不完全性定理は「現代科学の限界」なるものを示してはいない(号外)

「「ゲーデル不完全性定理は否定的かつ肯定的な結果である」という解釈ではいけないのだろうか」( id:MarriageTheorem:20081116:1226807605 ) へのお返事

ガロア理論は、5次以上の代数方程式の代数的解法の不在を示すので、否定的な結果である」を認めるなら、不完全性定理も否定的な結果です。そして、その程度に否定的なだけだと、私は理解しています。

不完全性定理はある意味で形式的手法の限界は示しているかもしれませんが、数学の限界は示していません。固定された公理系の下で演繹される命題を蒐集する行為は、数学の一部にすぎません。調べたい数学的対象があって、これを特徴付ける性質は何かを探すのも数学の重要な部分です。

竹内外史さんは、たしか、

数学的世界観―現代数学の思想と展望

数学的世界観―現代数学の思想と展望

でだったと思いますが、次のような趣旨のことを書かれています。ある数学的対象を公理化しても、不完全性定理により、それ自身もその否定も証明できない文が存在する。そこで、それかその否定のどちらかを新たな公理として追加する。新しい公理系にも、それ自身もその否定も証明できない文が存在する。以下、これをいくらでも繰り返すことができる。ω回繰り返しても、さらに先がある。これは、数学の発展に終りがないことを示す。

この発想には、共感を覚えます。

(今、手許にないので、後日、引用文を追加します。かなり先になりそうですが)