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彫刻家 寺社仏閣、史跡等に作品を納めています。 whole8.6th@gmail.com

杉田玄白像納品。

8月19日。
この日は虎ノ門は栄閑院に杉田玄白像の納品でした。
なんだかんだで製作に1年経ってしまいました。

(長い記事ですが最後に玄白先生像の写真が出てきますので良かったら見て下さい。)

かなりの長い時間色々な考えや製作方法ととても自分のレベルを上げて行く作品になりました。
住職さんと家族の方々も喜んでくれました。

愛宕山の真裏になります。静かな寺町にあります。 猿寺としても有名ですね。阿吽の様に猿がそして屋根の上にもいます♪
門の横にも杉田玄白墓とあります。東京都の史跡となっておりますし、医師を志す方も良く訪れるそうです。
もちろん歴史の授業でも杉田玄白の名は解体新書共々習いますからね。
ところで、先のブログに戦災で焼失と書いてしまいましたが、詳しくは分からないが多分関東大震災での焼失か?
ということで改めさせてもらいます。
そして申し訳ございません。

来年は杉田玄白先生の200回忌です。そして申年(猿寺なんで)
お話を聞きますと、100回忌は慈恵医大で先生の油絵を描いてもらったそうです。
その油絵は多分同病院にあるらしいです。
今回は200回忌の事業で像の再建です。
ちなみに再建にあたり参考になる写真は二枚!!
一枚は子孫の方が持っていた物です。
どれも写りが良く有りません。
(ちなみにこの像は治療のお礼にとある男性が仕事中の先生の横でつきっきりで制作して、当時誰が見ても杉田先生だ!と言われた出来だそうです)
殆どの方は老齢の玄白先生の自画像しかみたことないとおもいます。
で、焼失した像の写真を、ここでお見せします。
まずは慈恵医大の油絵。

この油絵も参考にしました。

まず、真っ黒なんです。そして元のあったであろう写真を切り抜いてあるので耳のカタチや頭のカタチがちょっと
変わっております。そして東京であった博覧会で出された時の写真です。
全身像が分かるのですが、少々というか、ピンボケしています。でも、耳の大きさ等が分かります。
でも!?よく見ると黒い写真と博覧会写真では顔の長さが違うのです!!
下から撮っているからといっても博覧会の像は面長の人物に見えます。
と言っても、黒い写真は顎のラインが影で真っ黒!
難しい。黒い写真に顎の線描いてみるとそうでもない・・・・
難しい。そしてこれから制作する和服はもっと難しい。やっぱり真っ黒!!
この服は、道服?直綴(じきとつ)?それとも前掛け??
形状と服が合いません。
民族歴史館、江戸東京博物館等に行きました。
学芸員の方とも随分話しました。
でも、面白いというか、凄いのはこれです!とは言いませんとの事。
大河での製作再度からの問い合わせがあっても、これ!とは言わないとの事です。
これが!というとそれが歴史になってしまうからとのことでした。
責任ありますからね。
で、その写真からカタチを割り出していくしかありません。
画像解析してもらったりと本当大変でした。
で、こんな風にまずは。

と、以前も出しましたがこんな感じで彫り出しました。

顔に意識が集中するので頭身が狂いに狂います。(と言っても頭でかすぎるし似てなさすぎ)ちなみに再建なので焼失した同じ大きさの36センチに仕上げなくてはなりません。
この時点では頭身が狂い大きさも駄目です。

身体の頭身はこんな感じです。

一応カタチになりましたが、耳の付け根の膨らみが気になる!!なんでこのふくらみ削らないんだ俺??
この当時は織部像等同時進行でしたが、作っててまとめられるか不安でした。


サフ吹きまで行きましたが、やっぱり頭が気になります。栄閑院からも同等の事を言われ、1周りちょっと削りもう一度顔作り直します。
耳の一大きさも直しほぼ完成なんですが、もちろん、この手前の気泡消し等は本当に大変で、篤姫と同じ様に苦労しました。
でも、これは再建です。色もいつもと同じ様に着彩仕上げではありません。
木目なんです。仕上げは。
簡単!と思った私は後々苦労します。
ですが、木目仕上げがなんどやっても上手く仕上げられずただの茶色い塊に・・・・
木目を出すのってどうしよう!???
ここは塗装専門の方に教えてもらうしかなく、連絡をして教えてもらいました。
今流行の食品サンプル同様そのものをかたどって着彩は私でも出来るし、難しい技術ではありません。
木材もかたどって塗れば木材に見えます。
今回は柘植や樫の様な飴色になる様に仕上げたいのです。
色だけなら同様の色は作れますが、木目は・・・
と、ここでその塗り方は書きませんが、もちろん何処から見ても木製の様に仕上げました。
これ完成したものです。


と、こんな感じです。光の加減で見え方は違いますね。
この見え方は自分でも驚いた程です。
もちろん栄閑院の皆様も喜んでくれました。
色々な話をして、まずは年末に見れるのかな?
普段は栄閑院の奥の間でひっそりと。これからいつもの色彩仕上げもつくります。こちらは本堂に置かれる様です。
完成のあかつきにはまたお知らせします。
この像がこれからのスタンダードになってくれればと思っています。
この像はこれから子孫様宅や、関係地等にも行きます。
(と言っても、私が制作せねば話は進みません)

ちなみにこの日は私は納品ですし勿論麻の黒の着物に絽の袴と同紋付の羽織。
住職さんに「暑いし、知らない間柄じゃないからTシャツでもいいのに(笑)」
でも、和服着たいですしね。

そして、天祭の時に頂いた大福の話をしましたらお土産にと!!

この大福すぐ硬くなるのですが、その美味さと言ったら♪

と、こんな1日でした。
でも、量産はまだ終わりません。