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2017-11-24

『レディ・ベス』帝劇千穐楽感想(2017.11.18マチネ)

キャスト:レディ・ベス=平野綾 ロビン・ブレイク=加藤和樹 メアリー・チューダー=吉沢梨絵 フェリペ=古川雄大 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 キャット・アシュリー=涼風真世 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=斉藤栄万 リトル・メアリー=石倉雫

『レディ・ベス』帝劇千穐楽を観てまいりました。

……が! 足腰の痛みが未だに良くならず、前夜も眠りが浅かったため観劇中は睡魔と戦い、しかも痛み止めが上手く効いてくれない上に、休憩時間の化粧室待機列で脚の痛みが悪化し……ということであまり舞台に集中できず。

以下はその状況下でもなおかつ記憶に留まってくれた感想です。

ほぼTwitterに書いたことと被っています。すみません。

まず、何と言ってもアスカム先生。

何だか全体的にベスへの向き合い方がお父さんモードになっていました。以前はもっと、自分が見込んだ教え子に期待する気持ちの強い先生でしたが、いつのまにか、台詞や表情はもちろん、歌い方までが慈父のそれに変化していて驚かされました。

特に「王国が現れる」。私もあの温かい笑顔と絶妙な間合いで激励されたい、と真剣に思いました。相手の平野ベスの表情が曲の間に本当に「ぱあっ」と音がしてきそうに輝いていくので尚更に。

それから、和音アン。

1幕での登場時から抜群に良くなっている! と感じました。ベスに向けて私の生きた証は貴女だ、と歌い上げる時に母親としての情念が濃く浮かび上がっていたと思います。

初演で観た時の和音アンは常に霊体な佇まい、と申しますかどこか人間でない雰囲気を保っているイメージがありましたが、再演では端々に人間、そして母親としての情をにじませる役作りが伝わってきて、観ている側としても感情を入れやすかったです。

そんなアンとアスカム先生のデュエット「愛のため全て」はこの上なく情愛に満ちていました。今まで何度も聴いた歌なのに今回とりわけ心に響いて染み渡ったのは、現在自分の心身が弱っているからかも? と最初は思っていました。しかし、他の方のツイートを拝読した限り、山口さん、そして恐らく和音さんも、帝劇公演の期間中に役作りの味付けを少しずつ変えてきて、この楽日の表現に至ったのだと、今は確信しています。

改めて振り返ってみても、当日はどうにも集中力に欠けていたようで、あとは箇条書きのみの感想となります。
「ルナール閣下、一挙一動がいちいち格好いい! しかし自滅する大司教猊下を足蹴にするさままで格好よく見えるのは困ったもんだ」
「平野ベス、こんなに頼り甲斐のあるヒロインになるとは初演時には想像してなかったな。和樹ロビンの成長もまた然り」
「吉沢メアリー、最初から最後までひたすら哀れすぎて辛い」
……何だかボキャブラリー貧困で申し訳ございません(>_<)。

そんな中で、カテコの山口さんのご挨拶がとにかく可愛くて癒されて、その辺のしんどさが全部吹っ飛びました。

詳しくは千穐楽カテコ映像を見ていただきたいと思いますが、ロビン×ベスの「幸せ♪」を袖からお父さんモードでちらちら覗いているお姿を想像するだけでこちらが「幸せ♪」になります。

ついでに挨拶をさっさと終えようとして横から最高の教え子にアニメ声で「もう一声」という感じで突っ込まれるアスカム先生や、キャットさんの可愛らしさにほくほくするアスカム先生にもなごみます。心がささくれ立った時にはおすすめです(^_^)。

それにしても、良い舞台を堪能するには健康な身体が欠かせないと痛感しています。好きで身体を壊しているわけではありませんが、少しでも健康に近づければ良いなあ、と思っているところです。

2017-10-29

『レディ・ベス』感想(2017.10.28ソワレ)

キャスト:

レディ・ベス=平野綾 ロビン・ブレイク=加藤和樹 メアリー・チューダー=未来優希 フェリペ=古川雄大 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 キャット・アシュリー=涼風真世 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=山田樺音 リトル・メアリー=石倉雫

