦労が多いのではないかと……お疲れ様です。

それにしても全体の物語の中で、アイシスとライアンとイズミルは本当に報われないですね。節目節目の出番も多くてこんなに頑張っているのに、弟は結婚は政治的駆け引きだから思い入れも何もない、みたいなことを言っておいてナイルの娘に走るわ、妹はやっと発見されたと思ったらまた失踪するわ(しかも存在だけは伝わってくる!)、戦争は撤退を強いられて思い人が手に入る見込みもないわで。

特に2幕で、せっかく目の前で眼福・耳福なデュエットやカルテット披露されているのに、繰り広げられるストーリーは叶わぬ愛や末端の兵士の死、という鬱展開なのは結構辛いです。

これは別に、2幕のカルテットで自分が眠ってしまった言い訳ではありません(^_^;)。でも本当に疲れてしまったのです。

そんな中で、宰相イムホテップ様が、出番が少なくなったにもかかわらず、ダイソンの掃除機並みの吸引力、もとい求心力を発揮し、しかも癒しパワーまで発揮していたのは救いです。

Twitterでどなたかも指摘されていましたが、最初の登場で大階段を老人らしくえっちらおっちらと杖を突いてゆっくり下りてくる姿とか、その後王様と再会して本当に嬉しそうな姿とか、終盤で愛を確かめ合っているカップルを横目に見て実に嬉しそうにしている姿とか、あとカーテンコールで隣のライアン兄さんにちょっかいを出しているさまとか、色々と眼福な癒し要素はございます。

何だか「エジプトの知恵」というよりは「エジプトの癒し」になっているような気がするのです。

なお前回、エンディングを変更するなら、いっそもっと婚礼衣装などでゴージャスにならないものか? という趣旨のことを書きましたが、今回観て、

「最後にメンフィスが羽根背負ってポーズを決めながら大階段を下りてきて、キャロルと踊るなどすれば良かったかも。ついでにイズミルとミタムン(あるいはイズミルとルカでも可)がデュエットダンスを踊って、そして全員集合したら宰相様とアイシス様とライアン兄さんとウナスとセチがシャンシャンを持って……」

と不謹慎なことを考えてしまいましたすみません(^_^;)。

というわけで消化不良気味ですが、この辺で失礼いたします。

2017-04-11

『王家の紋章』再演初日感想(2017.4.8ソワレ)

キャスト:
メンフィス=浦井健治 キャロル宮澤佐江 イズミル=宮野真守 ライアン=伊礼彼方 ミタムン=愛加あゆ ナフテラ=出雲綾 ルカ=矢田悠祐 ウナス=木暮真一郎 アイシス濱田めぐみ イムホテップ=山口祐一郎

めでたく再演と相成りました『王家の紋章』の初日公演を見てまいりました。

しかし、ちょっと困惑しています。何故なら、再演に付き物の脚本の手直しや演出テコ入れにより、物語の色合いが全く別物になっていたためです。

それでも1幕を見終えた時には、あれ? あのシーンもこのシーンもカットされた? と思いながらも、余分な細部を刈り込むことによりストーリーにメリハリが付いて分かりやすくなった、とそれなりに評価していました。

しかし。2幕を観た後には、
「刈り込み過ぎてつるっつるになってしまったんじゃないか、これ」
と当惑する自分がおりました。

カットされたシーンは、例えばメンフィスがキャロルに「腕ポキ」する場面。

キャロルについては、「私は未来から来たのだから歴史を変えてはいけない」などと逡巡して散々「面倒くさい女」ぶりを発揮する場面が細かく削られて、一途さや気の強さを発揮する局面が増えたような印象です。