『レディ・ベス』の今季上演3回目の観劇でした。初・平野ベスです。

実は今、ちょうど長引くひどい腰痛と脚の痛みに悩まされておりまして、痛み止めを飲み湿布をしこたま貼っての帝劇行きと相成りましたが、今回はそこまでしても「観て良かった」と思える舞台でした。

平野ベス、少女から大人の女性、手厚い庇護を受ける王女から国を背負って生きる女王への変化が大変に分かりやすいベスでした。和樹ロビンとの相性も良いように思います。

花總ベスの場合は何をしていても囚人の立場になっても全身から「生まれながらの女王」なオーラが漂っています。大変大雑把に例えて言うなら、旧演出レミゼで山口バルジャンがどんなに汚れようが苦悩しようが、無意識のうちに白い光に導かれて首尾一貫して神の道を歩んでいたようなものだと思います。

ところが平野ベスの場合は「人は女王に生まれるのではなく、女王になるのだ」という感じでした。善き大人達の愛情に包まれ知恵を育みつつも母への呪いに囚われていた少女が、死を覚悟したことにより母を理解し、更にただ心のままに恋愛に落ちるという経験を経る間に、本当ぐんぐん声や話し方も表情も変化していき、終盤で女王として生きる決意を恋人に告げる時には凛とした女王の居住まいになっています。

初演の時は、ああ、歌を頑張ったねえ、とは思いましたが役作りがここまで徹底していたという印象はなかったので、正直驚かされました。成長する若さって素晴らしい、と感じ入った次第です。

花總ベスと平野ベスについては「どちらが良い」という話ではなく「どちらも良い」です。それぞれの魅力があって、甲乙つけがたいところがあります。

未来メアリーは、たぶん今季お目にかかるのは今回で最後です。やっぱりネガティブ系の吉沢メアリーとは対照的に、ポジティブ系ですね。といっても決して明るいわけではなく、攻撃し前進することで自らの孤独を見なかったことにしようとする屈折の感じられる女王であると思いました。

ちなみに今回、メアリーのコミカルな演出も大幅に減らされて悲劇性がやや強調されているわけですが、その割に「想像!」で締めくくるあの曲が残っているのは謎です。あのシニカルな笑いで片付けようとして全く笑えない曲の後に、メアリーとベスの寂しすぎる対面に進むのは、結構いたたまれないものがあります。

ロビンとフェリペは前回と同キャストなので感想は省略します。

古川フェリペについては、1幕に吉野ルナールとの共演がありますが、来年の『モーツァルト!』でもこの2人の共演をちょっと見てみたかったな、惜しかったな、と少しだけ思いました。

ここで、今季のアスカム先生についてぜひ語っておきたいことがあります。

とにかくプロローグのラピスラズリのような星空を背景に、降り注ぐ無数の光の下に静々とアスカム先生が現れる、あの場面が美しくていつも見入ってしまうのです。……と、初日からずっと言いたくて書き損ねていましたが、やっと言えました!

また、2幕でアスカム先生が「ベスは必ず帰ってくる!」と思いを込めて自分に言い聞かせるように独白する場面があります。

史実アスカム先生に関しては、「9日間の女王」ジェーン・グレイとも関わりがあり、彼女と対話した際にその聡明さに感心したという話があるらしいです。

『レディ・ベス』の物語に全くジェーンの影が見られないのは不自然な気もしますが、一方でベスの受難にジェーンのイメージも託しているような感じも見受けられます。

この作品の世界はもしかしたら「ジェーンの存在しない世界」なのかも知れません。しかし、もし彼女が存在した世界であるとすれば、
「ベスの才能こそは決して失われてはならぬ、 必ず生還して、彼女の星の運命である玉座に着くのだ」
というアスカム先生の思いもひとしお強いものであったのではないか? と、想像にふけりながら、先生の深い眼差しと切なくも真摯で愛情に満ちた歌声に浸っていました。

そういえば今更ですが、ちょっとした疑問があります。

2幕のアスカム先生とアンのデュエット「愛のため全て」で、アスカム先生がベスを「父上の娘」と呼んでいます。

他の曲や地の台詞では、アスカム先生の台詞も含めて、血筋より本人の能力や生き方が大事、という変更が結構なされているのに、この曲だけ唐突に「父上の娘」と出てくるのはやや不思議に思いました。