あとセチ母子とキャロルの絡む場面も減っていたように思います。

もちろん場面の整理と料理のし直しで良くなったと感じた所もありましたし、ここ、残してくれてありがとう! と思った場面もありました。

前者の例は、1幕序盤のライアン兄さんの居方。エジプトとは異なる地のオフィスビルにいることがビジュアル面で分かりやすくなりました。それからルカの工作活動。彼が2幕のキャロル拉致に至るまでいかに動いたかが、初演より明確に伝わるようになっていたと思います。

後者の例は、2幕で戦闘に向かう前のメンフィスのソロと、セチのダンスとのコラボです。立場は違えど「キャロルを救いたい」という思いは一緒で、しかし対照的な結末を迎える2人の共演場面を残してくれたことは評価したいです。

残念なのは、メインのカップル+イズミルの3人以外の人物像の描写が全体に薄めになってしまったことです。

特に宰相様。確か初演では、戦いに赴く主君や軍勢に、初期の戦いの目的を見失うな、という言葉を贈っていた筈ですが、その場面が削られていました。

それから、王家には新たな血を加えるべきと考える宰相様が姉弟婚にこだわるアイシス様に苦言を呈する場面もカットされていました。

この対話場面なしに宰相様が嫉妬するアイシス様を眺めて、

アイシス様も恋をすると愚かになられる」

と嘆くので、宰相様がいくらキャロルの才覚を買っているとしても、何故アイシス様とメンフィスの結婚に反対するのかが見えづらくなってしまった気がします。

2人の対話の場面があってこそ、終盤の宰相様の祝婚歌が深みを持って伝わっていたと思うのですが……。

恐らく新しい演出の意図としては、初演のように多彩な登場人物にスポットを当てて見せ場を作るのではなく、メンフィスとキャロル恋物語を太いうねりとして見せるために、メリハリを付ける方向性に持って行こうとしているのだろうと分かります。

ただ、その割には2幕でイズミルのソロが延々3曲分ぐらい続く場面は初演からそのままなのですね(^_^;)。

エジプトに妹を惨殺されたイズミルの恨みの深さを示すことは、その後のキャロルにまつわる心境の変化と対比させる意味で大事とは思います。それでも、ちょっとイズミルに費やす尺が長すぎる、と感じました。

ラストに追加されたメンフィス&キャロルのデュエットも……良い曲なのですが、ええと、何か存在感が薄いような?

金ピカの婚礼衣装をこのラストナンバーで身に着けていないのも謎です。そして何故か婚礼衣装はカーテンコールで着てきます(^_^;)。

私、オギーさんの演出は3、4作ぐらいしか観ていないのですが、多分彼の演出の真骨頂は、割り切れそうで割り切れない、観客を突き放して「え? これで終わり?」と戸惑わせつつしっかり余韻を残す所にあると考えています。

ところが今回の『王家』では、恐らくは若い世代に伝わりやすいよう、枝葉末節の綺麗な剪定を試みるあまり、本来の持ち味である、観た者の心にこびり付く澱のようなものが薄まってしまったように思うのです。

とは言え、観に行く予定はありませんが、大阪公演ではまた少し変わるかも知れませんね。

とりあえず、帝劇でもう一度観る予定がありますので、その際に少しでも印象が改善されることを期待します。

2017-03-19

『クリエ・ミュージカル・コレクションIII』(2017.2.9、2017.2.25)セットリスト

こんにちは。大変に今更感がありますが、備忘録(主に自分の後からの反芻用(^_^))として『クリコレIII』のセットリストを記しておきます。
改めて見直すと、このキャストとセットリストで1ヶ月近く通し興行だなんて、本当ゴージャスで贅沢で素敵です。「反芻」と書きましたが本当に思い出すだけで何年も心の栄養補給ができそうに思います。
なお誠に残念ながら、最終週のセットだけは聴けておりません。観たかったし聴きたかったなあ……。