ただ、アンが途中でベスに、父上のことには拘らず貴女は貴女で良い、と諭す一方で、エピローグでは「獅子と呼ばれた」父上の強さを娘の貴女が受け継ぐ、と祝福の言葉を歌ってもいて、ああ、どちらも親の本音なんだねえ、と考えさせられたりもしたので、アスカム先生も心のどこかで偉大な父上と教え子を重ね合わせていたのかも知れないね、と思ってもいます。

『レディ・ベス』は実際のところ物語として好みか? と改めて問われると決してそうとは言えない点がいっぱいありますが、曲には「王国が現れる」や「大人になるまでに」など、いくつかメロディが好きな曲があります。そんなわけで、来年(2018年)5月に発売されるというDVDは、割といそいそと2枚セットで劇場にて予約いたしました(^_^)。まだ半年以上も先になりますが、楽しみにしています。

次回観劇は、少し間が空いて、帝劇千穐楽になる予定です。それまでには腰痛が少しでも緩和されていることを願っております。

2017-10-17

『レディ・ベス』感想(2017.10.15マチネ)

キャスト:

レディ・ベス=花總まり ロビン・ブレイク=加藤和樹 メアリー・チューダー=吉沢梨絵 フェリペ=古川雄大 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 キャット・アシュリー=涼風真世 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=斉藤栄万 リトル・メアリー=石倉雫

今季2度目の『レディ・ベス』観劇でした。しかも座席は今季唯一の最前列!

ただ今回は観劇前に腰痛が悪化したり(医師の診察を受け少しずつ回復傾向です)、もしかしたら劇場でお会いできるかも知れなかった方とすれ違ってしまったり、観劇前に即日修理を期して修理窓口に持ち込んだ愛用のPCの修理が、思った以上に故障が重症だったために完了せずお預けになってしまったりと、自分としてはかなり残念な1日になってしまいましたが、観劇そのものは割と充実感があったと思います。

今回はロビン、メアリー、フェリペが初日とは別キャストで、子役も2人とも別キャストでした。そして花總ベスは今季見納めの予定です。

まず、和樹ロビンは育三郎ロビンよりも少し大人で包容力のある雰囲気に感じられました。私的にはこちらのロビンの方がしっくり来るようです。

初日の感想にも書いたとおり前回ロビンを観た時には、
ロビン、お前さん、何故自分の思いだけで民衆の希望の星を落とそうとするんだい?」
と疑問にしか思えなかったのですが、今回は全く異なり、
ロビン、これから星の定めに従って険しい道を歩む姫君に、肉体や身分に縛られぬ『魂の自由』の素晴らしさを教えてくれてありがとう」
と、まるで自分がアスカム先生に成り代わったかのような気持ちで素直に好印象を抱き、彼の涙に共感を覚えました。

また花總ベスについても2幕の半ば辺りから、
「この子がロビンに惹かれるのは、自らの魂を解放してくれるかも知れない存在だからではないか?」
と思わせてくれる空気を全身に漂わせていたと思います。

初演のベスとロビンのように、他の誰とも決して恋も結婚もしない、と相手を縛り合う関係ではなく、どんなに離れて手の届かない場所にいても魂が自由なら同じ空の下でいつでも一緒だ、と言い切れる関係に再演では変化したのだ、と、今回の和樹ロビンと花總ベスを観て遅ればせながらようやく理解できたような気がします。

なお「手の届かない」から連想したわけではありませんが、和樹ロビンが花總ベスの所に夜這い、失礼、軟禁先に潜入しようとする場面の「とーどーかなーいー」でつい、
「いや、君の体格ならもっと高い位置でそのターザンロープ使えば、余裕でベランダに届くだろう」
と思った瞬間、ぷぷぷと吹いてしまいました。お二方からは見えなかったと思いますが、ごめんなさい。

話は変わりまして、今季初鑑賞キャストの2人目、吉沢メアリーについてです。

何とも寂寥感漂う女王だと思いました。亡き母の信じていたものを忠実に守り母に報いるために手を汚すことも厭わない孤独な生き方はWキャストのメアリー2人とも共通なのですが、未来メアリーが「動」で「攻め手」ならば吉沢メアリーには「静」で「受け身」、そして必死感の強さが感じられました。フェリペとの結婚はもちろん政略結婚ではありましたが、それ以上に自らの縁者であるスペインとの繋がりを何としても失いたくなかったのではないでしょうか。荒涼とした哀しみを湛えたメアリーなのです。