  1. エドウィン・ドルードの謎』より「ようこそ」(山口祐一郎&全キャスト)
  2. 三銃士』より「帰ってきたミレディ」(瀬奈じゅん
  3. 風と共に去りぬ』より「葉巻き」(岡田浩暉&男性アンサンブル)
  4. 『サンセット大通り』より「As If We Never Said Goodbye」(保坂知寿
  5. 『CHESS』より「アンセム」(田代万里生&アンサンブル)
  6. マイ・フェア・レディ』より「ラブリー」(大塚千弘&男性アンサンブル)
  7. 『She Loves Me』より「好きになってくれるかしら」(涼風真世
  8. 『42nd Street』より「42nd Street」(吉野圭吾&アンサンブル)
  9. ウエストサイド物語』より「マリア」(今拓哉
  10. ローマの休日』より「ローマの休日」(大塚千弘田代万里生
  11. 『パイレート・クイーン』より「フィナーレ」(保坂知寿山口祐一郎
  12. 『シラノ』より「栄光に向かって」(岡田浩暉&今拓哉田代万里生&吉野圭吾&男性アンサンブル)
  13. 『エニシング・ゴーズ』より「フレンドシップ」(瀬奈じゅん&吉野圭吾)
  14. モンテ・クリスト伯』より「地獄に堕ちろ!」(今拓哉田代万里生
  15. 『グッバイ・ガール』より「I Think I Can Play This Part」(岡田浩暉)
  16. レ・ミゼラブル』より「One Day More」(全員) (Act1終了)
  17. 『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』より「さあ、声を出せ!」(大塚千弘涼風真世瀬奈じゅん保坂知寿&女性アンサンブル)
  18. 『シラノ』より「独りで」(田代万里生
  19. モーツァルト!』より「終わりのない音楽」(大塚千弘今拓哉
  20. 『パイレート・クイーン』より「ひとを愛する女こそ」(涼風真世保坂知寿
  21. エリザベート』より「最後のダンス」(山口祐一郎
  22. 『ニューヨークに行きたい!!』より「地獄からのメッセージ」(アンサンブル)
  23. アンナ・カレーニナ』より「待ち焦がれて」(瀬奈じゅん&岡田浩暉)
  24. ミー&マイガール』より「ミー&マイガール」(大塚千弘&吉野圭吾)
  25. エドウィン・ドルードの謎』より「おかしくなる」(今拓哉
  26. 『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』より「天国へ行かせて」(瀬奈じゅん&アンサンブル)
  27. ロミオ&ジュリエット』より「エメ」(涼風真世&岡田浩暉&アンサンブル)
  28. 『サンセット大通り』より「サンセット大通り」(吉野圭吾)
  29. レベッカ』より「夢に見るマンダレイ」(大塚千弘&アンサンブル)
  30. レベッカ』より「何者にも負けない」(涼風真世
  31. レベッカ』より「レベッカI」(保坂知寿
  32. エリザベート』より「私が踊る時」(瀬奈じゅん山口祐一郎)(2月9日)*1/『エリザベート』より「闇が広がる」(田代万里生山口祐一郎)(2月25日)*2 *3
  33. 『ニューヨークに行きたい!!』より「未来は今、始まる」(大塚千弘涼風真世瀬奈じゅん保坂知寿・岡田浩暉・今拓哉田代万里生・吉野圭吾・アンサンブル)
  34. オペラ座の怪人』より「Music of the Night」(山口祐一郎
  35. ミー&マイガール』より「ランベス・ウォーク」(全員)

*1:2月9日〜16日まで同曲(公式サイトより)

*2:2月17日〜25日まで同曲(公式サイトより)

*3:未見ですが2月26日〜3月5日(千穐楽)までは「私が踊る時」(涼風真世山口祐一郎)であったと思われます。(曲目&歌い手は公式サイトより)

2017-02-26

『クリエ・ミュージカル・コレクションIII』感想(2017.2.25マチネ)

キャスト:
大塚千弘 涼風真世 瀬奈じゅん 保坂知寿 岡田浩暉 今拓哉 田代万里生 吉野圭吾 山口祐一郎 木内健人 福永悠二 松谷嵐 横沢健司 天野朋子 島田彩 堤梨菜 橋本由希子

再びクリコレIIIを観てまいりました。杖なしでクリエまで行けるようになった体力に感謝!