それから、古川フェリペ。もちろん見目麗しいですが、とりわけ目力が密かに素敵なフェリペです。自由意思が許されず、いつでも国家の手駒として動くことが求められる立場である王族としての諦観の念と、そのような立場だからこそやるべきことはきっちりやらせていただくぜ、な割り切った感情とが同時にあの目力に込められていたように見えました。以前よりすっかり立ち姿に余裕が出て頼もしい感じがするのは、来年Wキャストではありますがついに帝劇での主演を射止めたなどの自信からでしょうか?

今回の「ネタ」としては、フェリペとメアリーの結婚式での聖書(禁書。ベスを罪人扱いするための唯一の物的証拠)を巡る攻防戦で、聖書がオケピに転落していました。私の目にはオケピにストレートに落ちていったように見えましたが、オケピ上部に張ってあるネットに引っかかったという話もあるようです。あの聖書にスペアがあるかは定かではありませんが、あの後聖書を使う場面がなくて良かったね、と思いつつ見守っておりました。

アスカム先生に関しては、前回ほどベスへの信頼に恐ろしさは覚えませんでした。逆に今回は、ベスに向ける信頼厚い眼差し、そしてベスが王位を選んだ後にロビンにかける言葉の暖かさがたまらなく心に染みて、涙が出そうになり、まさに今のような季節、時々冷たい風の吹く秋の空の下、力強く優しい歌声が包み込んでくれるような感覚を覚えました。

そういえばこれはどなたかがツイートされていてようやく把握したのですが、「王国が現れる」の前にアスカム先生が貴女はお父上にないものを持っている、それは……とベスに語りかける場面で、初演では「それは、愛だ」と言っていた台詞が「それは、世界を変える力だ」に変わっていました。この変更により、アスカム先生が愛弟子に対し抱いている期待の像がよりはっきりと浮き彫りになったように思います。

なお、初演と再演の台詞や演出の違いについては、当方が初日に気づいた分と上記のアスカム先生の台詞のほかにも、まだまだ存在しているようです。例えば、初演にはベスが戴冠式で誓いを立てる台詞(歌)があったのが無くなったなど。私自身はそう言われてみれば! という感じで、初演への愛が足りなかったことがばれてしまいました(^_^;)。

次回は少し間が空いて、10月28日ソワレを観劇の予定です。今季初めて平野ベスが見られるのを楽しみにしています。

2017-10-13

『レディ・ベス』初日感想(2017.10.8ソワレ)(その2)

初日、新演出の感想についてはこちら→『レディ・ベス』初日感想(2017.10.8ソワレ)(その1) - 日々記 観劇別館

書きそびれているうちに次の観劇日が巡ってきそうなので、個々のキャストの感想だけでも簡単に記しておきます。

花總ベス。その1にも書きましたが、女王姿がフィットし過ぎるくらいはまっています。はまり過ぎていて、逆に彼女が一時的に恋愛や心身の自由に心を寄せたとしてもそれは仮初めに過ぎず、女王となることが宿命づけられているようにしか見えません。

育三郎ロビン。何でしょうね、彼の奇妙な安定感は。そしてどう考えても流れ者になる前に結構苦労している筈なのに、流れ者生活が心から楽しそうなのであまりそう見えないのが凄いです。あと初演の時は育三郎ロビンがベスを子供の世界に留めようとするピーター・パンのように見えて、今回もそういう所はあるのですが、今回の育三郎ロビンはもう少し達観しているように見受けられます。

平方フェリペ。初演よりも色気が倍増したように見えたのは気のせいだけではないと思います。再演ではフェリペの出番が減らされてしまいましたが、この色っぽい平方フェリペが最後にベスに軽く誘いを掛ける場面などを観たかった気がします。