今のところ、これがマイ楽の予定です。ああ、山口×涼風ペアの「私が踊る時」も聴きたかったなあ……。

今回の日直さんは涼風さんでした。

以下、自分の脳みそだけでは追いつかなかったので、Twitterフォロワーさんから教えていただいた内容で補完しまくった日直レポートです。

黒いレースのロングドレスで登場した涼風さんの「コレクション」なナンバーは、22年前に出演した『シー・ラブズ・ミー』の「好きになってくれるかしら」とのことでした。

演目の話題に進むかと思いきや、「22年前」にちなんで袖から知寿さん、千弘ちゃん、瀬奈さん(あさこちゃーん! と呼んでました(^_^))を呼び出し、お三方に「22年前は何をしてましたか?」というインタビューを開始。

まず、知寿さんは、22年前っていつだっけ? としばらく数えて遡った後に、22年前は申し訳なく思いながら子供の役をやってました! と回答されていました。涼風さんが「ショートパンツをはいた役?」と訊くと、はい、と肯定

私は四季時代の演目は観ていないのですが、恐らく『夢から醒めた夢』辺りのことと思われます。でも同時に子供のいるお母さん役もやってました! とご回答。『マンマミーア!』かな? と思いましたが、複数の方から22年前なら『アスペクツ・オブ・ラブ』のことだろう、と教えていただきました。

アスペクツ・オブ・ラブ』はロイド・ウェバー作曲のミュージカル、四季石丸幹二さんや堀内敬子さんも共演されていたとのことで、ううん、これは観たかった! CDも出ているようですが、やはり生舞台で。

続いて千弘ちゃんは22年前は小学2年で徳島でハナ垂らして棒振り回して遊んでました! とご回答。知寿さんのほか、瀬奈さんも「22年前」を思い出すには一瞬考え込んでいましたが、千弘ちゃんの場合はすんなり「22年前の年齢」が出てきてました(^_^)。

小2でした、を受けて涼風さんが、もう携帯はあったの? という問いを投げかけると、ポケベルがありました、と千弘ちゃんが返答。その答えを聞いて何故こちらも安堵してしまうのか……。

あさこちゃーん、こと瀬奈さんは、私寅年生まれで、他2人も寅なんですよ! と話を逸らすも先輩に引き戻され、22年前は「男性」でした、とご回答。宝塚の研3か研4辺りだったそうです。袖から突如男性アンサンブルの木内健人くん(観劇直後、お名前を失念してました。すみません)が呼び出され「当時はこのくらいのカッコよさで」と突然のサンプル化。さぞ驚かれたことと思います。

木内くんにも22年前は? の問いが振られ、5歳でした、と回答されていました。若い! なお瀬奈さん、当時は「このくらい」でしたが、その後頑張ってもっとカッコよくなったそうです(^_^)。

なお肝心の日直さんの思い出は、時間がないので、とほぼ割愛されていました。ただし今回の『シー・ラブズ・ミー』の曲のお衣装は当時の物を着用、とのコメントが。さすが妖精、何と素晴らしい体型維持! と驚愕しておりました。ちなみに後から登場したお召し物は綺麗なピンクのコートで、全く違和感のない可愛らしさでした。細身のコートって二の腕や背に肉が付くと意外と入らなくなるんですよね(自虐)。

ちなみに同日ソワレの日直トークでは「22年前・男性キャスト編」が繰り広げられ、何と山口さんも登壇されたとか。もちろんあの方が易々と22年前を語るわけがありませんが、なかなか楽しい漫才になっていたようです。

日直トーク終了後の舞台本番ですが、セットリストは一曲を除いては初日と一緒であったと思います。

唯一異なっていたのは2幕の一曲、山口トートと万里生ルドルフによる「闇が広がる」。私、この2人が出演する『エリザベート』の本番舞台を観ましたが、その時よりも今回のデュエットの方が格段に素晴らしいと思いました。やはり万里生くんの深みが増したのでしょうか。

今回全体を通して改めて感じたのは、キャスト全員の歌やダンスに有無を言わせない説得力があるという点です。

何だかんだでキャストの皆さま各々には得意分野というのがあると思います。例えば圭吾さんや瀬奈さんのダンスや万里生くんの豊かな声量と言った技巧的な面のほか、岡田さんはどちらかと言えば白みのある歌に、今さんは黒みのある歌に持ち味が出るなど、そういうものも含めまして。

今回に限らずクリコレでは、皆さま「得意分野」の楽曲のみならず「そうでない」楽曲にも挑んでいますが、そうした「そうでない」楽曲においても自然と拍手を送りたくなる素晴らしい芸で魅せてくれる所に、歴戦のプロフェッショナルの持つ説得力を見たように思います。

しかし、その説得力を持ってしても、1幕ラストのあの「還暦アンジョルラス」は面白過ぎるわけですが(^_^;)。両脇に元アンジョルラス2名を従え、生き生きと「ワン・デイ・モア」を歌い上げるあの勇姿と満面の笑みとを、私は生涯の宝物として思い出の中で大事にしていくつもりです。

アンコールのあれも……もう言ってしまって良いですね。

仮面のない山口ファントムの登場。

今回、後方席だったのを良いことに、終始オペラグラスでガン見しておりました。前方席でじっと見るのはさすがに恥ずかしかったので(^_^;)。

長いこと遠く離れていたファントムが山口さんに降りてきている。あるいはイタコのように主体的に降ろしている。いずれであるかは不明ですが、とにかくファントムが、そして彼が執心するあの少女が、確かにそこに降臨していました。

天賦の才を持ちながらも愛を与えられず化け物と恐れられ、孤独で閉じ込められて歪み、怪人として人殺しに走る人物。その人物をかつて演じた、ファントムと異なり世界で色々な物を見て、愛も嘲笑も、人生の頂点も、そして演じる場を失う絶望も体験して60年を生きた男。その60歳の彼が再びファントムを歌い演じるのが、本当味わい深いし感慨深いしで、とてもたまらない心持ちに陥りました。

このファントムもまた、私の生涯の美しい宝物になると確信しています。

まだまだ思い出し感想が書けそうに思いますが、本日はひとまずここまでといたします。長々とお付き合いいただきありがとうございました。

2017-02-19

『ビッグ・フィッシュ』感想(2017.2.18マチネ)

キャスト:
エドワード・ブルーム=川平慈英 ウィル・ブルーム=浦井健治 サンドラ・ブルーム=霧矢大夢 ジョセフィーン・ブルーム=赤根那奈 ドン・プライス藤井隆 魔女=JKim カール=深見元基 ヤング・ウィル=りょうた ジェニー・ヒル=鈴木蘭々 エーモス・キャロウェイ=ROLLY

日生劇場で上演中の『ビッグ・フィッシュ』を観てまいりました。

元はティム・バートンの映画で、映画の脚本家がこのミュージカルの脚本も手がけたとのことです。

若き日の壮大で不思議な冒険譚を一人息子に語り続けるが、どこかで息子と正面から向き合おうとしないエドワード。いつしか父親の言葉に耳を傾けることを止め、お喋りでいい加減な父親として疎む息子のウィルウィルの披露宴でエドワードは息子との約束を破ってしまい、大げんかになるが、その後エドワードと妻サンドラが隠していた病がウィルと新妻ジョセフィーンの知るところとなったのをきっかけに、ウィル父親の真実を何も知らないことに気づいて……というのが、この舞台のストーリーです。