なお、チケ取りでキャスト組み合わせを上手く配分できず、育三郎ロビンと平方フェリペを観るのは今回のみなのです。残念。

ガーディナー猊下。禅さんのメイクが濃過ぎてビビりました(^_^;)。なんだか最初から顔色が悪く苦そうな薬を飲んでいて、猊下、ベスを消す計画に加担していなくても早晩寿命が来ていたんじゃないかと思われます。初演ではお稚児さん趣味を臭わせていてルナールに迫るような仕草がありましたが、今回はその辺の設定はカットされたようです。

吉野ルナール。とにかく格好いい! そして鬼畜。ルナールに関しては初演からの大きい変化はなさそうでした。時々見せてくれるバトントワリングがツボです。

未来メアリー女王陛下。メアリーについては事前の小池先生インタビューでも語られていたとおり、コミカル要素はぐっと減って「悲劇の女王」の面が強調された演出に変更されています。ただ未来メアリーの場合、実母の雪辱を果たすためなら自分はどうなろうと構わない、という意思の表現がポジティブなので、最後のベスへの独白に至ってもあまりお涙頂戴には流れていない感じでした。

和音アン。実は初演の時は若干得体の知れない不気味さを覚える時もありましたが、今回はそうでもなく。ベスの中の何かを無条件に信じる人、という意味でアスカム先生と表裏一体の存在として描くことに今回は成功していると思います。

なお、アンは途中まではベスの中に首切り役と1セットでインプットされてしまっているようですが、最後には恐らく分離されたと思われます。めでたし。

涼風キャット。プロローグの説明場面(ここちょっと紙芝居っぽい(^_^;))に出番が追加されていて、ベスが本当に小さい頃から一緒にいたことが分かるようになっていました。

「大人になるまでに」の凛とした歌声と立ち居振る舞いも健在。アンやアスカム先生よりもっと穏やかではありますが、ベスを信じ無償の愛で支え続けるキャットの生き方が体現されているナンバーです。

そして、山口アスカム先生。星々に保証されたベスの王の器への強い信頼は3年半前から一貫していますが、ベスに対する姿勢がやや変化したように感じられました。

具体的には、初演ではどこかに、
「信じていますから、ゆめゆめ道を踏み誤らないでくださいね。間違えたら先生悲しいですよ」
な空気が漂っていましたが、今回は、
「まあ、我がベス様なら必ず賢明な判断をされるでしょうから、ご自身の言葉できちんと彼にお話ししてくださいね」
という感じの、有無を言わせぬ絶大な信頼感が伝わってきました。それでも決して強制的、圧力的な雰囲気をまとうことはなく、歌声も台詞回しもどこまでも紳士的で暖かさすら湛えているのが山口アスカム先生の恐ろしい所です。

そのダンディーで知の宇宙を無限に内包していそうなアスカム先生が、カーテンコールでは満面のほんわか爽やか笑顔で舞台に現れるのがまた何とも言えず。あ、これは本編と関係ないですね。

最後に、メインキャスト以外で気になるのはやはり中山昇さんのワイアットでしょうか。出番はさほど多くないのにさすがの強烈な印象を残してくれています。

ただ彼の志を踏みにじられるむごさは伝わってくるのですが、その他の民衆の皆様の怒りや祈りにベス自身が直接触れる機会は実は1幕の居酒屋の場面しかないので、ええと、ベスの選択に彼らの思いは反映されてるのかなどうなのかな? とちょっともやもやしないでもないです。

あと、ロビンは最初のプロテスタント信者の検挙や居酒屋、ベスのウッドストック移送の場面で民の声をたくさん耳にして共感もしている筈なのに、いくら恋愛感情を抱いたとは言え何故あえて彼らの期待の星ベスを連れ出そうとするのかと、そこはずっと心に引っかかっています。もちろん、王冠を頂くのはとても重大で過酷なことだし、期待が大きければ失敗した時の失望も大きいだろうから、そんな大変な目に愛する人を遭わせたくない、というのは分かるのですが。そこは自分がロビンにあまり共感できない所なのです。

小池先生にリーヴァイさんに、と盛りだくさんだったカーテンコールのことなども書きたい所ですが、感想その2はこれくらいにしておきます。

2017-10-09

『レディ・ベス』初日感想(2017.10.8ソワレ)(その1)

キャスト:

レディ・ベス=花總まり ロビン・ブレイク=山崎育三郎 メアリー・チューダー=未来優希 フェリペ=平方元基 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 キャット・アシュリー=涼風真世 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=山田樺音 リトル・メアリー=桑原愛佳

帝劇にて『レディ・ベス』再演初日を観てまいりました。

演出版と聞いていましたが、実際初演からは修正や差し替え、カットされた箇所が結構ありました。以下、気づいた変更点の一部です。と言っても何せ初演を観たのが3年半も前につき記憶も曖昧な所があるので見落としもあるかも知れませんが。

  • プロローグのメアリーとベスの生い立ちと確執の経緯の説明場面に子役が登場。ヘンリー8世、キャサリン(メアリー母)、アン(ベス母)も登場。
  • あれ? 樽隠しに失敗している? で、別の時に成功?
  • 「王国が現れる」の前にベスが宮殿で辱めを受け憔悴して帰宅したことをキャットがアスカム先生に伝える台詞が追加。このほかにも場面ごとに状況を説明し次の場面に繋ぐ台詞が随所に追加。
  • フェリペの出番が大幅にカット。ベスに手を出すのはロビンの存在を知った時点で諦めてる感じ? そしてナレ死……じゃなくてナレ退場。
  • 「神よ祝福を与えん」の歌詞が変えられてる?(確証なし) 初演では民衆が田舎に移送されるベスを見て「父上に似て高貴な居住まい」と讃える歌詞があったのがなくなり、今回は違う歌詞になっていたように聴こえましたが、さて?
  • 最後の姉妹の対面でヘンリー8世の帽子を被ったベスにメアリーが父上の面影を見て驚く場面がカット。
  • ベスとロビンのデュエットがまるっと新曲に差し替え。「もう誰とも結婚しない」じゃなくなった!
  • ベスのソロ新曲が追加。

上に書いたうち、下から3番目と4番目についてはもし聞き違いでなければ、田舎で幽閉され屈辱を受けて「父上ならこんな時もきっと立派に振る舞うだろうに……」と嘆くベスにアンが「父上のことは気にせず、あなたはあなたの生きたいように生きれば良いのよ」とフォローする場面とも繋がると思うのですが、さて、これで聞き違いだったらどうしましょうか(^_^;)。

全体の印象としては、説明的な台詞や場面が増えたことで初見の観客にもぐっと話が分かりやすくなったと思います。ただ、私自身はポジティブに受け止めていますが、「一つ一つ説明って、客をバカにしとんのか、われぇ!」という批判の声があるのもまあ分かります。

ごく個人的趣味としては、これは初演の時も感じたことですが、もう少し作品全体を貫くうねりのようなものも欲しいな、とつい考えてしまうのです。

今回、アンがより一層ベスの内面との一体感を強めた存在として描かれており、また、アスカム先生の、王の資質を存分に兼ね備えた賢い王女ベスへの期待と信頼が初演よりも強調された演出になっていて、その2人が歌う「愛のため全て」はベスの内面の葛藤を如実に示した佳曲であると思います。いかにも、平凡な女性としての幸せな恋愛と王冠を頂くであろう者の他者を幸福に導く義務との間で葛藤した主人公が目覚めて立ち上がることを期待させるような。

しかし、いかんせん肝心のベスの視線が「愛を取るか王の義務か?」に専ら向けられていて、王が見るべき国家や国民にあまり向けられていないので、その点でこの物語に肩透かし感があるのは否めません。

ただそれでも、相手役のロビンとの関係について、最後に「2人は離れても同じ空の下でいつまでも一緒だ」と初演よりはぐっと前向きになってくれたのは良いことだと思います。

そして、何と言っても、王冠を頂いた花總ベスの女王オーラには上記のような細かいツッコミを一撃のもとに吹き飛ばす説得力があります。初演の時にも、
「花總ベスは恋愛モードは一瞬の血迷いに過ぎず、あくまで女王モードが本来の姿だ」
という雰囲気を醸し出していましたが、再演までの3年半で女王モードが強化されたように感じられます。

今のところ花總ベスがはまり過ぎていて、もう1人の平野ベスのイメージがあまり想像できず困っているところです。

というわけで長くなりましたので、キャストの感想は「その2」に続きます。