妖しげに予言を告げる魔女、恐ろしげだが心優しい大男、あこぎだが意外と誠実な狼男。舞台上に描き出されるエドワードの冒険譚は、ミステリアスで美しくもどこか見世物小屋のようにごてごてと飾り立てられた作りもの感を醸し出しています。とりわけ、キッチュな幻想の極みであるサーカスの光景と、そこで歌い踊る少女サンドラと双子(?)の少女の美しくもチープな可愛らしさよ。

「パパの話に登場する美女は、いつもママなんだ」という2幕でのウィルの言葉のとおり、踊るサンドラが夢想の産物なのか、実際にエドワードが目にしたものなのかは分かりません。ただ、全くの作りものではなく、一片の真実が含まれていたのだろうと思います。

エドワードは夢の冒険譚ばかりを語り続け、肝心の真実は一言も話さない。ウィルと同じく、途中までは私もそう思っていました。

しかし、エドワードの冒険譚にはある重要な真実のヒントが隠されていました。ウィルが真実を辿る2幕の展開が、とてもドラマティックで、それまでのキッチュなファンタジー場面が見事に現実へと繋がって行きます。

この真実へウィルを誘導するキーマンの役割を果たすのが、蘭々さん演じるジェニーです。

失われて二度と戻ることのない、大切な宝石。しかし希望を持ち新天地を得ることにより守られた、かけがえのない大事なもの。たくさんの美しい幻想に包まれ守られてきた、隠された財宝。それらの存在をウィルに伝える重要な人物を、蘭々さんが好演されていました。2幕の3分の1以上は、彼女がかっ攫っていったように思います。

そして、真実を手に入れたウィルは、かつてたくさんの夢の冒険譚を聞いた者として、父親の若き日に魔女が予言した光景を実現させるために最初で最後の手助けをします。

エドワードからウィルへ、ウィルからその息子へと、バトンリレーのように繋がれて行く夢。この辺り、ちょっと『フィールド・オブ・ドリームス』的だと思いました。

舞台上の空間に、何度かホログラフの巨大な魚(ビッグ・フィッシュ)がゆったりと泳ぐ場面がありましたが、物語の冒頭で見たビッグ・フィッシュと、ラストに泳ぐビッグ・フィッシュとでは、全く印象が異なります。夢を抱いた者の肉体が消滅しても、それ(夢)を受け継ぐ者がいる限りはビッグ・フィッシュはどこまでも泳いでいくのです。

振り返るとこのお芝居、実はミュージカルでなくても良いのかも、という気もする一方で、慈英さんの地に足の付いたペーソス溢れる歌声と、少年期から老年期まで、様々な時代を瞬時に行き来する快活でポジティブな演技、そして浦井くんの要所要所を締める力強くも温かい歌声と徐々に解けて行く心の表現とがなくてはならないものとも感じたので、やはりミュージカルである必然性はあったのだろうと考えています。

そして、舞台上に表現されるキッチュ香り漂うファンタジー場面や、対照的に温かい光に満ちながら沈み行くエドワードの故郷、透明感溢れる湖水を湛えたウィルの故郷の美しさといった場面。これらの場面演出は見どころのひとつになっています。

最後に、あまりこういう話を身の回りの現実と結びつけるのは野暮かも知れませんが、日本ではここ数年、災害や事故により故郷の風景が失われる悲しい出来事が続いています。

ビッグ・フィッシュ』のエピソード災害でも事故でもないので、単純に一緒くたにできるものではないかも知れませんが、故郷を失っても人は、別の居場所を見つけてでも、優しく輝く宝石を心に抱いて生きていく力を持っているのだ。そう思わせてくれる、哀しくも温かい、人が夢を抱いて生きる力を信じさせてくれるミュージカルだと思いました。

蛇足な付け足し。浦井くんと子供の並びって、実にしっくりと似合うと思います(^_^)。